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樹木シリーズ39 ハクウンボク

  • 真っ白な花をたくさんつけるハクウンボク(白雲木、エゴノキ科)

     北海道から九州までの山地に生える高さ10mほどの落葉高木。エゴノキと同属で、花は長い穂になって垂れ下がる。ただし花期は、エゴノキより遅く、梅雨の頃に満開になる。その花の様子を白雲に見立てたのが和名の由来。庭や公園、寺院などに植えられる。
  • 名前の由来・・・白い花が連なって咲くようすを、「白雲」に見立て、「白雲木」と書く。また、「大きい葉のチシャ(エゴノキ)」という意味で、別名「オオバヂシャ」と呼ばれている。 
  • 花期・・・5~6月、高さ6~15m
  • 花のツボミ
  • ハクウンボクとエゴノキの花の見分け方・・・花そのものは似ているが、ハクウンボク(上左)は花柄が短く、長い房状になって花がつく。エゴノキ(上右)は、花柄が長い。 
  • ・・・枝先に白い花が長さ15cmほどの穂になって多数下垂れする。花冠は5深裂する。雄しべは10個、雌しべは1個。 
  • ・・・団扇のような丸い形の大きな葉は、直径20cmにもなり、良く目立つ。縁には、不規則な鋸歯があり、先端が突き出るのが特徴。 
  • 数年に一度大量開花・・・普段は目立たない木だが、開花期には真っ白な花を枝先にたくさんつけるので、よく目立つ。北海道苫小牧の調査では、ほぼ5年に1度しか大量に花をつけることができないという。大量に開花した年には、ハクウンボクの花に向かってマルハナバチが押しかけてくる。ハクウンボクは、樹木個体が大量に花をつけ、さらに個体間で同調して開花する年を合わせることによって花粉媒介者を効果的に引きつけ、受粉を促進させていると考えられている。 
  • 大量開花の年は、光合成による資源のほとんどを花と実の生産に使ってしまう。その後数年間は、花の少ない年が続き、光条件の良くない亜高木に位置しながら、徐々に資源を回復させる。 
  • 葉柄内芽・・・来年の芽(冬芽)が、葉柄の中に納まっている。これを葉柄内芽と言う。葉柄内芽の樹木は、キハダ、スズカケノキ、ヌルデ、バイカウツギ、ハクウンボクなどがある。
  • アイヌ人は、乾燥葉をタバコの代用にしたという。 
  • 散った花も美しい・・・花が散ると、林床を白い絨毯のように覆うので、ハクウンボクと分かる。 
  • ・・・ブドウのように房状に連なる球形の実は、9月頃に熟す。 
  • 種子・・・球形の実が熟して割れると、茶色の楕円形の種子が出てくる。エゴノキの実より一回り大きく、こちらもヤマガラの大好物で、冬に備えて貯食する。
  • ロウソク・・・和ロウソクは、一般的にイグサと和紙からなる芯に、ハゼノキやハクウンボクの種子からとれる木ロウを塗り重ねた植物性である。ハクウンボクの種子の中の種核には18%の脂肪油を含む。 
  • ヤマガラが落下した種子を口にくわえて飛び立ち、あちこちに貯食する。(写真:クリプトン前庭のハクウンボクの実を貯食するヤマガラ、2017年10月24日)
  • クリプトンと林業研究研修センターの境界斜面にハクウンボクの種子を貯食しているところ。
  • 樹皮・・・灰白色で、はじめは滑らかだが、古くなると縦に浅く裂け目が入る。若枝の表皮は縦にはがれやすい。 
  • 花言葉・・・壮大 
  • 清楚な白い花が好まれて、茶花としても利用されている。
  • 用途・・・材は色が白く、緻密で亀裂を生じないのに加えて、加工が容易。将棋の駒や器具材、彫刻材などに利用。また、花が美しいので、公園や庭園などに植栽される。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「樹木 見分けのポイント図鑑」(講談社)
  • 「森の花を楽しむ101のヒント」(日本森林技術協会編、東京書籍)