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樹木シリーズ⑥ キブシ、アブラチャン

INDEX キブシ、アブラチャン
  • 黄色い暖簾・花かんざしを吊り下げるキブシ(木五倍子、キブシ科)

     早春の野山で、バッコヤナギと同じく他に先駆けて咲き、まるで黄色い暖簾を吊り下げたように長い花序を垂らす。一見、舞妓さんの花かんざしのようにも見える。明るい林縁や空き地、林道沿いに生え、枝を勢いよく四方に広げる落葉低木。雌雄異株で、雄株の花穂は長く、雌株は短い。日本固有種。先駆植物的な樹木で、荒れ地にもよく出現する。 
  • 名前の由来・・・江戸時代、既婚女性が歯を黒く染めたお歯黒にヌルデの種子・五倍子(フシ)を使用した。その代用としてキブシの果実が利用されたことから、木の五倍子(フシ)で「木五倍子」と書く。 
  • かんざし花・・・花の咲いている小枝の先を、5cm~10cm手で折って髪に挿すと、本物のかんざしのように見える。昔は、女の子どうしで「かんざし花」で遊んだという。こうしてキブシは「かんざし花」とも呼ばれるようになった。
  • 3月3日、雛の節句には、毎年この花を手で折ってきて飾る風習(佐渡の両津市鷲崎)もある。
  • 地方名・・・ヂイキシバ、ヂイノキシバ、アカウツギ、アカシバ、アメボッチなどの方言名をもつ。 
  • 花期・・・3~4月 高さ3~5m
  • キブシの花蜜を吸う野鳥・・・メジロ
  • 黄色い暖簾・・・葉が伸びる前に淡黄色の総状花序につけ、黄色い暖簾を吊り下げたように長い花序を垂らすので良く目立つ。早春を告げる代表的な樹木の花の一つ。雄花は淡黄色、雌花はやや緑色を帯びる。 
  • 雄株は、雌株よりたくさんの花を咲かせるが、実は結ばない。 雌株は、花の数が少ないが、花後に実がなる。 
  • ・・・葉は互生し、卵形~卵状楕円形で、先は細長く尖る。基部は円形、縁には鋸歯がある。 
  • 果実・・・堅い球形で、はじめ緑色で熟すと黄色を帯びる。五倍子(フシ)の代用として黒の染料に利用。 
  • 枝の髄は、スポンジ状でクラフトなどに利用される。 
  • 花言葉 出会い、待ち合わせ 
  • 俳句
    枝しなひきぶしの金の鎖垂れ 岡田日郎 
    木五倍子咲く道の左右に海見えて 木村緑枝
    見渡して木五倍子煙れる谷一つ 持田妙庵
    木五倍子咲く風ひやひやと山の寮 森田公司
アブラチャン
  • よく燃えるアブラチャン(油瀝青、クスノキ科)

     キブシと同じ頃、葉に先立って星のような形の淡い黄色の花を咲かせ、山の春を鮮やかに彩る。山地の湿った場所に生え、沢沿いに多い。秋、球形の果実がつき、熟すと黄褐色になり不規則に割れる。昔は、この果実や枝から油を搾り灯油として使った。油分が多いので、薪炭や山で火を焚く時に用いられた。 
  • 名前の由来・・・チャンとは、瀝青のことで、天然アスファルトや石油など炭化水素類の総称。材や果実が油分を多く含み、生木で燃えやすいことが名前の由来。かつては、果実や樹皮を燃やし、灯火として利用した。 
  • 地方名・・・ヂッチャク、ヂッチャクシバ、ズサ、ジシャなどとも呼ばれている。 
  • 花期・・・3~4月、高さ3~6m 
  • 枝や実にはクスノキ科に特有の芳香があるが、どことはなしに油っぽい。 
  • 山中のやや湿った所に生える。萌芽しやすく、枝からたくさんの小枝を出し株立ちになる。樹皮は灰褐色で滑らか、小さい皮目が多い。枝を折ると良い香りがする。 
  • 葉は、卵形~楕円形で葉先が尖り、互生する。葉柄は赤みを帯びる。 
  • 材の利用・・・材のしなりとねじれに強いことを利用してカンジキの輪の材料(群馬県)にしたり、縄の代用に用いた。アブラチャンがあれば、ダケカンバの樹皮同様、雨の日でも焚き火を起こすことができる。
参 考 文 献 
「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
「樹木観察ハンドブック 山歩き編」(松倉一夫、JTBパブリッシング)
「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
「秋田農村歳時記」(秋田文化出版) 
「植物民俗」(長澤武、法政大学出版局)