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樹木シリーズ178 エノキ

  • 国蝶・オオムラサキの食草・エノキ(榎、ニレ科)

     山地に生えるエノキは、寒さに余り強くなく、北限は青森県。エノキの葉は、国蝶のオオムラサキ、ゴマダラチョウ、外来種・アカボシゴマダラなどの食草として有名なほか、タマムシやナナフシも好物。赤く熟した実は、多くの鳥たちが好んで食べる。昆虫から野鳥まで、多くの生き物たちを育む樹木の一つ。4~5月、淡い黄褐色の小さな雄花と両性花を開く。枝を広げて豊かな緑陰をつくるので、昔は一里塚に植えられた。北海道から九州には、近縁種で実が黒く熟すエゾエノキが分布する。 
  • 名前の由来・・・暑い夏、この大きな木は低い位置で枝分かれし、緑陰を作るので「榎(エノキ)」という漢字が当てられたと言われている。また枝が多いことから「枝の木」という説や、熟した果実を小鳥がよく食べるのことから、「餌(エ)の木」、材が農器具の柄に利用されたことから「柄の木」、路傍の神である「道祖神(サエノカミ)の木」から転訛、生の木に火をつけても良く燃えることから「燃えの木」が転訛など、たくさんの説がある。 
  • 高さ・・・25m、直径1.5m。 
  • ・・・互生し、表面は光沢がある。鋸歯は葉先から縁の途中までしかない。葉脈は基部から3本に分かれるのが特徴。 
  • 食草・・・国蝶のオオムラサキ(上の写真)やゴマダラチョウ、テングチョウ(下の写真)、外来種・アカボシゴマダラなどの幼虫の食草。 
  • ゴマダラチョウ、テングチョウ
  • 黄葉・・・秋になると鮮やかな黄色に色づく落葉樹。
  • 果実・・・10月頃、赤褐色に熟す。この果実は、甘みがあって美味しい。
  • 果実は野鳥が好む・・・キジバトやオオルリ、キビタキ、ツグミ、アオバト、シロハラなどが好んで食べる。食べ残しの硬い実はイカルやシメなどが食べる。樹上に実がなくなると、落ち葉をひっくり返して落下した実を食べる。 
  • 鳥に散布された種子は休眠でチャンスを待つ・・・エノキは陽樹で、暗い林床では稚樹が育ちにくい。鳥に運んでもらった種子は、土の中で発芽せず何年も休眠する能力がある。高木が倒れて頭上が明るくなると、目を覚まし、発芽する。 
  • 風散布・・・鳥が食べ残した果実は、風が吹くと黄葉の葉とともに小枝ごと落下する。葉を羽代わりにして、遠くへ飛ばす。鳥と風の二段構えの種子散布を行っている。 
  • 樹皮・・・厚く、灰黒褐色で斑点がある。割れ目はないが、ザラザラする。
  • 日本一の大エノキ・・・徳島県つるぎ町「赤羽根大師のエノキ」は、国指定の日本一のエノキ。樹齢800年、幹周り8.7m、樹高18m。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「樹木 見分けのポイント図鑑」(講談社)
  • 「樹木の個性と生き残り戦略」(渡辺一夫、築地書館)
  • 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
  • 「フィールドガイド 日本のチョウ」(誠文堂新光社)