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樹木シリーズ70 ニワトコ

  • 山菜や薬用に利用されてきたニワトコ(接骨木、スイカズラ科)

     山野の林縁に生える落葉低木。若葉は山菜、葉や枝、花を薬用にするなど、古くから親しまれてきた身近な樹木。早春の芽吹き、春の白い花、夏の赤い実と楽しめる。昔は、小枝を鳥籠の止まり木にしたり、正月用の削り花として床に飾ったりした。本種の枝や樹皮を煎じたものを湿布薬として用い、骨折や捻挫の治療に利用したのが別名「接骨木(せっこつぼく)」。 
  • 名前の由来・・・薬用として庭に常に植えられていることから、「庭常」と呼ばれるようになったとの説や、古く「ミヤツコギ(造木)」という名前から転訛したとの説もある。また、この木を黒焼したもの、あるいは枝を煮詰めてアメ状にしたものを骨折の患部に湿布して治療したことから、別名「接骨木(せっこつぼく)」という。 
  • 花期・・・4~5月、高さ3~6m
  • ・・・若葉と同時に本年枝の先に円錐花序を出して、淡い黄白色の小さな花を多数つける。
  • 雄しべ、雌しべ・・・中心の紫色が雌しべで、その周囲に5本の雄しべが取り囲む。 
  • ・・・奇数羽状複葉で対生する。小葉は2~3対あり、葉柄が太いのが特徴。長楕円形または広楕円形で、先端は尖り、基部は円形。縁に細かい鋸歯がある。 
  • 枝は勢いよく伸びて大きく弧を描く。 
  • 果実・・・6~7月の梅雨の頃、鮮やかな赤い実が枝先を飾る。中に種子が3~5個ある。
  • ニワトコの実と野鳥・・・オナガ、カケス、カワラヒワ、ミヤマホオジロ、ホオジロ、カシラダカ、ヒヨドリ、キジ、ヤマドリなどが食べる。 
  • 幹枝・・・下部からよく分枝して高さ3~6mになる。若い枝は、淡緑色~淡褐色。古い枝は、樹皮が縦に裂けて落ち、灰褐色になる。髄がスポンジ状で、かつては顕微鏡で観察する対象を薄く切る際に利用した。 
  • 山菜としての利用、食べ過ぎに注意・・・新芽、つぼみを山菜として利用する。新芽はハカマから出たばかりの葉の開く前を手で摘む。塩を一つまみ入れた熱湯で茹で、十分に水にさらして使う。天ぷら、汁の実、おひたし、胡麻和え、酢味噌和えなど。ただし、青酸配糖体を含むので、食べ過ぎるとお腹を壊すので注意が必要。
  • 薬効・・・葉や木部を煎じて飲むと発汗や利尿に効くとされている。また、打ち身に湿布するとアザが浮いて良く効くとされている。
  • セイヨウニワトコ・・・実が黒く熟すヨーロッパ産の近縁種。古代には霊力が宿る木とされ、ハリーポッターの杖はニワトコの木からつくられている。
  • 欧米の人々は、今でも春の新芽を食べ、爽やかに甘く香る花や実でジャムや酒、清涼飲料をつくる。ヨーロッパでは、庭や公園に栽培されている。
  • 縄文時代から利用していたニワトコ酒・・・三内丸山遺跡からたくさん出土するニワトコの種子の中に、キイチゴ、サルナシ、ヤマグワ、マタタビ、ヤマブドウなどが含まれていた。これらの実を収穫し、乾燥した後決まった配合で煮出し、それを発酵させて果実酒をつくっていたという。秋田県では、これらの種子の絞り滓と考えられるものが実際に見つかっている。
  • ヨーロッパでは、セイヨウニワトコの果実で造った果実酒を、エルダーベリーワインと呼び愛飲されている。また、セイヨウニワトコの花は、ヨーロッパでは古くから、発汗や解熱としての民間薬として用いられている。
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)
  • 「秋田農村歳時記」(ぬめひろし他、秋田文化出版社)
  • 「きのこ・木の実・山菜カラー百科」(主婦の友社)