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樹木シリーズ109 オオヤマザクラ

  • 北国の野生種サクラの代表はオオヤマザクラ(大山桜、バラ科)

     オオヤマザクラは、雪や寒さに強く、本州ではヤマザクラより高地で育ち、北海道に多いのでエゾヤマザクラとも言う。花や同時に開く若葉は赤みが強いので別名ベニヤマザクラとも呼ばれている。角館の樺細工は、オオヤマザクラやカスミザクラの樹皮を使っている。特にオオヤマザクラの樹皮は美しく、高級品として珍重されている。
  • 名前の由来・・・ヤマザクラより花や葉が大きいところから、「大山桜」と書く。花も葉も紅色であることから別名ベニヤマザクラ(紅山桜)、あるいは北海道に多く生育していることからエゾヤマザクラ(蝦夷山桜)とも呼ばれている。 
  • 花期・・・4~5月、高さ10~15m
  • ・・・葉よりやや早く、紅紫色の花が2~3個散形状に咲く。花は、ヤマザクラより大きく、色も濃い。
  • 雄しべ、雌しべ・・・雄しべは35~38個、雌しべは1個、花弁は5個。 
  • 赤みを帯びた若葉が開き始めると、花よりも赤い葉が目立つようになる。
  • 新緑の山々に彩を添える・・・花の色も多様で、新緑の山を俯瞰すると白っぽく見える。 
  • 若葉は赤みを帯び、花が散った後でも赤い。春紅葉を演出する重要な樹木。 
  • ブナ帯の春紅葉・・・若葉の頃、新緑の山々に赤く紅葉したように映えるのが、ベニイタヤやオオヤマザクラなどの若葉だ。 
  • ・・・楕円形または卵状楕円形でやや厚く、裏面はわずかに白みを帯びる。 
  • 紅葉
  • 果実・・・球形で、緑色から赤色、そして黒く熟す。 
  • 樹皮・・・紫褐色で、しばしばやや黒色を帯びる。皮目が横に長く並ぶ。この樹皮がもつ特有の光沢を生かした伝統的工芸品が角館の樺細工である。 
  • 国の伝統的工芸品「角館の樺細工」(仙北市)・・・カスミザクラを使うこともあるが、主にオオヤマザクラの樹皮を用いて作られる工芸品を樺細工という。「樺」の字から「白樺」の樹皮を使った製品との誤解を招きやすいことから、「桜皮細工」という表記も使用するようになっている。昭和51年(1976年)、秋田県で初めて国の「伝統的工芸品」に指定された。 
  • 樺細工の歴史・・・北秋田市(旧合川町)鎌沢地区の熊野神社に伝わる由来によると、「私の先祖は修験だが、金弥という人の代に、阿仁樺と称して一子相伝だった樺細工の技法を外に出した」と記されている。修験者の金弥の代に阿仁から技法が流出し、ひとつは阿仁鉱山との関わりが大きかった角館に伝えられ、もうひとつのルートとして、隣接する森吉から大館方面にも技法がもたらされたと考えられている。

     一方、角館では、1780年(天明年中)頃、藤村彦六という角館・佐竹北家の武士が「阿仁に出向いて樺細工の技法を習った」と伝えられている。藩政期の細工物には、印籠、眼鏡入れ、胴乱などが確認されている。明治に入ると、禄を失った武士たちがもともと内職であった樺細工に本業として取り組み、大正期には、秋田県の特産品として中央の博覧会にも出品されている。 
  • 型もの・・・「仕込みもの」ともいい、木型に合わせて芯を作り、その上に樺を貼り付けて筒状のものを作る工法。茶筒、印籠(薬を携帯するための容器)、胴乱(小型のかばん)など。 
  • 木地もの・・・下地に木地を使ったもので、硯箱、文庫、飾り棚、茶櫃、重箱などの箱物が多く作られる。明治30年代から始まった工法。
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)