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樹木シリーズ90 エゾアジサイ

  • ブルーの飾り花が涼感を誘うエゾアジサイ(蝦夷紫陽花、ユキノシタ科)

     北海道と本州の日本海側の雪の多い山地に生え、花の色は鮮やかなブルーが目を引く。秋田のブナ帯で見られるアジサイは本種。一方ヤマアジサイは、主に太平洋側に生育し、花は白っぽいものが多い。観賞用アジサイの原種であるガクアジサイは、主に伊豆諸島に自生する日本の固有種である。エゾアジサイの葉は対生し、広楕円形で先は尖り、縁に荒く鋭い鋸歯がある。枝先に散房花序をだし、淡い紫色の小さな両性花多数と、その周囲に長い柄のある装飾花をつける。装飾花は、鮮やかな青紫色、時に淡い紅色、白色を帯びる。
  • エゾアジサイとヤマアジサイの分布・・・エゾアジサイは北海道、本州(東北地方、北陸地方以西は日本海側)、九州に分布するのに対し、ヤマアジサイは本州(関東以西太平洋側)、四国、九州、朝鮮南部に分布する。 
  • 見分け方・・・ヤマアジサイは主に太平洋側に生育し、花は白っぽいものが多い。エゾアジサイは、日本海側の雪の多い山間に生育し、ヤマアジサイよりも全体的に大形で、葉が大きく、花序の直径も倍近くになる。エゾアジサイは、多雪環境に適応して葉が大型化した種と考えられている。 
  • 葉の参考値・・・エゾアジサイの葉の長さは13~17㎝、幅5~10㎝と大型。これに対しヤマアジサイは、葉の長さ5~10㎝、幅4~5㎝と小さい。 
  • 名前の由来・・・蝦夷に生えるアジサイの意味で、「蝦夷紫陽花」と書く。アジサイは、「藍色の花が沢山集まって咲いた花」を意味する「あづさい」がなまったものとする説や、「集まって咲くもの」とする説、「厚咲き」が転じたものであるとする説などがある。 
  • 花期・・・6~8月 高さ1~1.5mの落葉低木 
  • ブナ帯の湿った沢筋に多く生える・・・7月、イワナ釣りに出掛けると、湿った崩壊林道沿いや沢沿いに、「アジサイロード」と呼びたくなるほど群生しているのをよく見掛ける。 
  • ・・・淡い紫色の両性花の周囲に長い柄のある装飾花をつける。装飾花は、3~5個あり、鮮やかな青紫色、時に淡い紅色、白色を帯びる。 
  • ・・・葉に葉柄があり、十字対生。葉の形は広楕円形で葉先は尾状に尖る。表面は濃緑色で光沢がある。縁には粗い鋭鋸歯がある。厚くゴワゴワして、表面の網状脈に沿って窪む。
  • 果実・・・両性花は結実し、蒴果は熟すと裂開し小さな種子が出てくる。種子には両側に翼がある。
  • 装飾花と蒴果
  • 花と昆虫・・・中心の小さな花はよく見るとひとつずつ小さな花びらと雄しべ、雌しべがある。これが実をつける花で、実をつけるために、虫の力を借りて受粉する。まわりの花は、虫を呼びよせるための飾り花である。 
  • 多いのは鮮やかな青色の個体
  • 涼感を誘う花・・・自然に自生する植物で、ブルー系の鮮やかな花は少ないだけに目立つ。さらに熱い炎天下、噴き出す汗を拭きながら歩いている時、緑に鮮やかなブルーの装飾花は涼感を誘う。 
  • 七変化・・・咲き始めは青くても、終わりになると赤みが入ったり、白っぽくなったりする。また酸性土壌だと青く、アルカリ性だと赤くなるなど、まさに七変化する。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社) 
  • 「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
  • 「秋田農村歳時記」(ぬめひろし外、秋田文化出版社)
  • 「里山の花木ハンドブック」(多田多恵子、NHK出版)
  • 「葉っぱで見分け 五感で楽しむ 樹木図鑑」(ナツメ社)
  • 「葉でわかる樹木 625種の検索」(馬場多久男、信濃毎日新聞社)
  • 「樹木観察ハンドブック 山歩き編」(松倉一夫、JTBパブリッシング)