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樹木シリーズ84 ボケ(木瓜)

  • 花が美しいボケ(木瓜、バラ科)

     中国原産で、平安時代に日本に渡来し、広く植えられている。古くから花を楽しむために栽培されてきた代表的な花木。日本のクサボケとも交配されて花色も多彩。庭木や盆栽、切り花などに利用されている。バラ科だけに枝にはトゲがあるので注意。夏に熟す果実は、砂糖漬けや果実酒として利用されている。夏目漱石は、俳句や小説「草枕」の中で、目先の利に走らず不器用でも愚直に生きることを意味する「拙を守る花木」としてボケを引用している。
  • 名前の由来・・・果実が瓜に似ていることから、「木瓜」と書く。その「木瓜(もけ)」と呼ばれたものが「ぼけ」に転訛したとの説や、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」に転訛したとも言われている。 
  • 花期・・・4月。樹木見本園では、ユキヤナギやサクラの花が咲く頃に咲く。 
  • ・・・品種によって花色は様々。一本の木に異なる色の花がつく品種もある。雌雄同株。 
  • 多彩な花の色・・・朱赤、緋色、白、ピンク、染め分け、絞りなど花色が多彩。 
  • 花が美しいことから、観賞用として多くの園芸品種がある。 
  • 樹形・・・細い幹を複数出した株立ちの樹形になる。高さは2mほど。 
  • ボケにはトゲがあり、枝が肘をはったように曲がっている。 
  • ・・・ヘラ形の葉が束状につき、短いトゲがあるのが特徴。 
  • 果実・・・ボケは低木のわりには、大きいジャガイモ大の果実をつける。7~8月に黄色に熟す。生食にはならず、砂糖漬けや果実酒にする。 
  • 夏目漱石「草枕」・・・「木瓜は面白い花である。枝は頑固で、かつて曲った事がない。そんなら真直かと云うと、けっして真直でもない。ただ真直な短かい枝に、真直な短かい枝が、ある角度で衝突して、斜に構えつつ全体が出来上っている。そこへ、紅だか白だか要領を得ぬ花が安閑と咲く。柔らかい葉さえちらちら着ける。評して見ると木瓜は花のうちで、愚かにして悟ったものであろう。世間には拙を守る(目先の利に走らず不器用でも愚直に生きること)と云う人がある。この人が来世に生れ変るときっと木瓜になる。余も木瓜になりたい」 
  • 木瓜咲くや漱石拙を守るべく 夏目漱石
  • 盆栽・・・素人でも失敗が少なく花を咲かせることができるので、鉢栽培の初心者に適している。 
  • 「ボケ」ブーム・・・大正時代、新潟市と埼玉県川口市を中心にボケのブームが起こり、「東洋錦」や「日月星(じつげつせい)」が作出された。さらに昭和40年頃から、ボケの第二次ブームが起こり、今では200を超える品種が栽培されている。
  • 用途・・・庭木や盆栽、生け垣、切り花として観賞される。
  • 花言葉・・・先駆者、指導者、妖精の輝き、平凡
  • 木瓜咲けりその色飛びし赤絵かも 水原秋櫻子
  • 肩を越す木瓜のまぶしき中通る 篠原 梵
  • 人の死にいちいち参り木瓜の花 和田悟朗
  • 白木瓜や乳首吸はれしことのなく きくちつねこ
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社) 
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「講談社ネイチャー図鑑 樹木」(菱山忠三郎、講談社)
  • 「樹木図鑑」(鈴木庸夫、日本文芸社)  
  • 「季語 早引き辞典 植物編」(監修 宗田安正、学研)