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樹木シリーズ153 アオツヅラフジ

  • コダシに使われるツル植物・アオツヅラフジ(青葛藤、ツヅラフジ科)

     山野に生えるツル性の落葉樹。ヤブに絡まって生長する。県内では主に沿岸部に生育する。秋、ブドウのような果実が鮮やかな藍色に熟す頃が一番目立つ。ただし果実は有毒なので注意。男鹿市では、古くからコダシの材料として使われている。地元では、アオツヅラフジのことを「トジラ」または「トジナ」といい、コダシは「トジラのコダシ」と呼んでいた。分布は、北海道渡島半島以南、本州、四国、九州、沖縄。
  • 名前の由来・・・「ツヅラフジ」とは、昔、このツルでツヅラ(衣類を入れる籠)を編んだことから。「アオ」は実が青いことによる。 
  • 別名カミエビ・・・エビはブドウの古名で、果実に白い粉がふいているのをカビに見立てて「カミエビ」と呼んだ。 
  • 花期・・・7~8月 
  • ・・・広卵形で縁は全縁、時に浅く3裂する。
  • ・・・小形の円錐花序に黄白色の小さな花を開く。花弁とガク片は6個。雌雄異株。 
  • 果実・・・球形で青~藍黒色に熟す。有毒。 
  • 薬効・・・アルカロイドを含み、根や茎、果実は漢方で「木防己(モクボウイ)」と呼ばれ、鎮痛・消炎・利尿薬として利用される。
  • ツル・・・円柱形で短毛が生えている茎は細く、他のものに左巻きに巻き付いて、高さ10m程に長く伸びる。 
  • ツルウメモドキとアオツヅラフジの混生
  • アオツヅラフジ細工(男鹿市)・・・細く長いツルは、枝分かれしながら伸び、その長さは10mに及ぶこともある。採集時期は、10~11月の木々が落葉する頃に雑木林で採集する。3年ほど育った直径2mmほどのツルを採取する。木に絡んだものではなく、地面に真っすぐに這うように伸びるツルを選ぶ。余分な根や葉を落として、根元を束ねて日陰に吊るし1~2ヵ月乾燥させる。製作は1月から行った。細工には、コモタケやコモヅチという専用の製作道具を使う。強靭で擦り切れにくく耐水性に優れているので、沿岸部地域では、水に濡れても丈夫な運搬具として重宝された。 
  • アオツヅラフジのコダシ・・・漁業が盛んな男鹿市加茂青砂地区では、古くから海辺で暮らす生活用具としてアオツヅラフジを使ったコダシ作りが行われていた。岩のりなどの海藻を採集する際には水切れが良く大変重宝したという。 
  • 森の学校「カゴやリースづくり体験」・・・ツルは、放っておくとどんどん伸びて、若い幹に食い込んだり、樹冠を覆ってしまい、木の成長を妨げたりする。そんなフジツルやアオツヅラフジなどの自然の素材を生かして、誰でも簡単につくれるワイルドなカゴづくりやリースづくりを行っている。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社) 
  • 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
  • 「素材と技術からみた編組品の産地の特色と地域性-秋田県内の事例を中心として」(秋田県立博物館研究報告第44号、斉藤 洋子)