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樹木シリーズ145 サルトリイバラ

  • 西日本ではこの葉で餅を包むサルトリイバラ(猿捕茨、ユリ科)

     道端やヤブに生える落葉ツル性低木。鋭いトゲと巻きヒゲで他の植物に絡み、時に高さ3mほどに攀じ登る。春、若葉が開くと同時に、黄緑色の小さな花が枝に球状に集まって咲く。雌雄異株で、雌株には丸い実がなり、秋に赤く熟し良く目立つ。その赤い実は、生け花やリースなどに利用される。西日本の柏餅は、カシワではなく、この葉で巻く。「いばら餅」と呼ぶ地域もある。根は漢方薬に利用される。
  • 名前の由来・・・サルトリイバラにはトゲがあり、猿が引っ掛かって捕まってしまうことから、「猿捕茨」と書く。ただし、トゲの数が少なく、猿が捕まるほど鋭くもない。 
  • 山帰来(さんきらい)・・・山で病気になった時、サルトリイバラの根をかじったら病気が治って、山から帰ることができたことから、「山帰来」と呼ぶ。生薬名も「山帰来」。
  • 花期 4~5月
  • ・・・互生し、円形または楕円形で全縁。先端はわずかに突出し、基部は円形。質は厚くて光沢があり、3~5脈が目立つ。葉柄は短く、両側が翼状になり、1対の長い巻きヒゲがある。 
  • かぎ状のトゲと葉柄の巻きヒゲで他の植物に絡みつき、茎を伸ばす。
  • ルリタテハの食草(画像:ウィキペディア)・・・サルトリイバラの葉の裏いるのは、ルリタテハの幼虫。全幼虫期にわたって、サルトリイバラの葉を食べて成長する。他にホトトギス、ヤマユリなどのユリ科植物も食草にしている。
  • ルリタテハ・・・クヌギやコナラなどの樹液や腐った果実などに好んで集まる。越冬後は、アセビやキブシなどの花を訪れる。オスは、森林内の空間などで占有行動をとる。森林に依存したチョウの一つ。
  • ・・・葉腋から散形花序をだし、黄緑色の小さな花を多数つける。雌雄異株。花被片は6個で反り返る。雄花に雄しべが6個、雌花に仮雄しべ6個と花柱が3個ある。 
  • 果実・・・直径7~9mmの球形の液果。初め緑色、熟すと赤色になる。
  • 鳥を誘う赤い実・・・目立つ真っ赤な実は、鳥を誘い、果実といっしょに種を飲み込んで移動した後、糞とともに未消化の種子を散布してもらう戦略だといわれている。 
  • 柏餅・・・端午の節句の習わしが始まる江戸時代以前、西日本では、身近な里山に普通に生えているサルトリイバラの葉は食糧を包むのに使われた。つまりサルトリイバラの葉で餅を包むのは、柏餅より歴史が古いという。江戸時代になると、江戸ではサルトリイバラの葉を多量に集めるのが困難なことから、カシワの葉を代替品として使うようになったという。
  • 和菓子屋さんでは、この葉で包んだ餅、饅頭を「山帰来餅、山帰来饅頭」の名で販売している。 
  • 生薬名 山帰来(さんきらい)・・・10月頃、根茎を掘り取り水洗いした後、輪切りにして天日乾燥させる。煎じて服用する。利尿、腫れ物、おでき、解熱に効果があるとされている。 
  • 山菜・・・若芽、若葉は、天ぷらや和え物など山菜として利用される。また大きくなった葉は、湯がいてから刻み、揉みながら干して保存し、お茶として利用する。 
  • 「きりえ」作家・平野庄司さんの作品「さるとりいばら」
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「きのこ・木の実・山菜カラー百科」(主婦の友社)
  • 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
  • 「読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)  
  •  「フィールドガイド 日本のチョウ」(日本チョウ類保全協会編、誠文堂新光社)