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樹木シリーズ168 ハルニレ

  • 美しい樹形で北の大地のシンボル・ハルニレ(春楡、ニレ科)

     北海道では、ハルニレの巨木が多く、枝を一杯に広げ堂々とした大樹が見られる。北海道では平地に見られ、北の大地のシンボルのような存在だが、本州では高原に多い。北海道大学寮歌に出てくる「エルム」は、北海道に自生するハルニレの英名。アイヌ神話では、この木は女神となって、人間の子を産み、ハルニレの樹皮でつくった衣服を着ていた。美しい樹形は、ケヤキと一二を争う。春、葉が芽吹く前に黄緑色の小さな花をつける。5~6月には、翼のある果実が熟し、風に飛んでいく。ザラザラした質感の葉は、ニレの仲間共通の特徴。
  • 名前の由来・・・春に花をつけ、皮を剥がすとヌルヌルしていることから「滑れ(ヌレ)」から転じて「ニレ」となったのが名前の由来。奈良時代には紙漉き用粘液は、このニレの内皮から採っていたらしい。だから各地には、ネリ、ネレ、ノリ空木、ノリネレなどの方言が今も残っている。別名のエルムは英名から。
  • 花期・・・4~5月、高さ35m 
  • 新緑
  • 樹皮・・・暗灰褐色で、縦に不規則な裂け目がある。若い枝には毛が多い。
  • ・・・歪んだ左右非対称の形で、表裏とも毛がありザラザラしている。縁には重鋸歯がある。葉先は急に鋭く尖る。 
  • ・・・春、葉の開く前に、帯黄緑色の小さな両性花を7~15個束生する。しかし、雄しべが赤いので、赤い花に見える。
  • 翼果・・・黄緑色で長さは1cmほど。扁平で膜質の広い翼があり、先端は窪む。6月頃熟す。種子は翼果の上部にある。 
  • 北大寮歌「都ぞ弥生」・・・寮歌の二番に「雄々しく聳(そび)ゆる楡(エルム)の梢」とある。この寮歌に出で来る「エルム」は、ハルニレの英名である。北大寮歌に登場するほど、ハルニレは北の大地を象徴する樹木だということだろう。 
  • アイヌ神話・・・まずドロノキが生え、次にハルニレが生えたという。人間の祖先と考えられているアイヌラックルは、雷神とハルニレの姫との間にできた子であり、ハルニレの樹皮の繊維でつくった衣服を着ていた。 
  • ハルニレの新芽を貪るイカル
  • 深緑とメジロ
  • ハルニレとコゲラ
  • 利用・・・外皮をつけたままで皮箕にしたり、網代編みにして鉈鞘に使う。アイヌは、敷物や手提袋、靴下など、編むのに利用する。北海道では、材はヤチダモと同様、家具材など広く利用されている。その他街路樹や公園樹として多数植えられている。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社) 
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「樹木観察ハンドブック 山歩き編」(松倉一夫、JTBパブリッシング)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「図説 日本の樹木」(鈴木和夫・福田健二、朝倉書店)
  • 「日本の樹木」(舘野正樹、ちくま新書)
  • 「植物民俗」(長澤武、法政大学出版局)
  • 「NHK趣味悠々 樹木ウォッチング」(日本放送出版協会)
  • 「日本の原点シリーズ 木の文化4 ケヤキ」(新建新聞社)