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樹木シリーズ⑮ 西洋リンゴ、ナシ・ヤマナシ

INDEX 西洋リンゴ、ナシヤマナシ
  • 花も実も美しい西洋リンゴ(西洋林檎、バラ科)

     原産地は、中央アジアの「コーカサス山脈」と、中国の「天山山脈」を中心とした山岳地帯と考えられており、ここから、世界各国へ伝播したと言われている。日本で栽培されている品種は、明治4年(1871)に日本に導入されたもの。リンゴの花盛りを迎えると、里にも春の盛りがやってきたことを実感する。秋、たわわに実ったリンゴも格好の被写体である。 
  • 花 期・・・4~5月 
  • ・・・芽から5~6個が放射状にまとまって咲く。これを「花そう」という。ツボミの時は紅色だが、花びらの内側は白いので、開くと真っ白に見え、清純な少女のような趣がある。花弁は5個で白色又は薄い紅白色。 
  • 中心花と側花・・・最初に咲く中心部の花を「中心花」、少し遅れて咲く周りの花を「側花」という。中心花は成長が早く、栄養的にも充実しているので、花摘みと摘果の際には、中心花と中心果が残される。 
  • 受 粉・・・5月中旬頃。自分の花粉では受粉しない「他家結実」。昔は、一つ一つの花に、人が花粉をつけていたが、今ではマメコバチというハチを使っている。 
  • 適 地・・・年平均気温が10℃前後の冷涼な地域。主な産地は、青森、長野、山形、岩手、福島、秋田。
    1. 収穫が終わり落葉したリンゴの木は、12月~翌年3月まで休眠期間に入るので、一定期間低温にさらされる必要がある。
    2. リンゴが色付くには、9月下旬~10月上旬頃、低温になる必要がある。冷涼な気候は、リンゴの貯蔵にも適している。
    3. 昼夜の温度差が大きい地域・・・昼は成長し、夜は寒さから身を守る過程を繰り返すことで、実の引き締まった、糖度の高いリンゴができる。 
  • 温量指数・・・春の平均気温が5度以上になると、りんごは生育を始め、花や実をつける。秋、5度以下になると生育をやめて休眠する。月の平均気温が5度以上の月だけを選び、その気温から5度を差し引き積算したものを温量指数といい、その土地のりんご栽培の適否が判定される。りんごは80前後の指数が最適地とされている。ちなみに青森は85、長野は95。 
  • 摘 果・・・6~7月。りんごは、1つの株に5つくらい花が咲く。これを全部りんごの実にすると小さなりんごしかできない。さらに、栄養が足りなくなり、来年の花ができなくなってしまうらしい。そこで、3~5株に1つの実になるようにいらない実を取ってしまう。摘果することで、大きく、美味しいりんごができる。花の時期に花を摘むと摘花となる。 
  • 花言葉・・・清純 
  • 樹 皮・・・黒紫色から次第に灰褐色になる。若枝には綿毛が密生する。 
  • ・・・長さ6~13cmの広楕円形又は卵形で、縁には鈍い鋸歯がある。 
  • 果 実・・・直径4~12cmの球形で、両端は深くくぼみ、紅色又は紅黄色に熟す。生食のほか、ジャムやジュースなどに加工される。 
  • 赤い実・・・太陽が当たった部分だけ赤くなる。だから日影をつくる葉を2~3回に分けて摘み取る。また、光の方向と反対側にも色がつくようにりんごの実を回転させる作業まで行い、実全体に太陽が当たるようにするなど、色がきれいにつくような作業をしている。 
  • ニュートンのりんご・・・300年前、アイザック・ニュートンは、英国の生家の庭でりんごの落ちるのを見て「万有引力の法則」を発見した話は有名である。日本には、1964年頃、英国国立物理学研究所から日本学士院長に苗木が送られてきたのが最初といわれている。このニュートンゆかりのリンゴの木は、秋田県果樹試験場で接ぎ木され、後に秋田大学にも植林されている。
  • 俳 句
    娘よりきれいな母や花りんご 清水基吉
    村ぢゆうが明るくなりぬ花林檎 橋本末子
    雨あとの月の出しるき花林檎 吉田敏夫 
  • リンゴの効能・・・動脈硬化予防、赤ちゃんの整腸作用、大腸がん予防、虫歯予防、胃腸、便秘の解消、糖尿病予防、貧血予防、高血圧予防、肥満の予防などの効能があるとされている。 
ナシ・ヤマナシ
  • 日本独自の果物、ナシ(梨、バラ科)

     ナシは、日本で栽培される果物の中では歴史が古く、弥生時代には食べられていた。日本書紀にも栽培の記録があり、江戸時代には100種類以上栽培されている。日本なし(和梨)は、ヤマナシから改良されたもので、「赤梨(豊水・幸水)」と「青梨(二十世紀)」がある。本来は高木だが、農家では作業しやすいように枝を低く這わせて育てる。白い花が一斉に咲くと美しいが、香りはあまりよくない。
  • 名前の由来・・・実の中心部は酸味が強いので「中酸(なす)」と呼ばれ、そこから転訛したという説や、果肉が白いので 「中白(なかしろ)」、 「色なし」から転じたという説、風があると、うまく実ができないことから「風なし」から転じたという説もある。 
  • 花 期・・・4月、高さ15m。畑一面、白い絨毯を敷き詰めたように花が咲く。 
  • 花びらの枚数は、ほとんどの種類で5枚。雌しべの先に柱頭が5つ、雌しべの周りに雄しべが約20本。中国では、果実より花の風情を愛でた。 
  • 受 粉・・・本来は、昆虫や風などで受粉するが、人の手で受粉を手助けをしている。ナシの花が咲く頃、ツボミを摘み、花粉を採取して、花一つずつに綿棒を使って3回ほど受粉させる。 
  • 菅江真澄「おがらの滝」・・・1807年4月9日、峰浜村岩子の梨の花は、山風に雪が降るように散り乱れていた。
  • 炉縁材・・・囲炉裏の炉縁にはよくナシの木を使うが、これは「災いナシ」という縁起と、ナシの木が乾燥に強く、木目が美しいからである。 
  • 効 能・・・便秘改善、高血圧予防、動脈硬化予防、心筋梗塞予防、脳梗塞予防、利尿作用、咳止めに効果があるとされている。 
  • 俳 句
    青天や白き五弁の梨の花 原 石鼎
    安達太郎の雪もはなびら梨咲けり 堀口星眠
    梨花月夜まよはずとどく汽笛あり 木附沢麦青 
ヤマナシ
  • 栽培ナシの原種・ヤマナシ(山梨、バラ科)

    果樹として栽培されているナシは、このヤマナシから改良されたもの。秋、ナシの長十郎を小さくしたような果実が黄褐色に熟す。味は渋く、食用には向かない。
  • 花期・・・4~5月
  • ・・・枝先に白い花を5~10個散房状に開く。花弁は5個、雄しべは約20個で、葯は紫色を帯びる。花柱は5個。ガク片は5個で、花の後に落ちる。
  • ・・・卵円形~卵状長楕円形の葉が互生し、縁に細い針状の鋸歯がある。
  • 樹皮・・・灰紫黒色で、縦に割れて剥がれる。小枝は時に刺に変わる。
  • 果実・・・直径が3~9cmで、9~10月に黄褐色に熟す。果肉は、硬く味も酸っぱいため、あまり食用には向かない。
参 考 文 献 
「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
「俳句歳時記新版」(角川学芸出版編、角川ソフィア文庫)