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樹木シリーズ166 ハクサンシャクナゲ

  • 高山植物でお馴染みのハクサンシャクナゲ(白山石楠花、ツツジ科)

     県内の高山に見られるシャクナゲのほとんどは、この種である。常緑の低木。花は白色~淡い紅色を帯び、大形で良く目立つ。花冠の内側に淡い緑色の斑点があるのが特徴。これは訪花昆虫たちに蜜のありかを示す蜜標である。蜜をたくさん出すので多くの昆虫たちが訪れる。葉は革質で厚く、光沢がある。縁がやや内側に巻き込む。高山ではハイマツの中に生える。北海道、本州の中部地方以北、四国石鎚山の亜高山帯~高山帯に分布。
  • 名前の由来・・・白山で発見されたシャクナゲ(石楠花)の意味で、「白山石楠花」と書く。シャクナゲの名は「石楠花」に由来しているが、漢名の石楠はバラ科のオオカナメモチをさしている。それを誤ってつけたという。 
  • 花期・・・6~7月 高さ1~3mの常緑低木 
  • ・・・枝先に車輪状につく。葉の表面は革質で、ツヤツヤと光沢がある。裏面には褐色の腺毛がある。縁は全縁で、しばしば裏面に巻き込む。 
  • ・・・白色又はほのかに紅色を帯び、枝先に10~20個が集まってつく。 
  • 花冠は直径3~4cmの漏斗形で5裂する。花の内側にある緑色の斑点は、蜜標。雄しべは10個、雌しべは1個。 
  • 虫媒花・・・高山植物は生育条件が厳しく、限られた期間に花をつけ受粉して実をつける必要がある。ハクサンシャクナゲは、大きく目立つ花をたくさん咲かせるとともに、たくさんの花蜜とそのありかを示す蜜標まで用意して昆虫たちを誘う。 
  • イチモンジセセリ・・・訪花性が強く、平地の花でも見られるが高山の花でもよく見られる。
  • 色鮮やかなスゲハムシは、蜜が一杯の花の中で婚活真っ最中。
  • 花に群がるハナアブ
  • 樹皮・・・灰褐色で、幹に細かい裂け目が入る。 
  • 厳冬期を乗り切る葉の戦略・・・ハクサンシャクナゲの葉は、晩秋から冬にかけて気温が低下するに従い、筒状に丸まり、露出面積を最小にして厳冬期を迎える。これは葉の表面からの水分の蒸発を防ぎ、乾燥に耐えるためである。やがて暖かい春が訪れると、葉は再び開いて光合成を再開する。
  • 耐陰性が高い・・・シャクナゲは余り大きくならないが、耐陰性が高いので暗い針葉樹の林内でも生きていける。暗い林内には、競争相手のハイマツやダケカンバなどの陽樹があまり侵入してこないというメリットがある。 
  • シャクナゲコース・・・秋田駒ヶ岳の八合目駐車場から左側コース~焼森~横岳~阿弥陀池に至る登山道は、別名「シャクナゲコース」と呼ばれるほど多く自生している。愛媛県の石鎚山では、昔、山伏行者がハクサンシャクナゲを折って持ち帰り、田の畦にさして豊作を祈る習俗があったという。この大輪の花が一斉に咲けば、その豪華さに「豊作豊漁」といった「大、大吉」を連想させるのも頷ける。 
参 考 文 献
  • 「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
  • 「山渓名前図鑑 野草の名前」(高橋勝雄、山と渓谷社)
  • 「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)
  • 「山渓カラー名鑑 日本の高山植物」(山と渓谷社)
  • 「イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか」(渡辺一夫、築地書館)