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樹木シリーズ67 リョウブ

  • 飢饉時に重要な救荒食として畑に植えたリョウブ(令法、リョウブ科)

     樹皮は、サルスベリに似てツルツルして斑に剥げて美しい。柔らかな若葉は食用になり、茹でて干すと長期保存ができるので、昔は重要な救荒食であった。盛夏に白い花を穂状に咲かせる。北海道南部から九州の尾根筋や林内に生え、やや酸性土壌を好む。 
  • 名前の由来・・・律令時代、田畑の面積に応じてリョウブを植えさせ、葉を採取して貯蔵することを命ずる官令が発せられた。その基準量を意味する「令」と官令を指す「法」から、「令法」と書く。 
  • 別名ハタツモリ(畑積)・・・ハタは「畑」、ツモリは「あらかじめ見積もった量」を意味し、田畑の面積に応じて割り出した作物を植える量を指すことから、「畑積」と書く。他に若葉を救荒食にしたことから、田畑を守る神の意味から「畑つ守」とする説、白く長い花序が群れ咲く様子を白旗に見立て「旗積もり」とする説などがある。
    里人や 若葉つむらん はたつもり 外山も今は 春めきにけり 藤原家良 
  • 花期・・・7~9月、高さ8~10m 
  • 樹皮・・・サルスベリやナツツバキに似て、樹皮が剥がれて斑になるのが特徴で、皮つきのまま床柱として使われる。リョウブの幹の皮肌は、サルスベリにそっくりだから、東北から関東にかけて非常に広い範囲で、リョウブを「猿滑り」と呼んでいる。 
  • 穂状のツボミが次々と開花
  • ・・・枝先に小さな白い花を穂状につけ甘い香りを放つ。他の多くの花が終わる夏にかけて咲くのでよく目立つ。 
  • 雄しべ、雌しべ・・・白い花冠は5枚で、雄しべは10本、中心に雌しべが1本。 
  • 花と昆虫・・・花は見た目だけでなく、よい香りがするため、コガネムシ類や小型のカミキリムシ類、ハチ類など、多くの昆虫を引き寄せる。 
  • ・・・枝先に集まって互生し、倒披針形で葉先が短く鋭く尖る。鋸歯は、細かくギザギザしている。 
  • ・・・実が多数集まって垂れ下がり、褐色に熟す。
  • リョウブとウソ・・・高山帯で繁殖するウソは、冬になると平地に移動するので、都市公園でも見られる。その際、特にリョウブの実を好む。やや太い枝にぶら下がって垂れ下がる実を食べる。 
  • 緑化樹木・・・重金属に対する耐性が高く、栃木県足尾鉱山や金属精錬跡地などで群落をつくる。土壌中の重金属を根から取り込み無害化して生育する能力があることから、鉱山跡地などの緑化に有効な樹木。 
  • 救荒食・・・若葉は茹でてから陰干しして保存し、ご飯に混ぜたり、粉にした葉を米や粟の粉に混ぜて団子にしたりして食べた。長期保存ができるので、昔から重要な救荒食であった。
    山里や 旅にしあれば 令法飯 百井塘雨 
  • 箒(ほうき)を作った木・・・山本郡では、リョウブを「箒芝」と呼んでいる。 
  • 材の利用・・・木材は緻密で堅く粘り強いので、背負子や農具の柄、洋傘の柄、良質の木炭、樹皮付きのまま茶室の床柱などに利用される。
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「野鳥と木の実と庭づくり」(叶内拓哉、文一総合出版)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
  • 「植物民俗」(長澤武、法政大学出版局)