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樹木シリーズ73 ツリバナ

  • 吊り下がる可愛い果実は毒・ツリバナ(吊花、ニシキギ科)

     山地に生える落葉低木。吊り下がる花も実も愛らしく、その姿から「釣り」を連想させる。紅葉も美しいことから、庭園や茶庭、庭木としてよく植えられる。蒴果は球形で、熟すと5裂して朱赤色の仮種皮に包まれた種子があらわれる。その燃えるような赤い実に誘われて、多くの鳥たちがやってくる。実つきの枝は、茶花に珍重される。近似種のエゾツリバナは、北海道、本州の日本海側に分布するが、ここでは区別せずに解説する。 
  • 見分け方・・・マユミとツリバナはよく似ているが、マユミの蒴果(上左写真)は淡い紅色に熟すと4つに割れ、ツリバナの蒴果(上右写真)は紅色に熟すと5つに割れることで区別できる。 
  • 名前の由来・・・花や果実を吊り下げることから、「吊花」と書く。花よりも圧倒的に赤い実が目立つことから、その赤い実を花に見立てて、「吊したような花」と表現したのであろう。 
  • 花期・・・5~6月、高さ4~6m
  • ・・・葉腋から長さ6~15cmの柄を出し、淡い緑色~淡い紅色を帯びた花を開き、その名のとおり吊り下げる。花びらは5枚。 
  • 割れる前の青い果実 
  • 果実・・・真ん丸の果実が紅色に熟すと、くす玉のように5つに割れて縁に朱赤の種子を吊り下げる。 
  • ・・・菱形で細かい鋸歯があり、波打つことが多い。
  • 樹皮・・・灰色で平滑。
  • 紅葉・・・葉は黄色から朱色や紅色になる。
  • 可愛い果実は毒・・・種子を包む橙赤色の仮種皮には、アルカロイド成分を含み、誤って口にすると少量でも嘔吐や下痢をし、大量に摂取すると筋肉麻痺、心臓発作を引き起こす。 
  • 昔は、マユミの熟した果皮・種子を頭のシラミ駆除に使った。
  • 渓流釣りとツリバナ・・・イワナを追いながら渓流を歩いていると、清冽な流れに向かって釣り糸を垂れているように咲く花や実に出会うことがある。どこか釣りを連想させる植物で印象深い。 
  • 赤い実と野鳥・・・ヒヨドリ、メジロ、エナガ、シジュウカラ、ヤマガラ、ルリビタキなどたくさんの鳥たちがやってくる。種子は食べた鳥が散布してくれる。 
  • キバラヘリカメムシ・・・ニシキギ科のマユミやツリバナ、ニシキギ、ツルウメモドキなどの実や葉上に成虫・幼虫共に多数集まっていることが多い。上から見ると黒い体色で地味だが、横から見ると腹が鮮やかな黄色い色をしているヘリカメムシ科の仲間。
  • この虫は、悪臭で有名なカメムシ類の中では異質で、「青リンゴのような匂い」がすると言われている。成虫になるとツリバナなどの実にとりついて、仮種皮を吸汁する。 
  • 用途・・・材質は白くなめらか。弓、杖、印材、将棋の駒、こけしなど。
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「続゛読む゛植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
  • 「野鳥と木の実と庭づくり」(叶内拓哉、文一総合出版)
  • 「拾って楽しむ 紅葉と落ち葉」(山と渓谷社)