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樹木シリーズ43 マユミ、コマユミ

INDEX マユミ、コマユミ
  • 鳥が好む赤い実が美しいマユミ(真弓、ニシキギ科)

     身近な里山に生え、若木のうちから花や赤い実をたくさん吊り下げる。ピンク色の果実が割れると、鳥が好む赤い種子が現れる。葉も美しく紅葉するので、公園樹や庭木、生け垣として植えられる。万葉集には、マユミを詠んだ歌が11首あり、かなり身近な樹木であった。これは、マユミが弓の材料になることと、樹皮から和紙をつくったことによるものと言われている。 
  • 名前の由来・・・古くから弓の材料に使われたことによる。古代の弓は枝をそのまま使った丸木弓から、マユミになったとの説など様々ある。昔、マユミの樹皮で和紙を加工したものを「檀紙(だんし)」と呼んでいたことから、「檀(マユミ)」と書くこともある。 
  • 花期・・・5~6月、高さ3~5m、大きいものは15m 
  • ・・・小さく目立たない淡緑色の花をまばらに開く。 
  • ・・・やや細身の卵形で厚みがあり、黄緑色の主脈が目立つ。鋸歯は細かく、不揃いのミシン目のような細かいギザギザがある。 
  • ・・・10~11月頃、薄紅色の果実は四角く膨らみ、皮が4つに割れて中から真っ赤な種子が顔を出す。 
  • 生け花・・・実が美しいので花材として人気がある。江戸時代の「替花伝秘書」(1661年)には、8月15日にいける心にマユミを使うと記されている。 
  • マユミの実は、晩秋、葉が散った後も残り、初雪の頃でも赤い実が良く目立つ。 
  • マユミの実と野鳥・・・山地に自生しているものは、オオアカゲラやコガラがよく採食する。平地では、コゲラやメジロが採食する。
  • 嫁殺し・・・マユミの若葉は食べられるが、赤い実は有毒である。食べると吐き気や下痢をおこす。長野市には、姑が嫁に食べさせて殺したという民話があり、今でもこの木を「嫁殺し」と呼んでいる。 
  • 判子の木・・・マユミとニシキギは、木目がなく柔らかい木なので、昔から判子を作るのに用いられた。子供たちの遊びとしてもこの木で判子を作った。 
  • 用途・・・昔は弓や和紙、現在は印鑑や将棋の駒、櫛の材料、公園樹、庭木、盆栽。 
コマユミ
  • 赤い実と紅葉が美しいコマユミ(小真弓、ニシキギ科)

     北海道から九州までの山野に普通に生え、赤い実と紅葉が美しいことから庭木としてよく植えられる。母種のニシキギと違って、枝にはコルク質の翼がない。 
  • 名前の由来・・・小さなマユミという意味で名付けられたが、性質はニシキギそのもの。 
  • 花期・・・5~6月。高さ2~3m。 
  • ・・・葉腋から集散花序をだし、淡い緑色の地味な花を数個つける。
  • ・・・実は2裂して、橙赤色の仮種皮に包まれた種子が2個ぶら下がる。 
  • 嫁のかんざし・・・秋に紅朱色に熟して割れ、花かんざしの形になるので、「嫁のかんざし」(新潟県六日町)と呼ばれている。
  • 頭ジラミ駆除・・・コマユミ、ニシキギ、ヤブカンザシは、いずれもアルカロイドの一種を含み、黒焼きにしてシラミ殺しに用いた。コマユミの有毒部位は全草、特に種子。誤食すると嘔吐・下痢・悪寒・けいれんを起こす。
  • 箒(ほうき)を作った木・・・家の土間や庭先、軒下などを掃くには、草ほうきや竹ほうきよりも、山から採ってきて自分で作った方がよほど使い良かった。その材料は、コマユミ、リョウブ、ツクバネウツギなどが使われた。秋田では、コマユミのことを「箒木」と呼ぶ。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
  • 「樹木 見分けのポイント図鑑」(講談社)
  • 「秋田農村歳時記」(ぬめひろし他、秋田文化出版社)
  • 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
  • 「植物民俗」(長澤武、法政大学出版局)