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樹木シリーズ⑯ レンゲツツジ、ヤマツツジ、シャクナゲ

INDEX レンゲツツジ、ヤマツツジツツジ類シャクナゲ
  • 初夏の高原を彩るレンゲツツジ(蓮華躑躅、ツツジ科)

     初夏の高原を彩る朱色の花は、周りの緑やワタスゲの白の群落の中で一際映える。その花園を訪れたパーティ一行が歓声を上げるほど美しい。だから室町時代から庭木で鑑賞されていたという。ただし、花や葉には、強い神経毒の一種が含まれている。放牧された牛は、それを知って食べずに残すので牧場でよく見かける。北海道南西部から九州まで広く分布。 
  • 名前の由来・・・花や葉の様子をレンゲ(ハス)の花に見立てて、「蓮華躑躅」と書く。ツツジは、羊がこの葉を食べて躑躅(てきちょく=足ぶみ)するように地を打ちながら死んだところから漢名は「羊躑躅」だったと言われている。花があまりに美しいので、足踏みして進まなくなるので「躑躅」になったという説もある。 
  • 花 期・・・5~6月、高さ1~2m 
  • ツボミ
  • 開花初期
  • ・・・前年の枝先に、色鮮やかな朱色の花を2~8個かたまって咲く。有毒成分があるので注意。 
  • 花冠は直径5~6cmの漏斗形で5中裂する。 
  • 本種は花が大きく日本のツツジ類で最大級。可憐なヤマツツジの花に対して、大形で派手な色彩をもつので、別名「鬼躑躅」の異名をもつ。
  • 菅江真澄「すすきの出湯」・・・「レンゲツツジという、花ぶさの特に大きく咲いた木を植えている家があった。去年の春、山から根こそぎにしてここに移したものであるが、枝も茂り、花もたくさんつけてよいと人が語った。゛一枝許してくたさい゛と言って、垣根の外にさしでているのを折り取ると、犬に吠えられて驚いた。」 
  • ・・・互生し、長さ5~12cmの倒披針形で先はあまり尖らない。縁には細毛がある。 
  • 動物も敬遠・・・レンゲツツジには、呼吸停止を引き起こす有毒成分が含まれている。高原の牧場に牛や馬を放牧しても、家畜は敬遠して食べずに残っている。だから、牧場にはレンゲツツジの群落がどんどん広がり、観光の目玉になっている所もある。急増しているニホンジカも食べないらしい。長野県内では、鬼のように恐ろしいツツジの意味で「鬼ツツジ」と呼んでいる。 
  • 八幡平大沼とレンゲツツジ
  • 花言葉・・・あふれる向上心、情熱 
ヤマツツジ
  • 日本の野生ツツジの代表種・ヤマツツジ(山躑躅、ツツジ科)

     全山新緑に包まれる晩春から初夏にかけて、色鮮やかな朱赤色の花を開く。北海道から九州まで広く分布し、最も目につく野生のツツジ。半常緑の低木で、春に出る葉は秋に落葉し、夏に出る葉の多くは越冬する。色鮮やかな花は食用になる。
  • 名前の由来・・・山で見られるツツジであることから、山躑躅と書く。 
  • 花 期・・・5~6月、高さ1~4m 
  • ・・・枝先に朱赤色の花が2~3個咲く。花弁は5枚、一部の花弁に斑点がある。雄しべは5個。葯は黄色。
  • アゲハチョウが花粉を運ぶ・・・一部の花弁にある斑点は、蜜標と呼ばれ、特にアゲハチョウに蜜の場所を教える標識になっている。アゲハチョウは、花の蜜を吸うためにストローをもっている。斑点を目印にして、筒にストローを突っ込んで蜜を吸う。蜜に達する筒の長さは、アゲハチョウのストローとほぼ同じ。これは、アゲハチョウがうまく蜜を吸えるように進化したと言われている。花色もアゲハチョウをひきつけるように進化したと言われている。
  • 満開時のヤマツツジ・・・木全体を覆うほどに花をつける。
  • 菅江真澄「すすきの出湯」・・・「青葉の中にヤマツツジが、今を盛りと紅色に咲いていた。世にいう霧島つつじの緋よりも色が濃く、花ぶさも大きいのが、めもあやに、ところどころに咲いていた。」 
  • ・・・半常緑性で、春に生えた葉は秋に落葉するが、夏葉は冬も残る。枝先に5枚前後の葉が集まってつく。卵形で全体が金色から茶色の毛に覆われる。
  • 地域差がある・・・暖地に生息するヤマツツジは、春に出た葉は秋に落葉するが、夏に出た葉は冬を越す。一年を通して葉があることから常緑樹の仲間である。しかし、寒冷地の北海道では落葉性が強い。地域によって異なる気候に適応して、落葉性、常緑性の性質をもつ。
  • 食用・・・花をかむと、さわやかな酸っぱさが口に広がる。花から花冠を抜き取って、花の姿のまま、サラダにして食べたり、チャーハン、ピラフ、コンソメ風スープなどに散らして風流を味わう。ただし、有毒植物のレンゲツツジの花と間違えてはならない。また手作りケーキのトッピングにするなど、花の雅趣でお客さんをもてなすには素晴らしい素材である。 
ツツジ類
  • キレンゲツツジ・・・レンゲツツジの黄色い花を咲かせる変種。好んで庭に植えられる。
  • カバレンゲ・・・帯紅黄色の花を咲かせるレンゲツツジの変種。本州や九州に野生もあるが、主に植栽されている品種。 
  • シロリュウキュウ・・・花は白色で一重の大輪。上弁に淡い黄色のボカシが入る。耐寒性があり、北海道でも戸外で越冬する。
  • モチツツジ
シャクナゲ
  • 最も豪華な花をつけるシャクナゲ(石楠花、ツツジ科)

     春、淡紅色の花が咲く。日本に自生しているのは約30種でいずれも深山や鉱山など、空気が澄み風雪に耐えて咲いている。日本で比較的栽培されているのは、京都周辺のホンシャクナゲ、東日本のアズマシャクナゲ、東海地方のホソバシャクナゲである。 
  • 名前の由来・・・石の間に生え、南向きの土地で育ちやすいことから、石楠花と書く。
  • 花 期・・・5月、高さ4m
  • ・・・枝先に紅紫色~白色の花が多数横向きに咲く。花冠は直径約5cmの漏斗形で先は7裂する。雄しべは14個。 
  • 葉は毒・・・葉は毒性が強く、誤って食べると下痢、嘔吐などをおこし、呼吸中枢を麻痺させる成分がある。だから花言葉は「危険」「警戒」。 
  • ヒマラヤ南部やチベット、中国雲南省、四川省などの3000~4000mの高地で生育し発達してきた植物。分布は、シベリア、カムチャッカ、中央アジア、朝鮮半島、日本、欧米の一部にも自生。種類は1000種を超えるという。 
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
「樹木観察ハンドブック 山歩き編」(松倉一夫、JTBパブリッシング)
「植物民俗」(長澤武、法政大学出版局)