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樹木シリーズ137 ドイツトウヒ(ヨーロッパトウヒ)

  • 本物のクリスマスツリーと言えばドイツトウヒ(別名ヨーロッパトウヒ、マツ科)

     原産地はヨーロッパ中部から北で、日本には明治中期に渡来した。ドイツの「黒い森(シュワルトワルト)」は、この木とヨーロッパモミがつくる森である。北欧やイギリスでは、ヨーロッパモミがないので、クリスマスツリーと言えば本種である。庭木や公園樹として植えられ、日本でも「モミの木」と呼ばれている。北海道では明治中期以降、鉄道の沿線に植えられ、鉄道防風林などに広く植栽された。 
  • 名前の由来・・・ドイツに多く生育しているトウヒだから、ドイツトウヒ。別名ヨーロッパトウヒ、欧州トウヒとも呼ばれている。ちなみに英名はNorway Spruceであり、直訳するとノルウエートウヒ。 
  • 樹形・・・きれいな円錐形の樹形で、クリスマスツリーとして、モミの木とともに人気があるが、ツリーとしての本物はこの木とされている。高さは20~30m、原産地では高さ70m、直径2mにも達する。
  • 見分け方・・・モミの木とよく似ている。ドイツトウヒは細長い大きな松ぼっくりを下に垂れ下がるようにつけるが、モミ属は球果が上に直立するので簡単に見分けられる。  またアカエゾマツにも似ているが、小枝が垂れ下がること、葉が長いこと、球果が大きいことで区別できる。
  • 樹皮・・・褐色、老木になると灰色になり、鱗片状に剥がれ落ちる。
  • ・・・針のような形でらせん状につく。暗緑色で光沢がある。葉の断面は菱形。四面に白色の気孔線がある。基部は葉枕(ようちん)が発達する。枝は赤茶色が目立つ。雌雄同株。雄花は、前年枝にたくさんつく。初めは薄紅色。黄色っぽくなると、花粉を風で飛ばすようになる。 
  • 小枝が垂れ下がる。
  • 松ぼっくり・・・長さ15~20cmになり、トウヒ属の中では最大。成熟すると褐色になり垂れ下がる。鳩時計についている重りは、ドイツトウヒの松ぼっくりを模したもの。 
  • 松ぼっくりは1年型・・・その年の秋に下向きになって熟す。熟すと明るい褐色になり、果鱗が開き始める。果鱗がお腹に抱く種は2個。種は暗褐色で長い翼がある。 
  • 梢には、去年の松ぼっくりがぶら下がり、強い風が吹くと落下する。木の下にはよく松ぼっくりが転がっている。森のクラフトなどに利用されている。
  • リスのエビフライは最大級・・・リスが松ぼっくりを食べた残骸はエビフライにそっくりだが、その中でもドイツトウヒは最大級のエビフライだ。 
  • 樹木信仰とクリスマスツリー・・・ドルイド教徒は、ドイツトウヒやヨーロッパモミ、ナラの老樹を神聖視し、冬になると常緑のドイツトウヒやヨーロッパモミの枝を部屋に飾った。北欧では、中世以前から、ドイツトウヒやモミを森から伐り出し、その枝に造花やお菓子、小物、リンゴなどを飾りつけていた。これは収穫の感謝と翌年の豊穣を願うものであった。その風習がキリスト教の中に取り込まれクリスマスツリーとして広まったものと言われている。 
  • 木材・・・有用樹で、集成材の原料として使われることが多い。建築材、器具、土木、パルプ用包装用、ヴァイオリンやギターの表板やピアノの響板などの楽器用に使われる。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
  • 「図説 日本の樹木」(鈴木和夫・福田健二、朝倉書店)
  • 「探して楽しむ ドングリと松ぼっくり」(平野隆久ほか、山と渓谷社)
  • 「拾う! 飾る! 楽しむ! 森のたからもの探検帳」(飯田猛、世界文化社)