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樹木シリーズ203 ヒサカキ

  • 都市ガスのような臭いを放つヒサカキ(姫榊、ツバキ科)
     春先、やや黄色を帯びた白い花が、枝にびっしり並んで咲く。この花には、都市ガスに似た強い臭気を放つ。この臭いをガス漏れと勘違いし通報した人がいるというから驚きだ。東日本には、神事に使われるサカキが少ないため、その代用として使われている。海岸性の近縁種ハマヒサカキの花は、初冬に咲き、やはりガス臭がする。分布は青森県を除く本州以南。 
  • 名前の由来・・・サカキよりも矮小性の常緑樹であることから、姫をつけて「姫榊(ヒメサカキ)」となり、それが転訛したしたとの説があるほか、若葉が赤いので「火サカキ」、サカキに似るも違うので「非サカキ」などの説がある。 
  • 花期・・・3~4月、高さ4~8m
  • 樹形・・・低い位置で枝分かれして株立ちし、直線的に枝を伸ばす。
  • ・・・中央より葉先側で幅が最大になる倒卵形で、少し飛び出した葉先がわずかにくぼむ。鋸歯が目立つが鈍い。混同されるサカキは、葉がより大きく、縁に全く鋸歯がない。 
  • ヒサカキの新芽
  • ・・・雌雄異株。雄花は、白色から紫色を帯び、つぼ形で先がすぼまり、中に雄しべが10~15個。雌花はやや先が広がり、一個の雌しべがよく見える。両性花もある。 
  • ガス臭・・・花の臭いがより強く、ガス臭に似ていることから、「ガス漏れ」の通報がかなりあり、ガス会社では「ガス花」と呼んでいるらしい。ただし臭いの感知は、個人差が大きく、福神漬けの臭いだとか、良い香りだという人もいる。いずれにしてもこの強烈な臭いは、ハエなどの虫を呼ぶためである。 
  • 果実・・・球形で、10~12月に黒紫色に熟す。
  • ヒサカキの実と野鳥・・・この実は、メジロ、マヒワ、カワラヒワ、カシラダカ、ウソ、シロハラ、ツグミなど鳥たちが好んで食べる。 
  • 近縁種・ハマヒサカキ・・・海岸に生える常緑低木で、街路樹の下に植えてあることも多い。葉先が丸い。花は初冬に咲き、同じくガス臭がする。
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
  • 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「野鳥と木の実と庭づくり」(叶内拓哉、文一総合出版)