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樹木シリーズ126 イチジク

  • 人類史上、最も古い栽培果樹・イチジク(無花果、クワ科)

     西南アジア原産で、日本には寛永年間(1624~44年)に渡来し、各地で栽培されている。ギリシャ神話には、女神デメテルがイチジクを作ったと書かれ、人類史上、最初に栽培化された果樹として認定されている。旧約聖書では、アダムとイブの裸を隠すために、イチジクの葉を使用したという話は有名である。日本では、温暖な西日本が主な産地。日本の栽培イチジクは、受粉しなくても結実する品種。生食のほか、甘露煮や天ぷらなどに利用される。果実は、下痢や便秘、風邪による喉の痛み、高血圧に効果があるとされている。
  • 名前の由来・・・実の中に花を咲かせるが、外から花は見えないことから、「無花果」と書く。和名「イチジク」は、17世紀初めに日本に渡来した時、中国名「映日果」を音読みで「エイジツカ」とし、それが転訛したものなどの説がある。 
  • 高さ・・・よく分岐して高さ約4mになる。 
  • ・・・葉は互生し、掌状に3~5裂する。質は厚く、茎、葉などを切ると白い乳液が出る。 
  • ・・・6~9月、葉腋に倒卵形で緑色の花のうが1個ずつつく。この中に小さな花が多数入っている。雌雄異株。ただし、日本の栽培イチジクは、受粉しなくても結実する品種である。 
  • 花が見えないのに受粉できる理由・・・原産地の野生状態では、小さなイチジクコバチが、イチジクのおしりにある小さな穴から入り込み、中に卵を産む。中には養分や住む空間があるので、幼虫はそこで成長する。成虫になったイチジクコバチは、体に花粉を付けて外に出て、他のイチジクに飛んで産卵する。このときに、体に付けた花粉をイチジクの花に付けるので、イチジクは受粉できる。イチジクとイチジクコバチは、お互いに助け合って生きているというわけ。
  • 花は、この中で種子に育っている。
  • 果実・・・長さ約5cmの果のうとなり、下のものから暗紫色に熟して食べられる。 
  • 樹皮・・・緑色で縦に裂け、太くなるにつれて灰色になる。
  • 主な産地・・・愛知、和歌山、福岡、兵庫など温暖な西日本が主な産地。 
  • 生食・・・軽く水洗いした後、バナナのようにヘタの部分から皮をむく。乳白色の果肉が出てくるのでそのまま食べる。1/4にカットしてから皮をむいてもOK。 
  • 他の食用・・・日本では甘露煮や天ぷらに。ジャムやコンポート、スープやソースの材料、ワインや酢の醸造用ペースト、濃縮果汁など。 
  • 薬用・・・果実は、下痢や便秘、風邪による喉の痛み、高血圧に効果があるとされている。民間療法では、葉や茎を傷つけると出る白い乳液を、イボとりに使用。葉は、風呂に入れると体が温まり、神経痛や痔によく、皮膚がツヤツヤになると言われている。 
  • 乾燥イチジク
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)