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樹木シリーズ103 コシアブラ

  • 最近、山菜として人気急上昇のコシアブラ(漉し油、ウコギ科)

     若芽は、タラノメと並び人気の山菜だが、秋田ではほとんど食べなかった。しかし、最近は山菜ブームに乗ってポストタラノメ的存在になりつつある。幹がブナのように白く、枝の先に5枚の葉を掌のようにつけているのが特徴。タラノキのようにトゲがないのも人気の秘密かもしれない。深山のブナ林帯から里近くの雑木林や林縁、林道脇などに自生している。和名の由来は、昔、この木の樹液を漉して、槍や刀などの錆止め用の油として使われていたことによる。ノウサギは、雪の上に出ているコシアブラが大好物でよくかじることから、別名ウサギカジリとも呼ばれている。
  • 名前の由来・・・かつてこの木の樹液を漉して、金属のさび止めなどに使う塗料油として使われていたことから、「漉し油」と書く。越後産の油だから「越油」という説もある。別名ゴンゼツ(金漆)は、槍や刀の錆止め用の漆として利用するなど、黄金色に輝く塗料として珍重されたことによる。 
  • 花期・・・8月頃、高さ10~20m 
  • ・・・線香花火のような花序。花は黄緑色。 
  • 雄しべ、雌しべ・・・雄しべは5個、中央に雌しべが1個。花弁は白色5個で後ろに反り返る。 
  • ・・・小葉は5枚の掌状複葉で、トチノキに似ているが、本種は小葉に柄があるので判別できる。鋸歯は細かい。
  • 果実・・・扁平な球形で、黒色に熟す。ツグミやヒヨドリなどの野鳥、ツキノワグマなどの好物。 
  • 黒く熟した果実
  • コシアブラの黄葉と果実・・・若芽は山菜として有名だが、黄葉や実を見る機会は少ない。5枚の小葉は白っぽく半透明な黄色に黄葉する。最後は白くなって散ってゆく。果実は黒く熟し、多くの鳥が採食する。 
  • 樹皮・・・灰白色でなめらか。成木になると、ブナの幹のように地衣類の付着が目立つ。 
  • 豆腐の木・・・材が柔らかく、色も白いので「豆腐の木」と呼んでいる所が多い。
  • 一刀彫の材料・・・山形県米沢笹野地区に伝わる一刀彫の材料は、付近で採れるコシアブラ。主にサルキリを使い、頭部や翼部、尾部を成型し、ポスターカラーで彩色する。代表的な作品は、商売繁盛の守り神「お鷹ぽっぽ」。
  • 山菜・・・タラノメやウドと同じウコギ科の木の芽の部分を山菜として食用にする。利用するのは若い葉芽。ただし、高木になると採取できないので、雑木林で伐採した後の株から芽吹いた若い木がターゲット。粘り気のある木でよくたわむので、簡単に引き寄せて採れる。「山菜の女王」とも呼ばれている。 
  • 栄養価と薬効・・・新芽は栄養価が高く、特に脂肪や良質のたんぱく質、フラボノイドが多く、血圧降下などに役立つと言われている。 
  • 採り方・・・葉が展開する前のすぼまった状態の頂芽を、指先で折り取る。脇芽まで採ると枯れるので残す。アクで手が黒くなるので軍手は必携。硬くなった葉でも、一枚葉を天ぷらに揚げると美味しいらしい。だから夏でも利用可能な旬の長い山菜である。 
  • コシアブラの栽培・・・横手市山内三又地区では、耕作放棄地を利用した山菜の産地づくりを進めている。その一つがコシアブラ。定植活動は、地元高校生を招き世代間で交流しながら実施している。
  • 山菜として収量を上げるには・・・一本のコシアブラの頂芽を増やすことが大切。若芽採取の効率性を考慮すれば、1m前後で幹を剪定し、低い位置からの分枝を促すようにする。3 年目で枝数が2~3 倍に増加するという。 
  • 開いたばかりの若い葉芽は、美しい透き通るような黄緑色で、その名のとおり「油」を感じさせる艶がある。 
  • 料理・・・新芽はハカマをとって料理する。天ぷら、おひたし、各種和え物が定番。 
  • ウサギカジリ・・・ノウサギは、冬は雪の上に出ている木の皮や木の芽をかじって生きている。特に好きなのがコシアブラの木で、この木を見つけると、きれいに皮も芽もかじってしまう。だから、ウサギカジリなどとも呼ばれている。
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「別冊趣味の山野草 日本の山菜100」(加藤真也、栃の葉書房)
  • 「きのこ・木の実・山菜カラー百科」(主婦の友社)
  • 「釣り人のための山菜・きのこ50」(菅原光二、つり人社)
  • 「読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
  • 「山菜ガイド」(今井國勝ほか、永岡書店)