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樹木シリーズ164 ハシドイ

  • 花が咲くと昆虫が群がるハシドイ(モクセイ科)

     本州では山地に生えるが、北海道では主に低湿地に生える。6月頃、香りの良い白い花をびっしりつける。その白い花の群れと香りに誘われて、多くの昆虫たちが集まってくる。花と昆虫を同時に楽しむことができる樹木。モクセイ科ハシドイ属は、ユーラシア大陸に約30種あり、国内には本種のみが自生する。庭木や公園、街路樹として利用されている。北海道から九州まで広く分布。(写真:花の蜜を吸うサトウラギンヒョウモンとミドリヒョウモン) 
  • 名前の由来・・・木の枝先に集まって花が咲く様子が、「端集い(ハシツドイ)」と表現され、これが詰まって「ハシドイ」になった。 
  • 類似種・ライラック(ムラサキハシドイ)・・・明治の中頃、ヨーロッパから渡来し、観賞用に広く植えられる。一般にライラックの名で知られ、白、紫、赤色など色鮮やかな園芸品種がある。北米やヨーロッパ各地では、5~6月にかけてライラック祭りが開催される。花の香気は古くから著明で、ヨーロッパでは香油を採取するために植栽される。英国では、一戸一花の標語になるほど主要な花木だという。 
  • 花期・・・6~7月、高さ10~20m 
  • 樹皮・・・皮目が横に並ぶなど、一見サクラかと見紛うほど似ている。やや光沢のある灰白色。 
  • ・・・広卵形の葉が二つずつ向かい合ってつく(対生)。先は尖り、縁は全縁。 
  • ・・・枝先に大形の円錐花序を出して、香りの良い白い花をびっしりつける。花冠はやや漏斗形で4つに深く裂ける。
  • ハシドイ蜜・・・ミツバチの蜜源植物の一つで、「ハシドイ蜜」と呼ばれている。それだけに上向きに白いボリューム満点の花が満開に咲くとたくさんの昆虫が集まってくる。(写真:コマルハナバチの♂)
  • ハシドイの花で観察した昆虫(写真:花の蜜を吸うホシホウジャク)・・・ナミアブ、キヒゲアシブトハナアブ、コアオハナムグリ、コマルハナバチ、クマバチ、ホシホウジャク、オオハナアブ、アカシジミ、サトウラギンヒョウモン、ミドリヒョウモンなど実にたくさんの昆虫を観察できる。
  • 花の周りを飛び交うコアオハナムグリ
  • 花の蜜を吸うアカシジミ
  • 果実・・・蒴果で狭楕円形、長さ1.5~2.5cm、皮目がある。10月頃成熟する。種子は扁平で、縁に翼がある。 
  • アイヌ文化・・・木質がとても固く丈夫で腐りにくいという特質を生かして、家の柱や墓標などに使われた。また家の神の木幣をこの木で作るという地域がある。薪にして火にくべると跳ねて危ないので使わないようにしたという。だからアイヌの人々は、「跳ねる木」あるいは「おしゃべりする神」、「おしゃべりする婦人」とも呼んだ。 
  • 用途・・・公園、街路樹、盆栽、花木などに用いられる。材は耐久性があり、ロクロ細工、柱、器具材などに利用されるほか、薪にも利用される。
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「図説 日本の樹木」(鈴木和夫・福田健二、朝倉書店)