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樹木シリーズ192 ミツマタ

  • 和紙や紙幣の原料となる丈夫な繊維のミツマタ(三叉、ジンチョウゲ科)
     コウゾやガンピと並ぶ和紙原料として有名な落葉低木。中国原産で、強靭な樹皮から繊維をとるために各地で栽培された。明治以降は、紙幣の原料として利用されている。四国や中国地方では、山中に野生化している。シカが増加した地域では、シカが食べないミツマタが急増しているという。早春、葉が出る前に咲く花が美しいことから、庭園や庭木、公園樹として植えられている。花が赤い園芸品種もある。
  • 名前の由来・・・ほぼ例外なく枝が3つずつ分かれて伸びることから。 
  • 花期・・・3~4月、高さ1~2m 
  • 樹皮・・・黄褐色で、枝は3つに分かれて伸びる。その結果、ドウダンツツジと似た丸い樹形に育つ。 
  • ・・・早春、葉に先立って黄色の小さな花が多数集まって、まりのような球形になって咲き乱れる。その花は可憐でよく香る。
  • 花には花弁がなく、花に見えるのはガク。ガク筒の先が4つに開き、内側は黄色、外側は白い毛が密生する。
  • ・・・互生し、長さ8~15cmの細長い楕円形で薄く、裏面は粉白色。
  • 花とビロードツリアブ・・・早春に咲き、甘い香りを放つことから、春一番にやってくるハナアブの仲間・ビロードツリアブたちが集まってくる。
  • 紙幣の原料・・・樹皮の繊維が強く、細い枝でもなかなか折れない。この強靭な樹皮が製紙原料となり、紙幣や証書、株券、地図用紙などに使われる。
  • 歴史・・・コウゾ、ガンピによる製紙は奈良時代からあった。ミツマタの記録は、慶長年間(1596~1615)が最初で、天明年間(1781~1789)に静岡で駿河半紙を作ったのが最初と言われている。その後、暖地で大量生産されるようになった。特に紙に弾力と光沢があって美しいことから、紙幣の原料に利用されるようになった。 
  • 野生化したミツマタ
  • 主産地・・・高知を筆頭に四国各県、岡山、島根県など。それが今では山中に野生化している。 
  • 観賞用・アカバナミツマタ・・・観賞用に作られた品種で、花の内側が赤い。
  • 作家大原冨枝、小学1年の思い出・・・「藤子さんという友達の家は谷川の岸にあって、冬は庭いっぱいにミツマタの仕事場になる。大人の背よりも高い桶のような蒸器でミツマタを蒸す。大釜の火があかあかと燃えて温かい。蒸しあがると、はね釣べのように蒸器は吊り上げられ、もうもうと湯煙の中にミツマタが現れる。女たちが並んで待っていて手早く皮が剥がれてゆく」(「週刊朝日」1984年4月20日号)
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
  • 「樹木 見分けのポイント図鑑」(講談社)
  • 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)