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樹木シリーズ107 ヤマウルシ

  • 一足早く真っ赤に紅葉するヤマウルシ(山漆、ウルシ科)

     秋、他の木々より一足早く色づくので良く目立つ。奇数羽状複葉の葉は先端部にまとまって互生する。野山で不用意に触れるとかぶれる危険な樹木は、ヤマウルシとツタウルシ。同じウルシ科のヌルデも、かぶれの原因となるウルシオールを若干含んでいるので、稀にかぶれる人もいるらしい。漆器に利用される中国原産のウルシと異なり、高さは3程度と低い。北海道から九州まで広く分布する。 
  • 見分け方・・・漆器に利用されるウルシとヤマウルシとの違いは、木の高さや葉の大きさで見分けられる。ウルシは樹高10mと高いのに対して、ヤマウルシは3m程度と低い。小葉はウルシの方が少し幅広く大きめである。 
  • 名前の由来・・・漆を採る木に似ていて、山に生育していることから、「山漆」と書く。 
  • 花期・・・5~6月、高さ3m 
  • ・・・奇数羽状複葉で互生する。卵形の小葉は、11~17枚で、先が尖り、縁は全縁か不揃いの鈍い鋸歯がある。 
  • 春の新葉・・・枝先に集まって立ち上がり、葉柄、葉軸が赤褐色で目立つ。 
  • 樹皮・・・灰白色で、縦に裂け目ができる。
  • ・・・雌雄異株。葉腋から円錐花序を出し、黄緑色の小さな花を多数開く。 
  • 雄花・・・飛び出した葯が5本。 
  • 果実・・・偏球形で、黄褐毛を密生する。かつては、果実からロウを採り、「和ローソク」を作った。 
  • 若い実のアップ・・・毛が多い 
  • 熟した実と野鳥・・・熟して外側の皮が剥がれ、白っぽい中果皮に包まれた種が現れる。白いものは脂肪で、栄養があるのでシジュウカラやアオゲラなどが好んで食べる。 
  • 紅葉・・・カエデやツタよりも早く紅葉し、黄色から真っ赤に色づいて美しい。 
  • パイオニア植物・・・森林の林縁部分や伐採等で日当たりが良くなった若い陽樹の雑木林には、ヤマウルシやヌルデ、ヤマハゼ等のウルシ科ウルシ属の小高木が目につく。 
  • かぶれの成分・・・樹液や葉の汁に含まれるウルシオールという油脂成分がかぶれの原因。人によっては、近寄っただけでかぶれることがあるので注意。 
  • 嫌われもの・・・柴や薪にするとよくはぜるので、昔から嫌われた。こんな逸話もある。昔、ある寺の和尚さんが、朝の勤行を炉辺で腹あぶりをしながらしていた。それを知った檀家の人たちが集まって相談した結果、寺に納める薪や柴を全部ウルシにすることにした。すると、和尚さんは腹あぶりができなくなったという。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
  • 「樹木観察ハンドブック 山歩き編」(松倉一夫、JTBパブリッシング)
  • 「樹木と木材の図鑑 日本の有用種101」(創元社)
  • 「秋田農村歳時記」(ぬめひろし外、秋田文化出版)