本文へスキップ

樹木シリーズ33 ユリノキ

  • 花の形がユリやチューリップのようなユリノキ(百合木、モクレン科)

     明治時代に導入された北米原産の落葉高木で、公園樹や庭園樹、街路樹としてよく植えられている。幅広の葉は、半纏(はんてん)に似ているので識別が容易。さらに、チューリップに似た大型の花を咲かせるので、花が咲いている時期は遠くからでも識別が可能。秋には葉が黄色に色づき、黄葉も美しい。 
  • 名前の由来・・・和名は、花がユリの花を思わせることから、ユリノキの名がついた。また、チューリップによく似ていることから、英名は「チューリップ・ツリー」と呼ばれている。
  • 独特の葉の形からついた別名その2・・・半纏(はんてん)に似ていることから、和名の別名「ハンテンボク」とも呼ばれている。
  • 独特の葉の形からついた別名その3・・・かつては、グンパイボク(軍配木)、ヤッコダコノキ(奴凧の木)、クラガタノキ(馬の鞍の連想)などとも呼ばれていた。それだけ葉の形がユニークだから、様々な別名がついたのであろう。
  • 花期・・・5~6月、高さ20m以上、原産地では60mにもなる
  • 特徴的な花・・・葉が展開した後、樹冠上部にチューリップに似た大型の花を上向きに咲かせる。淡い黄緑色の花の下にオレンジ色の斑紋がある。下から見上げてもよく見えないので、ちょっと離れた位置から眺めると、その独特な形をした花がよく見える。花の色は黄緑色を帯び、基部に橙赤色の斑紋がある。 
  • 開花した花の左はツボミ
  • 花がつくのは・・・植えてから8~10年ほど経つと咲き始め、樹齢20年頃から万余の花を咲かせるようになる。 
  • ユリノキ蜜・・・大形の花は、たくさんの蜜を出す。今では養蜂家の人たちに「黄金の木」と賞賛され、ユリノキ蜜「黄金蜂蜜」などの名称で商品化されている。 
  • 特徴的な葉・・・一般的に木の葉の先端は尖っているが、ハサミで切ったように凹んでいるのが大きな特徴。大型で、基部で3裂、先端で2裂する独特の形をしている。その形が半袖シャツや半纏、奴凧、軍配、馬の鞍によく似ていることから、その名を冠した別名が多い。 
  • 主脈の先端は、必ずくぼむのも特徴。 
  • 木の下から逆光で撮る
  • 樹皮・・・若いうちは青褐色でスベスベしているが、樹齢20年くらいすると、黒褐色に変わり、風紋のように波打つ模様が現れる。樹皮が傷ついても縫合性が強く、再生する力をもっているという。 
  • 果実・・・ローソクの炎のような集合果を上向きにつける。上向きにつけるだけあって、果軸は太くしっかりしている。集合果が開き翼果が現れると、カエデの種子のようにクルクルと回転し、風によって散布される。 
  • 不稔種子が多い・・・一本の木は、毎年、何百万粒もの種子をつけるが、驚くほど不稔種子が多いという。これは、自花不和合性が強く、自家受粉する力が極端に弱いことを示している。そもそもユリノキは、全盛期が終わり、既に衰退期に入っているらしく、人間が力を貸してやる必要があると言われている。 
  • 大木になる・・・北米の原産地では樹高が60mにも達し、日本でも30m以上の大木になる。原産地では沢沿いを好み、アメリカスズカケノキなどと混生する。 
  • 日本最古のユリノキ・・・新宿御苑の中心には、「イギリス式庭園」と呼ばれる広い広場がある。苑内には、ユリノキ、プラタナス、ヒマラヤシーダー、アメリカキササゲなどの巨木が多い。中でも高さ30mを超えるユリノキは、最も高く公園の主のような存在感がある。このユリノキは、明治6年頃に輸入された日本最古のユリノキである。
  • 東京国立博物館のシンボルはユリノキ・・・上野の東京国立博物館の正面玄関前には、高さ30mを超えるユリノキの巨木がある。この巨木は、新宿御苑のユリノキの二世で、昭和13年、博物館完成時に植えられた。以来、博物館の歴史を見守り続けてきた。だから東京国立博物館のシンボル的な樹木として、別名「ユリノキの博物館」「ゆりの館」などと呼ばれている。今では、博物館公式キャラクター「ユリノキちゃん」にも採用されるほど人気が高い。
  • 黄葉も美しい・・・葉が大きく木のスケールも大きいので、一斉に黄色に色づくと美しく、見応え充分である。花も葉も黄葉も美しいことから、街路樹、庭木、公園樹として人気が高い。 
  • 花言葉・・・田園の幸福 
参 考 文 献 
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
  • 「図説 日本の樹木」(鈴木和夫・福田健二、朝倉書店)
  • 「ユリノキという木」(岩手緑化研究会) 
  • 「樹木の個性と日本の歴史 公園・神社の樹木」(渡辺一夫、築地書館)