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樹木シリーズ42 カンボク、テマリカンボク

INDEX カンボク、テマリカンボク
  • 白い装飾花と赤い実が美しいカンボク(肝木、スイカズラ科)

     山地の湿った場所に生え、北海道から九州まで分布。白い装飾花は、オオカメノキやヤブデマリに似ているが、本種は葉の先が大きく3つに裂けているのが特徴。秋には、鳥が好きな赤い実をたくさんつけるが、たいてい1~2粒でやめてしまうらしい。だから赤い実は、霜枯れしても枝に残っている。 
  • 見分け方・・・花は、オオカメノキやヤブデマリ、アジサイなどと似ている。特徴的な葉の形が、見分け方のポイント。カンボクの葉は、3つに裂けているので簡単に識別できる。 
  • 名前の由来・・・肝木の肝はかんじんかなめの意。古くは切傷木(せっしょうぼく)とも呼ばれたが、枝葉の煎汁が打撲や捻挫の救急薬に用いられたことによる。 
  • 花期・・・5~7月、高さ2~7m 
  • ・・・枝先に直径10cmほどの散房花序を出して、直径4mmの小さな両性花を多数つける。花序の縁を5弁の白い装飾花が取り巻く。両性花の中心が雌しべ、その周りに雄しべが5個で、葯は紫色を帯びる。 
  • ・・・対生して3つに裂ける。葉柄の上部には、決まって1~2対のコブがある。これは蜜腺で、蜜を出してアリを集め、植食昆虫を追い払うためだという。 
  • カンボクマルハバチ・・・北海道では1990年代以降、庭のカンボクで葉を食べ尽くす被害が発生している。6月中旬~7月上旬頃、幼虫が数十匹の集団をつくり、葉に穴を開けて食べる。ただし、食害により木が枯れた例はないという。
  • 樹皮・・・灰褐色で、古くなると不規則に剥がれ落ち、灰黒色になる。 
  • 果実・・・9~10月に赤く熟し、枝にびっしりとつくので壮観。
  • 鳥食まず、嫁殺し・・・秋には赤い果実が熟し、おいしそうに見える。しかし、この果実は有毒で、小鳥もほとんど食べないから、「鳥食まず」と呼んでいる。また、長野県内では、昔、嫁さんがこの果実を食べて死んだ事例があるらしく、「嫁殺し」と呼んでいるところが多い。 
  • 果実と野鳥・・・レンジャク類やヒヨドリ、ツグミが食べたりするが、相当まずいのか、いずれも1~2粒でやめてしまうらしい。このまずさも生存戦略の一つという人もいる。鳥が赤い色に誘われて、ついつい食べてしまうが、一口だけ食べて飛び去れば、いろんな場所に運ばれる確率が高くなるというわけ。 
  • 用途・・・アジサイに似た白い装飾花や赤い実が美しく、小鳥の食餌木にもなることから、古くから庭園や公園、庭木に利用されている。 
テマリカンボク
  • 手まりのように咲くテマリカンボク(手毬肝木、スイカズラ科)

     ヨウシュカンボクの変種(洋種)。東北地方以北で観賞用としてよく植えられる。一本の柄につく花は飾り花だけで、手まりのように咲く。実は結ばない。葉柄に蜜腺がある。 
  • 見分け方・・・花がオオデマリに似ているが、カエデの葉のように3~5つに裂けるのが特徴で、オオデマリは卵形で裂けないことから簡単に区別できる。 
  • 花期・・・5~6月、高さ3~5m 
  • 花と葉・・・手まり型の花は、オオデマリに似て美しいが、葉はカエデの葉のように浅く3つから5つに裂ける。
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
  • 「葉でわかる樹木」(馬場多久男、信濃毎日新聞社)
  • 「植物民俗」(長澤武、法政大学出版局)