樹木シリーズ222 シラカシ、アラカシ
INDEX シラカシ、アラカシ |
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- 関東に多いシラカシ(白樫、ブナ科)
シラカシは関東地方に多く、西日本に多いアラカシと並んで照葉樹林の代表種。タブノキやスダジイは海岸に近い場所を好むのに対し、カシ類はやや内陸に多く、前者より寒さに強い。関東では、人の手を入れなければ、本種が主体の照葉樹林に変わっていくと言われている。関東地方では、ケヤキと並んで屋敷林に大木が多い。材は白く、建材や道具類の柄などに利用される。花期は4~5月、高さ20m。福島・新潟以西に分布。
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- 名前の由来・・・材がアカガシに比べて白いことが和名の由来。
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- 葉・・・やや革質で光沢があり、細長い。縁に浅い鋸歯がある。裏面は緑白色。
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- 樹形・・・幹がまっすぐ伸び、スラッとした樹形になる。
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- 果実・・・ドングリとしては小粒。アラカシに似ているが、中央で幅が最大に膨らみ、突起の周囲にリングがある。
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- シラカシの逆襲・・・関東以西では、人の手によって排除され、コナラやクヌギの雑木林になっていた。その雑木林に人の手が加わらなくなったことから、シラカシの若木が侵入し、増えているという。
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- 目を覚ました野生・・・シラカシは強い萌芽力を持っているから、コナラ林に生えてきたシラカシの稚樹を伐っても、萌芽によってしぶとく再生してくる。さらに稚樹の生長が速い。またカシ類の中では最も強い耐陰性をもっていることから、かなり暗い森の中でも育つ。コナラの稚樹は耐陰性が弱く、暗い森の中では育たない。手を加えないと、日陰に強いシラカシが日陰に弱いコナラにとって代わる。そのプロセスを植生の遷移という。その最終段階が「極相」という。関東では、人の手が加わらなくなると、耐陰性の強いシラカシの森が主体の極相林に変わっていくと言われている。
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- 西日本に多いアラカシ(赤樫、ブナ科)
宮城・新潟以西の山地に自生するが、急傾斜地に多く、不安定な斜面で、枝葉を斜めに張り出すことが多い。屋敷や神社などにも植えられている。ドングリは、毎年のように大量につけることから、縄文人も食料としていた。
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- 名前の由来・・・葉が密に茂り、雑然とした印象を与える。その枝葉が粗く、堅いことから「粗樫(あらかし)」の名がついた。
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- 葉・・・厚く光沢があり、葉の先は尻尾状に突き出す。葉の先端側の半分だけに粗い鋸歯がある。
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- ドングリ・・・殻斗は輪状で、突起に近い方で幅が最大になる。実は食べられる。
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- 生命力の強さ・・・縄文時代中期の坂の下遺跡(佐賀県)から出土したアラカシのドングリは、4千年の眠りから目を覚まし、芽を出して、現在もすくすく育っているという。ドングリは一般に1~2年以内に発芽力を失うといわれているのに対し、4千年間発芽力を失わずに眠っていたという、その強い生命力に驚かされる。
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参 考 文 献 |
- 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
- 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
- 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
- 「樹木の個性と生き残り戦略」(渡辺一夫、築地書館)
- 「樹木 見分けのポイント図鑑」(講談社)
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