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樹木シリーズ35 カリン

  • 花も実も楽しめるカリン(花梨、バラ科)

     中国原産だが、江戸時代には渡来したとされている。冷涼な気候を好み、東北や甲信越地方で多く栽培され、庭木として植えられている。特徴は、樹皮が独特の斑模様をしていること、ピンク色の花が美しいこと、咳止め薬やのど飴に利用される大きな果実がたくさん実ることである。花も実を楽しめるのに加えて、お金を「借りん」という縁起物として庭に植えられる。 
  • 名前の由来・・・木目がタイ・ミャンマー原産のカリンに似ていることに由来する。漢字の「花梨」は当て字。カリンはマルメロに似ているので、英語では「Chinese quince(中国のマルメロ)」と呼ばれている。長野県諏訪地方特産の「カリン」は、実は「マルメロ」。 
  • 花期・・・4~5月、高さ6~10m 
  • 花のツボミ
  • ・・・ピンク色の花は1個ずつ咲き、全体的にまばらに咲くので、遠くからだと余り目立たない。近づいて観察すると、一つ一つの花が大きく色鮮やかで美しい。花木としても十分楽しめる。 
  • 樹皮・・・鱗片状に剥がれ、緑、橙、褐色の斑模様をしている。その独特の斑模様は、一度見たら忘れられないほど印象的である。 
  • ・・・長さ4~8cmの倒卵形。光沢があり、質感は堅い。縁には細かいギザギザの鋸歯がある。 
  • 果実・・・パパイアと似たような縦長の形で、大きさは10~15cm、重さは350~500gほどと大きい。果実は黄色く熟し、一見美味しそうに見えるが、堅くて生では食べられない。果肉は、薄い黄色~橙黄色で、中心部に5本の空洞があり、その中に無数の種が入っている。 
  • 収穫・保存・・・10月~11月に収穫。新聞紙にくるんで冷暗所に保管。全体にむらなく黄色に染まり、香りがしっかりとたってくるまで追熟させる。 
  • 効能・・・咳止め、痰(たん)、ぜんそく、インフルエンザ予防に効果があるとされている。不溶性の植物繊維も多く含む。果実を輪切りにしたものを乾燥保存し、これを煎じて喉の薬として用いる。 
  • 香りを楽しむ・・・収穫した果実を部屋に置いておくだけで、部屋中が香りで満たされ、しばらくは良い香りを楽しめる。
  • 利用・・・一般的に花梨酒やジャム、砂糖漬け、蜂蜜漬けに利用。また、カリンの果実に含まれる成分は咳や痰など喉の炎症に効くとされ、のど飴に配合されている。 
  • 縁起を担ぎ庭木に・・・お金を「借りん」という縁起を担ぎ庭の表にカリンを植え、裏にカシノキを植えると商売繁盛に良いとも言われている。 
  • 全国で栽培・・・トップ3は、長野県、山形県、香川県。長野県は、全国の約1/3を生産している。 
  • 花言葉・・・豊麗、優雅 
  • ピンク色の花に誘われてやってきたヒヨドリ
  • セミの抜け殻・・・樹木見本園では、カリンの幹にセミの抜け殻がたくさん見られる。樹皮がザラザラしていて滑りにくいからだろうか。
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)