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樹木シリーズ180 ノイバラ

  • 日本の野生バラ・ノイバラ(野薔薇、バラ科)

     川べりや道端、丘陵の日当たりの良い場所に繁みをつくる、最も普通に見られる野生のバラ。初夏、清楚で香り高い白花をたくさん咲かせる。秋には赤い実が美しい。ただし、旺盛な生命力をもち、茎や枝にトゲがあり、取り除くとなれば厄介な植物でもある。実は「営実(えいじつ)」といい、利尿や下痢の生薬として使われる。ノイバラは、種々のバラと交配され、多花性で美しい花を咲かせる品種が作り出されている。また、バラの栽培品種の接ぎ木の台木としても使われる。 
  • 名前の由来・・・野に生えるバラの意味で、「野薔薇」と書く。イバラは、トゲのある低木の総称。(写真:ノイバラの新緑とウグイス) 
  • 花期・・・5~6月、高さ約2m 
  • 枝にかぎ状の鋭いトゲが多い・・・このトゲは、動物の摂食を防ぐだけでなく、他の物に寄りかかり攀じ登る武器として機能する。 
  • ・・・卵形の小葉が3~4対つく羽状複葉で、葉軸の根元にクシ状に裂けた托葉があるのが特徴。 
  • ・・・枝先の円錐花序に芳香のある白い花が多数咲く。花弁は5個。雄しべは多数。花柱は無毛で壺状の花床から突き出し合着する。 
  • 果実・・・秋、球形の果実は赤く熟す。冬に落葉しても、果実はそのまま残って越冬するのでよく目立つ。
  • 生薬名「エイジツ(営実)」・・・夏の終わりから秋にかけて、熟す前の青みがかった果実を採集し、天日で乾燥する。利尿や下痢、脚気、腎臓病などに利用される。ただし作用が激しいので、民間での利用は避けるべきだとされている。 
  • 熟した赤い実は美しく、生け花やリースなどに使われる。 
  • 世界の栽培バラの育種に貢献・・・バラの祖先は、8種程度の野生バラが交雑することによって誕生した。「ノイバラ」はその野生バラのうちの一つで、1860年代に日本からヨーロッパに渡った「ノイバラ」が栽培バラの育種に導入され、一枝に複数の花を付ける「房咲き」の性質や、病気に対する耐性をもたらしたとされている。 
  • アイス・バーグ・・・ノイバラの導入によって、世界中で愛される銘花「アイス・バーグ」などの「フロリバンダ」と呼ぶ品種群が誕生し、さらに「グランディフロラ」の品種群も生まれた。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「葉・実・樹皮で確実にわかる樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「秋田の山野草Ⅱ 300選」(秋田花の会) 
  • 「読む植物図鑑Vol.4」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)