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樹木シリーズ244 バラ(薔薇)

  • 花の女王・バラ(薔薇、バラ科)
     バラとは、バラ科バラ属の落葉または常緑の低木、ツル性の木の総称である。それらから交配、育成された園芸品種は数知れない。バラ栽培の歴史はヨーロッパで始まったことから、通常西洋バラと呼ばれている。ただし近年、東洋のバラも盛んに輸出されている。日本で栽培が盛んになるのは明治以降のこと。花言葉は「愛」・・・1987年、加藤登紀子さんが発表した「百万本のバラ」は、哀愁あふれるメロディーと素晴らしい歌詞で大ヒットした。 
  • 名前の由来・・・トゲのある低木の総称「イバラ(茨・荊・棘)」が転訛し、バラ。 
  • バラ前線・・・バラは、桜前線と同じように、南九州では5月の連休頃から咲き始め、関東近郊では5月中旬、東北地方では6月、北海道では7月中旬と、南から北上していく。 
  • バラは虫媒花・・・ミツバチなどのハナバチの仲間が受粉する。ただし八重咲きのバラは、雄しべが花弁に変化したものなので、花粉がないか、あっても少ないので受粉が困難。雄しべが全くない八重咲きのバラは、当然のことながら実がつかない。
  • 100万本のバラ(加藤登紀子)
     ラトビアで悲しい子守歌として生まれ、ロシア語のラブソングに翻訳された後、ソ連で大ヒットした「百万本のバラ」。その日本語版は、加藤登紀子の訳詞および歌唱にて大ヒットした。
     小さな家とキャンパス 他には何もない/貧しい絵かきが 女優に恋をした/大好きなあの人に バラの花をあげたい/ある日街中の バラを買いました/百万本のバラの花を/あなたに あなたに あなたにあげる/窓から 窓から 見える広場を/真っ赤なバラで 埋め尽くして 
  • 花言葉・・・一般に「愛」と「美」。色ごとに花言葉は違うが、赤いバラの花言葉は、「あなたを愛してます」「愛情」「美」「情熱」「熱烈な恋」。 
  • プロポーズ用のバラ・・・「108=永遠に(トワニ)」と読めるため、108本の赤いバラは、「結婚してください」という意味があるという。 
  • バラ栽培の歴史・・・起源は古代文明まで遡る。バビロニア王朝の出土品やエジプト古王国時代の王の墓から発掘された装飾品にもバラの花の図案がある。クレオパトラの頃には、大量栽培するようになり、ローマの英雄アントニウス歓迎の宴で床にバラを敷き詰めた話は有名である。 
  • バラ戦争・・・イギリスで、1455年~1485年まで続いた王位継承をめぐる内乱。争ったランカスター家の家紋が「紅バラ」、ヨーク家の家紋が「白バラ」であったことから、「バラ戦争」と呼ばれた。 
  • バラの原種・・・世界には約250種の原種を含め1万9千種以上のバラがあるとされている。その掛け合わせを辿って行くと、アジアから日本にかけての自生種8種に行きつくという。日本原産の原種は、ノイバラ、テリハノイバラ、ハマナスの3種。 
  • ナニワイバラ・・・昔から庭に栽培さけるほか、和歌山県南部や四国、九州では野生化しているという。枝にカギ形の太いトゲがある。中国・台湾原産。
  • コウシンバラ・・・近代バラ、現代バラの原種の一つで、古くから庭に栽培されている。中国原産。
  • モッコウバラ・・・中国原産で、江戸時代から庭に栽培されている。
  • イザヨイバラ・・・中国原産で、サンショウバラによく似ている。花は八重だが、欠けた部分がある。
  • セイヨウバラ(写真:スーパースター/チャールストン)
  • ファンが広がったガーデニングブーム・・・2000年前後に始まったガーデニングブームは、バラと他の植物と組み合わせた庭づくり、暮らしの中で楽しむバラなど、従来のバラ園芸にはなかった考え方が、女性を中心にファン層が広がった。長く伸びた枝にたくさん花が咲くつるバラも、庭のアーチや壁を彩るものとして人気を博した。 
  • お洒落なガーデニングブームで人気の花・・・バラ、クレマチス、クリスマスローズの3種は、ともに品種数が多く、ガーデニングブームに火をつけた女性向け園芸雑誌などに取り上げられ人気になったという。(Pixabayより写真) 
  • ・・・定番の色。鮮やかな赤バラは、庭の主役になるだけでなく、鉢でも抜群の存在感がある。 
  • ・・・白は清楚な感じが魅力。シンプルな分、花弁の形や花径で、印象がガラリと変わる面白さがある。 
  • ・・・快活な印象を与える。さわやかなレモンイエローなど、多様な色味がある。 
  • ピンク・・・愛らしい印象。庭や玄関先を華やかに、明るく見せてくれる。 
  • 重咲き・・・シンプルな美しさが魅力。可憐さの中に力強さも感じられる。
  • 八重咲き・・・ゴージャスなルックス。何層にも重なる花弁が開く様は神秘的。 
  • 万重咲き・・・八重よりさらに花弁が多い。比較的花もちの良い品種が多い。
  • その他個性的なバラ
  • 日本のバラの育種家・鈴木省三(天声人語1982年6月5日「バラづくり」)
     ローマ市のバラ新品種・国際コンクールで育種家の鈴木省三さんが「金賞」をとった。京成バラ園芸研究所長の鈴木さんは、数々の新品種を世に送っているバラづくりの大家だ・・・受賞作の「乾杯」は・・・直径15センチもある大輪の花である。気品のある、濃い緋色の花びらが四十枚か五十枚か、香りを包み隠すように重なり合っている。
     優れた品種を生むには、十年近い歳月が必要だという。母親になる木を見つけ、交雑し、種をつくる。八万もの種をまいて、その中からわずか数品種を選び出す。「結局、大切なのは、しつこさです」
  • バラの香り(天声人語1986年11月25日)
     点訳絵本の仕事をしている岩田さんは全盲の人だ。小さい頃からバラが好きだった。でも、このごろの切り花用のバラは香りが薄くなった。花作りが、見ばえのする色と形を追い、香りを切り捨てたためだろうか・・・
     バラの育種家、鈴木省三さんが苗木三本を(岩田さんに)贈った。「芳純」という名のバラだ。・・・育種家の大家が気品のある香りを求めて作っただけに、すばらしい香りだった。あまあいけれども、きつくはなく、やわらかく人の心を包む。何よりも、子どものころのなつかしいバラの香りがあった。「これやったんやあ」と岩田さんは叫んだ。
  • 秋田のバラ園・・・日本国花苑 バラ園(井川町)、秋田県立農業科学館 バラ園(大仙市)、石田ローズガーデン(大館市)
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「NHK趣味の園芸」2018年5月号
  • 「天声人語 自然編」(辰濃和男、朝日新聞社)
  • 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)