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樹木シリーズ151 ウラジロモミ

  • 諏訪大社の御柱祭に使われるウラジロモミ(裏白樅、マツ科)

     日本特産の常緑針葉樹で、真っすぐに伸び、太く大きく育つ。大きいものは、高さ40m、直径2mに達する。モミより分布する標高が高い。枝は無毛で、葉裏の気孔帯が白く目立つ。千年以上の歴史をもつ長野県諏訪大社の御柱祭の木落しに使われる。福島県以南から中部地方にかけて分布し、そのほか紀伊半島と四国に小さな分布地がある。積雪量の多い日本海側には少ない。 
  • 名前の由来・・・日本特産のモミの木で、葉の裏が白い特徴をもっていることから「裏白樅(ウラジロモミ)」と書く。 
  • ウラジロモミの大木と諏訪大社の御柱祭・・・7年ごとに行われ、その勇壮さで知られる諏訪大社の御柱祭で使われるのは、ウラジロモミの大木である。社殿の四隅に、モミの巨木の御柱を建て替える伝統行事。
  • 御柱祭・・・1,200年前の平安時代から行われるようになったと言われている。御柱用材は、上社では八ヶ岳の御小産山(おこやさん)の社有林等から、下社は霧ケ峰に近い東俣国有林から切り出される。10 tにも及ぶ大木を千人を超える老若男女が曳いてくる。特に急坂を下る「木落とし」、清流を渡る「川越し」が有名である。
  • 諏訪大社の御柱(写真:ウィキメディア・コモンズ)・・・御柱の樹齢は150年以上、長さ約17m、直径1m余り、重さ約10トンの巨木。諏訪大社は、上社本宮、上社前宮、下社春宮、下社秋宮の計4ヵ所にお宮がある。それぞれ四方に御柱を建てるので、4宮×4本=16本の御柱が使われる。
  • 樹冠、花期・・・枝は太く水平に広がり、卵状円錐形の樹冠になる。モミと同じく、庭木のほか、クリスマスツリーに利用される。花期は5~6月、雄花は黄色の花粉を出す。雌花は直立する。 
  • ・・・長さ2cmほどの扁平な線形で、葉先は二つに分かれないが、時に先端がわずかに二叉することがある。葉裏には、白い2本の気孔帯が目立つ。枝は無毛。
  • 球果・・・長楕円形で、枝に直立する。1枚1枚の種鱗の先端は、尖った部分が突き出ない。 
  • 球果は付け根から丸ごと落下せず、先に果鱗がバラバラに落ち、球果の軸だけが遅くまで残る。 
  • 樹皮・・・灰褐色で、老木になるにつれて、ウロコ状に剥げる。 
  • モミ 
  • ウラジロモミ
  • オオシラビソ(アオモリトドマツ)
  • トドマツ
  • モミ属の棲み分け・・・本州に分布するモミ属は、低い標高からモミ、ウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソ(アオモリトドマツ)の順で垂直的に棲み分けている。トドマツは北海道のみに分布。ウラジロモミは、亜高山帯下部から冷温帯にかけて分布する。 
  • 九州では消滅・・・最終氷期には、九州にも分布していたが、現在は自生していない。その理由は温暖化だと言われている。温暖化が進むと、ウラジロモミはより標高の高い地へ逃げようとする。九州の山の標高は1800m以下と低いので、広葉樹に山頂まで追い詰められ、ついに逃げ場を失って消滅したと考えられている。この仮説を「追い出し現象」と呼ばれている。
  • モミは、もともと低標高に生育していたので、追い出されず、現在も九州に広く分布している。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社) 
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「樹木観察ハンドブック 山歩き編」(松倉一夫、JTBパブリッシング)
  • 「日本有用樹木誌」(伊東隆夫ほか、海青社)
  • 「アジサイはなぜ葉にアルミ毒をためるのか 樹木19種の個性と生き残り戦略」(渡辺一夫、築地書館)