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樹木シリーズ190 アカメガシワ

  • 代表的なパイオニアツリー・アカメガシワ(赤芽槲、トウダイグサ科)

     秋田県以南の温暖な山野に生育する落葉高木。伐採跡地や空き地にいち早く生えるパイオニアツリー(先駆性樹木)の代表樹木で、新芽が赤いのが特徴。葉は、キリに似て、三裂する葉と裂けない葉が混じる。葉の基部に1対の蜜腺があり、よくアリが蜜をなめに来る。7月頃、枝先に円錐花序を出し、花弁のない小さな花を多数つける。雌雄異株。古くから民間薬として皮膚病や神経痛などに用いられた。
  • 名前の由来・・・新芽が赤く、カシワと同じく葉を食べ物の器にして神前に供えたり、団子を包んで蒸したりしたことから。別名ゴサイバ(五菜葉)、サイモリバ(菜盛葉)、メシモリナ(飯盛菜)、ミソモリバ(味噌盛葉)などとも呼ばれている。 
  • アカメガシワの赤い新芽とモズ
  • 花期・・・7月頃、高さ5~10m 
  • 新芽は赤く美しい・・・若葉の表面は、赤い星状毛が密生していて赤いが、成長するにつれて赤色が薄くなる。赤い葉を指でこすると、毛が剥落して緑色になる。 
  • ・・・若木の葉は、浅く3裂するが、生長してくると葉は裂けなくなる。裂けない不分裂葉は、イイギリに似ているが、本種は鋸歯がないので見分けられる。葉柄は長く赤い。基部には二つの蜜腺があり、アリがよく集まる。 
  • 樹皮・・・灰褐色で浅い割れ目が縦に細かく入る。 
  • ・・・若枝の先に円錐花序をつけ、花弁のない黄緑色の小さな花を密生させる。雌雄異株。
  • 雄花・・・淡い黄色でガクは3~4裂し、多数の雄しべが伸びて目立つ。
  • 雌花・・・ガクは2~3裂し、3個の花柱は紅色で反り返る。
  • ・・・秋に熟し、果皮が裂けて黒く光る種子がむき出しになる。種子の表面は油分が多く、鳥が食べて種子を運ぶ。 
  • 実と野鳥・・・実の中から黒い種子が出てくると、メジロやキツツキ類が特に好むほか、メジロやサメヒタキ、エゾヒタキ、ハシブトガラスなど多くの鳥が採食する。 
  • パイオニアツリー・・・森の中に落下した種子は、長期間休眠するが、伐採や山林火災など森林が破壊されると急速に芽生えることから、伐採跡地や崩壊地で多く見られる。また、林道ののり面や崩壊地では、鳥によって散布された種子がいち早く育つことから、バイオリアツリーの代表と言われている。 
  • 薬用・・・整腸薬として樹皮のエキス製剤が市販されている。古くから民間薬として、葉や樹皮を夏に採取し、「切らずに治す腫れ物薬」として汗疹(あせも)や皮膚病、神経痛に用いられた。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「続・読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
  • 「野鳥と木の実と庭づくり」(叶内拓哉、文一総合出版)