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樹木シリーズ87 ミネザクラ(タカネザクラ)

  • 最も標高の高い所に咲くミネザクラ(嶺桜、バラ科)

     北海道と本州中部地方以北の亜高山帯~高山帯に分布し、登山でよく見掛ける山のサクラ。別名タカネザクラ(高嶺桜)とも呼ばれ、日本のサクラの中では最も標高の高い所に咲く。亜高山帯のミネザクラは、3~5mの高さになるが、高山になると雪や風に痛めつけられ、高さも低く屈折した姿をしている。特に風当たりの強い場所では、風下の方向にのみ枝を伸ばし、ハイマツ帯の中に生えるものは高さがハイマツと同じ低さになる。 
  • 見分け方・・・秋田の高山で見られるサクラの多くは本種だが、本州中部地方以北の山地帯~高山帯下部に生えるチシマザクラも自生している。ミネザクラは、花柄と葉柄に毛がないが、チシマザクラは毛がある点で見分けられる。
  • 名前の由来・・・高い山の嶺に咲く桜の意味で、ミネザクラ(嶺桜)。別名のタカネザクラ(高嶺桜)も同じ。 
  • 樹形・・・高山の過酷な環境に適応するため、高さは1mにも満たないものが多く、強い風雪の影響を受けて風下方向に屈曲した樹形となる。
  • 花期・・・5~6月(秋田駒ヶ岳では6月上旬~下旬)、高さ0.5~5m
  • ・・・雪解けとともに赤褐色の若葉と一緒に淡紅白色の花が散形状に1~3個咲く。花弁は、先がへこんだ広倒卵形で5個あり、平開しない。 
  • 雄しべは多数、雌しべは1個で花柱は無毛。花柄はごく短く、小花柄は2~3cmで無毛。 
  • 花の色は多様・・・白色から淡い紅色まで様々。よく見ると、花の芯にいくほど色が濃い。ソメイヨシノに比べれば地味だが、素朴で可憐な花が魅力。
  • ・・・倒卵形又は倒卵状楕円形で質は薄く、無毛。先は尾状に尖り、縁には欠刻状の重鋸歯がある。 
  • 果実・・・球形で黒く熟す。 
  • 樹皮・・・光沢のある紫褐色で、横に長い皮目がある。 
  • 秋田の高山で見られるサクラの多くは本種。 
  • ミネザクラの紅葉 
  • 松尾芭蕉「おくのほそ道」、月山から湯殿山に向かう途中・・・「岩に腰かけてしばらく休んでいると、三尺ばかりの桜(ミネザクラ)が、つぼみを半分ほど開きかけていた。降り積もった雪の下に埋まりながら、春を忘れずに花を開こうとする遅ざくらの花の心は実に健気である。「炎天の梅花」が、ここに花の香を匂わしているようであり、行尊僧正のおもむき深い歌も思い出されて、いっそうしみじみとした思いに駈られた。」 
  • 「花の百名山 登山ガイド上」(山と渓谷社)・・・神室山(1365m)の「ミネザクラが見たい」となっている。分布は、神室山から前神室山の間の稜線沿い。見頃は、5月下旬~6月上旬。 
  • 春の息吹(秋田駒ヶ岳)・・・6月上旬、萌黄色の若葉と満開に咲き誇るミネザクラ(タカネザクラ)の花が頭上から降り注ぐ秋田駒ヶ岳登山道。高山一帯にミネザクラが咲くと、長い沈黙の冬山にやっと終わりを告げ、生命踊る春がやってきたことを実感する。
  • 花言葉・・・あなたの微笑み、優美な女性、潔白、心の美しさ 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社) 
  • 「山渓フィールドブックス7 高山植物」(木原 浩、山と渓谷社)
  • 「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
  • 「花の百名山 登山ガイド上」(山と渓谷社)   
  • 「フラワートレッキング 秋田駒ヶ岳」(日野東・葛西英明、無明舎出版)