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樹木シリーズ106 ツルアジサイ、イワガラミ

INDEX ツルアジサイ、イワガラミ
  • アジサイに似た白い花を咲かせるツルアジサイ(蔓紫陽花、ユキノシタ科)

     ブナ、ミズナラ、トチノキ、ダケカンバなどの幹を這い、気根で張り付いてよじ登るツル性のアジサイ。冷涼な気候を好む北方系の種で、東北や北海道の山に多く見られる。アジサイに似た白い装飾花と多数の両性花をつける。ツルは時に高さ10m以上に登り、幹が見えなくなるほど覆い尽くして見事な花を咲かせる。よく似た植物にイワガラミがある。 
  • 見分け方・・・イワガラミに似ているが、ツルアジサイの白いガク片は4枚あるのに対して、イワガラミは1枚で三角状卵形であるので容易に見分けられる。ツルアジサイの葉は広卵形で細かい鋸歯があるに対して、イワガラミは縦に細長いハート形で鋸歯も粗い。 
  • 名前の由来・・・幹や枝がツル状で、花がアジサイに似ていることから、「蔓紫陽花」と書く。紫陽花は、中国の唐の時代の詩人・白楽天が友人に花の名前を聞かれた際に、陽光に映える紫色の花なので、「紫陽花」とでもして置きましょうという詩にちなんで命名された。別名ツルデマリ、ゴトウヅル。 
  • 花期・・・6~7月 
  • 樹皮・・・淡い褐色で縦に薄く剥がれやすいのが特徴。 
  • ・・・対生し、広卵形で、先は尖り、縁に鋭く細い鋸歯がある。 
  • 葉は食用・・・4~6月頃、新芽を摘むとキュウリの香りがする。この香り成分は、虫やカビに対する防御物質と考えられている。この新芽を摘んで、塩を一つまみ入れた熱湯に素早く潜らせ、冷水にとっておひたしや和え物、味噌汁、揚げ物に。イワガラミの葉も同様に食用になる。
  • ・・・枝先に集散花序を散房状に出し、多数の両性花と白い装飾花をつける。両性花は花弁5個が合着して帽子状になり、開花直後に落ちる。 
  • 雄しべ、雌しべ・・・雄しべは15~20個と多く、花柱2個の雌しべが目立つ。両性花をアップで眺めると、まるで線香花火のようにも見える。
  • 蒴果・・・球形で種子には翼がある。熟すとコーヒー色になる。
  • 救荒植物・・・1767年、米内沢藩主の上杉鷹山は、144種に及ぶ救荒植物を普及したが、その中にツルアジサイとイワガラミも含まれていた。稲作の北限に位置した東北は、度々冷害に見舞われただけに、豊かなブナ帯の恵みに依存する割合が高かったことが伺える。 
イワガラミ
  • 白い装飾花が1枚しかないイワガラミ(岩絡み、ユキノシタ科)

     名前とは違って、木にからむのが一般的である。山地に生え、気根を多数出して木や岩に張り付いて高く這い上る。白い装飾花のガク片は1枚しかないのが特徴。 
  • 花期・・・5~7月 
  • ・・・縦に細長いハート形で、先は尖り、縁には粗い鋸歯がある。葉の裏は白っぽい。
  • ・・・丸く平たい花序の周りに、1枚の白い三角状卵形のガクをヒラヒラさせた装飾花をつける。雄しべは10個。花柱は1個、柱頭は頭状で4~5裂する。 
  • 蒴果・・・倒円錐形で、秋に裂開して種子がこぼれる。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「続・読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
  • 「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
  • 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
  • 「樹木観察ハンドブック 山歩き編」(松倉一夫、JTBパブリッシング)