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樹木シリーズ74 オオカメノキ(ムシカリ)

  • ブナの森を白い花と赤い実で彩るオオカメノキ(スイカズラ科)

     ブナ帯の森に生え、株立ち樹形になる落葉低木。早春、アジサイに似た白い装飾花をたくさんつけ、北国(ブナ帯)の山に春がきたことを告げる。亀の甲羅のような大きな丸い葉、夏から秋にかけて実る赤い果実は、柄まで赤いのでよく目立つ。紅葉も美しい。山の鳥たちは、秋の赤い実を食べ、カモシカは冬芽を好む。
▲オオカメノキ  ▲ケナシヤブデマリ
  • 見分け方・・・オオカメノキの装飾花は5裂し、裂片はほぼ同じ長さ。よく似たケナシヤブデマリの装飾花は、5裂するが、裂片の1個だけが極端に小さく、一見4裂しているように見えるので区別できる。また、オオカメノキの葉の基部はハート形に窪むが、ケナシヤブデマリは窪まない。 
  • 名前の由来・・・卵円形の大きな葉を亀の甲羅に見立てたのが和名の由来。また、ハムシの一種が葉の葉脈だけ残して葉脈標本のように食べてしまうことが多いことから、「虫食われ」が転訛し、別名ムシカリと呼ばれている。 
  • 花期・・・4~6月、高さ2~5m 
  • ブナ林の低木層・・・明るいブナ林の低木層には、オオカメノキ、オオバクロモジ、マルバマンサク、常緑樹のヒメアオキ、エゾユズリハ、ハイイヌツゲ、ハイイヌガヤ、ユキツバキなどが見られる。
  • 高山帯に自生するオオカメノキ(秋田駒ヶ岳)・・・光を遮る高木はないが、それだけ他の植物との競争は激しいことだろう。
  • ・・・花序の中心には、実のできる両性花がつき、その周りに直径2~3cmのアジサイに似た白い装飾花をつける。 両性花を拡大して見ると、雄しべは5個、中心に雌しべが1個ある。
  • 枝が横に広がるのが特徴。その横に長く伸びた枝に白い花がたくさん咲くのでよく目立つ。 
  • 早春、ブナ林を代表する低木の花・・・萌黄色の森に、オオカメノキの白、ムラサキヤシオツツジの紅紫色がよく目立つ。 
  • ・・・大形の葉は対生し、縁は細かく裂ける重鋸歯となる。よく似たケナシヤブデマリは、葉の付け根に切れ込みがなく区別できる。 
  • 若葉・・・オオカメノキの若葉は、縁を中心に茶系の色をしているので、似ているミズキ等と区別できる。葉が成長するにつれて、緑色一色になる。
  • 果実・・・核果となり、長さ8~10mmの広楕円形。夏に赤く色付き、やがて黒く熟すと、色々な鳥たちがやってくる。 
  • 果実ができる初期
  • 次第に果実は膨らみ赤くなる
  • 真っ赤になった実。一部、鳥に食べられなくなっている。
  • 一斉に黒くならず、飛び飛びに黒くなる。恐らく、赤い実と赤い珊瑚のような果柄で誘い、黒く熟した実を食べてもらう戦略なのであろう。
  • ほとんど鳥に食べ尽くされ、赤い果柄だけが目立つ。 
  • 紅葉・・・赤紫色から紅色になり、美しく紅葉する。 
  • 初めのうちは1枚の葉の中でも、葉脈ごとに色づきが違いモザイク模様を展開したりするので美しい。また、太陽の当たり具合によって、緑の葉、黄色い葉、赤い葉など様々。 
  • 紅葉は、逆光で葉を透かして見ると、また違った紅葉美を発見できる。
  • 暦的利用・・・白神山地の目屋マタギは、春になって、葉が2銭銅貨ぐらいの大きさになると、その年のマタギも終わりだと判断する。 
  • 用途・・・芽立ちの頃の枝は、生け花に使われる。弓、輪かんじき、薪炭、公園樹、庭木、縄の代用(枝)、草木染の染料(葉)など。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「樹木 見分けのポイント図鑑」(講談社)
  • 「学研グラフィック百科 日本の樹木01 ブナ」(学習研究社)
  • 「拾って楽しむ 紅葉と落ち葉」(山と渓谷社)
  • 「白神山地ブナ帯域における基層文化の生態史的研究」(掛谷誠ほか)