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樹木シリーズ207 ヒトツバタゴ(ナンジャモンジャ)

  • 別名ナンジャモンジャで知られるヒトツバタゴ(一葉タゴ、モクセイ科)
     雪のように白い花が美しい落葉高木。昔から珍しい樹木で、見た人は皆、名前が分からず、ナンジャモンジャと呼ばれた。故にヒトツバタゴより別名ナンジャモンジャで広く知られている。ただし、日本植物学の父・牧野富太郎によれば、本種はニセのナンジャモンジャで、本物のナンジャモンジャはクスノキだという(後述する)。自然分布は、愛知県、岐阜県、対馬にだけに自生する珍木で、自生地は国の天然記念物に指定されている。 
  • 名前の由来・・・タゴとは、花が似ているトネリコのこと。江戸時代後期の本草学者・水谷豊文が1825年にトネリコに似たこの木を発見し、羽状複葉のトネリコに対して、これは一つの葉であったことから「一葉タゴ(ヒトツバタコ)」と命名した。 
  • 牧野富太郎「ナンジャモンジャの木」
     ナンジャモンジャという名を聞くと、得体の知れぬもののように見えるが、決してそんなもんじゃない。ナンジャモンジャの木と呼ばれるものには、正真正銘のナンジャモンジャもあれば、また喰わせもののニセのナンジャモンジャもある。まず第一に、ニセのナンジャモンジャは、東京青山の練兵場にあったもので、本名をヒトツバタゴという。この木は、天然記念物として保護されたが、今では枯れてしまった・・・中国では、この木を炭栗樹と称する。白紙を細かくきったような白い花が枝に満ちて咲く・・・
     このナンジャモンジャの正体は元来何であるかというと、それは疑いもなくクスノキである(牧野富太郎が訪れた千葉県・神崎神社には、クスノキの巨木があり、通称「ナンジャモンジャ」と呼ばれて親しまれている)
  • 花期・・・5月 高さ25~30m 
  • 自生地は局地的・・・天然分布は、愛知県と岐阜県の一部、及び長崎県対馬のみ。隔離分布の典型と言われる珍しい樹木。以前は滅多に見られない木であったが、今は苗木も手に入りやすくなった。
  • ・・・対生し、長さ4~10cmの長楕円形。 
  • ・・・本年枝の先の円錐花序に白い花を多数つける。満開の時は、枝に雪が積もったように見える。花冠は4深裂し、裂片は線形。 
  • 果実・・・楕円形で、秋、黒紫色に熟す。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
  • 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「゛読む゛植物図鑑Vol4」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会) 
  • 「牧野富太郎と、山」(ヤマケイ文庫)