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樹木シリーズ⑨ アオキ、ヒメアオキ

INDEX アオキ、ヒメアオキ
  • 光沢のある大きな葉と赤い実・アオキ(青木、ガリア科)

     冬から春にかけて、光沢のある赤い実とテカテカに反射する葉が印象的な常緑低木。薄暗い環境でもよく育ち、庭木としてもよく植えられる。葉が斑入りのものなど園芸種も多い。分布は、宮城県以南。秋田県に自生しているのは、変種のヒメアオキ。 
  • 名前の由来・・・枝も幹も「緑色」をしているので「青木」と書く。
  • 緑色」のものを「青」で表現する理由は?  ・・・奈良時代や平安時代は、色を表す形容詞が、白、赤、青、黒の4つしかなかった。だから、緑色は青に分類されていた。信号機の緑を「青信号」と言ったり、「青りんご」「青汁」「青虫」「青々と茂る」など、緑色を青と表現するのは、昔の名残が今も残っているからである。
  • 見分け方・・・アオキの葉柄と葉裏には毛がなく、ヒメアオキには毛がある。また、葉も赤い実もヒメアオキより大きい。 
  • 花期・・・3~5月、高さ1~2m 
  • 解説「低木」・・・樹高3m未満の木。アオキは低木に分類される。なお、樹高が8m以上の木を「高木」、3~8mの木を「小高木」あるいは「亜高木」ともいう。
  • ・・・茎の先の円錐花序に紫褐色、時には緑色の小さな花を多数つける。チョコレート色で一見地味に見えるが、花に近づきアップで撮ると、意外に美しい。雌雄異株。
  • 雄花・・・長さ7~15cmと大きく、雄しべが4個で雌しべは退化している。
  • 雌花・・・雌花は2~5cmと小さく、雌しべは中心に1個。雌の花数が少ないのは、果実のコストが余計にかかるためと考えられている。 
  • ・・・大型の葉は、鋸葉が大きく、厚みがあって光沢が強い。
  • 斑入り・・・淡い黄色の斑入りの葉は、特に耐陰性が高く存在感もあるので、園芸種として人気が高い。 
  • ・・・赤い実をつけるのは雌個体。冬枯れの森の中では赤い実が良く目立つ。長さ1.5~2cmの楕円形で、秋に赤く熟し、翌年の4月頃まで残る。その雌個体の近くには、必ず雄個体がある。 
  • 伏条更新・・・アオキは、種子更新だけでなく、大きくなった幹が倒れて発根するとともに元の根際からも萌芽し、クローンを形成しながら更新する。分岐数が多いほど更新個体数が多くなり、林床の不均一な光環境下で空間を占有する戦略上有利になる。 
  • 虫こぶ・・・いびつな形の実は、アオキミタバエが寄生した虫こぶである。内部には1~18匹の幼虫が入っているという。 
  • 仏花・・・赤い実がつくと美しいので、花が乏しい時期に切り取って仏前に飾る。 
ヒメアオキ
  • 雪国に適応したアオキの変種・ヒメアオキ(姫青木、ガリア科)

     アオキの変種で、北海道南部から本州の日本海側の多雪地帯に分布。ブナ林などの日陰になる林床に自生する。アオキと異なり、若枝、葉柄、葉裏に微毛がある。アオキより小形であることから「姫」の字がついて「姫青木」と書く。エゾユズリハやユキツバキなど、雪国に適応した常緑地這植物である。
  • 花期・・・3~5月で小さい褐色の花をつける。高さは1mほど。
  • 幹は、雪の重みで折れないよう、しなやかで横に這い、葉がつく部分で斜めに立ち上がる。
  • 雄花 
  • ・・・アオキに比べ小さく、鋸歯も浅く鈍い。長楕円形で先端は尖る。 
  • 薬効・・・凍傷、火傷、創傷などに生の葉をあぶったものを貼布する。吉野の有名な胃腸薬「陀羅尼助(だらにすけ)」の主成分はキハダの内皮だが、アオキを加えて煮詰めるため黒く艶のある丸薬になる。
  • 果実・・・卵形で種子を1個含む。秋に赤く熟し、翌年の開花の頃までついている。 
  • 赤い実は野鳥の好物・・・ヒヨドリ、ツグミ、ムクドリなど。背丈が低いので、風で遠くへ飛ばすことができない。だから鳥に種を運んでもらう戦略として、鳥に目立つフルーツ型の赤い実をつける。調査結果によれば、自然落下より鳥による種子散布の発芽率が高いという。 
  • 虫こぶ・・・虫こぶの中には、アオキミタマバエの幼虫がいる。この幼虫は、5~6月にサナギから羽化し成虫となるが、寿命はたった1日。その日のうちに、小さな新しいヒメアオキの実に産卵して息絶える。卵は幼虫となって翌年の初夏までそこで過ごす。アオキミタマバエの寄生率が高まるとヒメアオキの種子散布率が低下するといわれる。その原因は種子散布の媒介となるヒヨドリが虫こぶのヒメアオキの果実を食べないことと、虫こぶとなった果実の種子形成率が著しく低下するためである。 
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
「樹木観察ハンドブック 山歩き編」(松倉一夫、JTBパブリッシング)
「秋田農村歳時記」(秋田文化出版)
「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)