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樹木シリーズ⑤ ネコヤナギ、バッコヤナギ、タチヤナギ

 INDEX ネコヤナギ、バッコヤナギタチヤナギ
  • 早春の風物詩・ネコヤナギ(猫柳、ヤナギ科)

     寒風吹きすさぶ早春、渓流の反射を受けて花穂が輝く様は、絵に描いたような早春の風物詩である。渓流沿いに生え、葉が出るより早く銀白色の絹毛に覆われた花穂をきらめかせる。その絹毛の毛布が寒さから花を守っている風情は、雪国の春を象徴している。雌雄異株の落葉低木。 
  • 名前の由来・・・花穂を猫の尾になぞらえて「猫柳」と書く。別名を川柳というのは、川辺に自生していることによる。ヤナギとは、「矢の木」のことで、ヤナギ類を矢の材料としていたことによる。 
  • 花期・・・3~4月、高さ1~3m 
  • ネコヤナギの花蜜を吸う野鳥・・・メジロ
  • 雄株・・・雄株の雄花は、長さ3~5cm、花粉が出る直前の葯は先端が赤茶色になり、葯が開くと黄色の花粉が出てくる。 
  • 雄株その2 
  • 雌株・・・雌花は、ふさふさした銀白色で、名前の由来になっている花穂。雄花より少し短く、薄黄色になるので、花があれば雌雄の見分けができる。 
  • 雌株その2 
  • 仏花、花材・・・他の植物がまだ眠っている早春に花穂を出し始めるので、早くから切り取って仏前に供えたりする。花穂が大きく派手な雄株は、春の生け花の花材として用いられる。 
  • 薬効・・・ヤナギ科植物の樹皮には、世界で最も多く使われた医薬品「アスピリン」の母体となった「サリシン」という配糖体が多く含まれている。夏、樹皮を採取し、よく水洗いして陰干しにして乾燥させる。解熱、鎮痛には、それを煎じて服用する。打ち身、腫れ物には煎じた液をつける。お風呂に入れると、リュウマチなどの痛みをとる効果があるとされている。
  • ネコヤナギの樹液はカブトムシやクワガタムシ、カナブン、スズメバチの好物である。 
  • 俳句
    川風と遊びふくらむ猫柳 高橋泉也
    銀色の風をまとひし猫柳 林雄次郎
    煌めきは流れと銀の猫柳 吉井竹志
    豊かなる水のきらめき猫柳 井川芳子 
「ねこやなぎ」(平野庄司) 「早春」(平野庄司)
  • 山里に春を告げるネコヤナギが、花芽をふくらませ、フキノトウが青い花芽をのぞかせている。遠くの山にはまだ深い雪がある。その山の麓には、長い冬の間、雪に閉じ込められていた子どもたちが、春を待ち切れずに山野を駆け巡る姿が描かれている。
バッコヤナギ
  • バッコヤナギ(ヤナギ科)

     早春、ネコヤナギと似た黄色の花穂をつけるが、生えている場所が違う。湿った場所ではなく、山地や原野、林道沿いのやや乾いた所、崖地などに生える。樹高は10m以上にもなる落葉高木。葉に先立って楕円形の尾状花序を多数つける。
  • 名前の由来・・・花の後に生えてくる白い綿毛をお婆さんの白髪に見立てて、「婆っこ柳」という説や、牛がこの花を食べることから「ベこ柳」が転訛したとの説などがある。山に生えているネコヤナギであることから、別名「山猫柳」ともいう。また、サルがこの黄色い花を食べることから、別名「猿柳」ともいう。 
  • 花期 3~4月、高さ5~15m 
  • 雄花序は太く、葯は黄色。
  • 雌花序は細く、淡い黄緑色。  
  • 樹皮・・・暗灰色で、古くなると縦に不規則に割れ目が入る。樹皮は丈夫で、かつては縄の代用にしたという。
タチヤナギ
  • タチヤナギ(立柳、ヤナギ科)

     早春、若草色の葉と花を同時に咲かせ、いち早く春を告げる木の一つ。日当たりの良い川岸や湿地に生え、高さ10~15mになる。葉と同時に長さ3~6cmの尾状花序をつける。雄花の葯は黄色。雌花は緑色。樹皮は褐色で薄くはがれる。種子は白い綿毛に包まれる。葉は、長楕円形で最大幅はほぼ中央寄り。護岸用に川岸に植えられる。 
  • 名前の由来・・・枝が上向きに伸びることから「立柳」と書く。 
  • 花期 3~6月 高さ10~15m
  • 樹皮・・・褐色で薄くはがれる。若枝は灰褐色、または淡い黄褐色。
  • 用途・・・河川護岸樹、図板、裁板、マッチの軸木
参 考 文 献 
「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
「秋田の山野草Ⅱ」(秋田花の会)
「続・読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
「秋田農村歳時記」(秋田文化出版)