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樹木シリーズ48 アオギリ

  • 緑色の幹と船に乗った種子が特徴的なアオギリ(青桐、アオギリ科)

     緑色の幹、大きな葉の形も美しいことから、街路樹、公園樹として多く植えられている。種子は、船形の葉のような果実の裂片ごと風で運ばれることから、「空飛ぶボート」などと呼ばれている。中国原産の落葉高木だが、伊豆半島や紀伊半島、四国、九州の沿岸地に野生化している。緑色の樹皮は、シラカバ、ヒメシャラと並び三大美幹木に数えられる。広島の被ばくアオギリは有名。
  • 名前の由来・・・樹皮が緑色で、キリの葉に似ていることから、「青桐」と書く。中国では「梧桐」と書き、並木や庭木として広く植えられる。 
  • 花期・・・6~7月、高さ15m 
  • ・・・夏、大形の花序に多数つく。一つの花には黄色と赤が混じり、たくさんのハチたちが蜜を求めて集まってくる。雌花は赤みを帯びる。 
  • ・・・大形で、3~5つに裂ける。基部は深く窪み、裂片の先は尖る。はじめは葉の両面と葉柄に褐色のやわらかい星状毛があるが、後裏面を除いて毛は落ちる。 
  • 生長が速く、大きな葉が涼しい木陰をつくるので、街路樹としてよく植えられる。 
  • 実の初めは・・・マメ科の鞘のような形をしている。 
  • ・・・やがて裂けて舟形になり、多数ぶら下がる。その独特の形は、種が船やボートに乗ったような、あるいは皿に盛った団子のようにも見える。
  • 種を乗せた空飛ボート・・・まるで種子がボートに乗っているように見える。ただし、川に流されるのではなく、風に乗って宙を舞い、クルクル回転しながらゆっくり落下する。だから「種を乗せた空飛ボート」などと呼ばれている。 
  • 台風で落下した種子
  • 食用等・・・種子はタンパク質や脂肪を多く含むため、昔は種子を炒ってそのままおやつとして食べた。また、カフェインを含むので、第二次世界大戦中は焙煎してコーヒーの代用にした。黒焼きにして円形脱毛症にも用いた。 
  • 樹皮・・・三大美幹木に数えられる緑色でなめらか。その緑色は葉緑素で、樹皮でも光合成をしている。老木になると、緑色はなくなり、表面はコルク質で灰白色に。縦皺が深くなる。
  • 幹や枝を黒焼きにして粉末にしたものを火傷に塗布。戦争中は樹皮繊維で麻の代用として縄やムシロをつくったり、樹皮の搾り汁を抜け毛予防に用いた。 
  • 黄葉・・・秋に黄色く黄葉する。
  • 被ばくアオギリ・・・広島市が選定した被ばく樹木の代表。爆心地から約1.3km、爆心地方向にさえぎるものがなかったことから、熱線と爆風をまともに受け、枝葉は全てなくなり、幹は爆心側の半分が焼けた。枯れ木同然だったこの木は、翌年の春になって芽吹き、被爆と敗戦の混乱の中で虚脱状態にあった人々に生きる勇気を与えた。その後、中国郵政局の建替えに伴い、1973(昭和48)年5月、平和記念公園へと移植された。その付近には、被爆アオギリ二世と見られるアオギリも自生しているという。 
  • アオギリのうた(作詞・作曲森光七彩)
    電車にゆられ 平和公園/やっと会えたね アオギリさん/小学校の校庭の木のお母さん/たくさん たくさん たね生んで/家ぞくがふえたんだね よかったね/遠いむかしの きずあとを/直してくれる アオギリの風/遠いあの日の かなしいできごと/資料館で見た 平和の絵/いろんな国の 人々や/私がみんなが 考えてゆく広島を/勇気をあつめ ちかいます/あらそいのない国 平和の灯(ひ)/遠いむかしの できごとを/わすれずに思うアオギリのうた/これから生まれてゆく 広島を大切に/広島のねがいはただひとつ/せかい中のみんなの明るい笑顔 
  • 材としての用途・・・材は軽く柔らかい。器具材や下駄材など。中国では、棺を作るのに最高の材として珍重された。 
  • 薬用・・・葉は、春~夏まで採取して、細かく刻んで天日で乾燥して、ミキサーで粉末にして保存する。葉の粉末に熱湯を入れて、1日3回食後に飲用すると、血圧降下、動脈硬化予防に効果があるとされている。種子は、10~11月、熟した果実を採取してたたいて種子を集めて天日で乾燥させたものを、生薬名で悟桐子(ごとうし)と呼ぶ。腹痛・胃痛に効果があるとされている。炒ってそのまま食べても効果があるという。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「続・読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
  • 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)