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野鳥シリーズ② アカショウビン

広葉樹の森に棲む「火の鳥」・アカショウビン(赤翡翠、ブッポウソウ目カワセミ科)

 全身燃えるような赤い色をしたカワセミ類で、「火の鳥」の異名をもつ。東南アジアから中国にかけて繁殖。カワセミの仲間は、いずれも人気が高いが、日本では夏鳥として限られた場所でしか見られないアカショウビンの人気はダントツ。水辺の鳥というより「森林の鳥」である。
 
 秋田では、仁別国民の森や森吉山ノロ川周辺のブナ林にはかなりの個体が飛来し、繁殖している。ブナ林の渓流近くでは、夕方あるいは小雨が降るような時、盛んに鳴きながら飛び交っている。南西諸島で繁殖するのは、別亜種のリュウキュウアカショウビンである。
見分け方

 全身赤色の鳥で、識別しやすい。上面には紫色の光沢があり、腰にはコバルト色の羽がある。くちばしはヤマセミやカワセミより太い。一般的な野鳥図鑑では、雌雄同色で見分け方についての記述がほとんど書かれていない。動物カメラマン・嶋田氏によると、求愛給餌や交尾の観察から、下腹部が赤褐色のものがオス、白っぽい淡褐色がメスだという。その違いは、彼の写真集「火の鳥 アカショウビン」でもはっきり確認できる。
▲腰のコバルト色が一際鮮やか
全長28cm、翼開長40cm
水浴び・・・1日に数回水浴びをする。枝から飛び込んだり、水面を飛びながら連続的に浴びたりする。

 鳥たちは、ダニなどの寄生虫や汚れを落とすために、四季を問わず水浴びをする。それは、放っておくと病気になりかねないからである。水を浴びた後は、丹念に羽づくろいをし、尾の付け根にある腺から出る脂を全身の羽毛に塗りつける。こうすることによって、水をはじき、雨の中でも体温が低下するのを防ぐことができる。
▲水浴びをすると、毛並みが乱れる。

 水浴びの後は、必ず羽づくろいが行われる。鳥にとって最も重要な翼は、クチバシを使って入念に行う。クチバシの届かない首から上は、足を使ってかくようにする。
▲羽を扇子のように目一杯広げてホバリング(停止飛翔)・・・実に格好いい


 繁殖期には、夕暮れに「キョロロロロ・・・」という尻上がりの震える声で鳴く。飛び立ち時には、「キョロ、キョロ、キョロ」と鋭く鳴くことが多い。巣の中のヒナは「チョッチョッ、ジュージューイ」と鳴き続ける。
生 活

 主に山地の落葉広葉樹の森に棲息し、単独またはつがいで見られる。食性は、魚だけでなく、サワガニ、トカゲ、カエル、カタツムリ、昆虫類など様々な小動物を捕食する。繁殖期の調査によれば、ヒナに与えるエサの約半数がカエルだった。

ホオノキに止まっているアカショウビン
 林内や渓流沿いの木の枝などにとまり、地上や水面などにエサを見つけると、舞い下りて捕える。
 定番のカエルを捕食後、枝に戻って獲物をくわえ直し、頭から呑み込む。動きの大きな獲物は、足場に数回叩きつけ、弱らせてから呑み込む。魚は、カワセミやヤマセミのように水中に全身を潜らせることはなく、浅瀬で水面近くの魚を捕まえる。
 せっかく捕まえた獲物を逃がす場合もあるらしい。上の写真は、獲物を逃す瞬間をとらえた連続写真。 左の写真は、獲物を逃がして大あわてしているところ。右の写真は、エサを落として首を最大に伸ばした瞬間である。その後追うのをあきらめ、何事もなかったかのようにふるまっていたという。
 上の写真は、背景の緑のボケが美しく、「火の鳥」が一層輝いて見える。営巣は、朽木に穴を掘ったり、キツツキの古巣を利用する。
雨乞鳥

 繁殖期は梅雨時で雨が降りそうな時に鳴くので、雨乞鳥とも呼ばれ、そこからいろいろな伝説が生まれた。「水が欲しいと空に向かって鳴いているのは、悪いことをして水を飲めない罰を受け、ノドが渇いて雨を求めているのだ」、「アカショウビンは、実はカワセミが火事にあい、水がなくて体が焼けて赤くなったものだ」、「火事で死んだ娘の生まれかわりで、水恋しと泣いているのだ」などといわれている。
求愛給餌
 産卵期は6~7月。オスは、大きな獲物がとれると、メスにプレゼントする求愛給餌がみられる。その際のエサは、大きめのエゾアカガエルなどが多い。より大きいものをプレゼントすることで、メスの関心を買おうとしているのであろう。カップルができると、卵を産むための巣穴作りする。。(写真:口にしているのはクモ)
巣穴掘り

 巣穴を掘るのはオスの仕事。メスは、近くの枝で見守っている。巣穴掘りは、キツツキのように突いて掘ることができないので、枯れ木でかなり軟らかくないと穴を開けることができない。クチバシで木をむしり取り、木くずを出す時は後ろ向きになって足で掻き出す。巣穴が完成すると、3~5個の卵を産む。
巣立ち

 巣立ちから10日もすると、親は、与えるエサを完全に殺さず、半殺しの状態で与える。これは、ヒナが枝に叩き付けて殺すように仕向ける。こうして少しずつ学習させると、見よう見真似で獲物を狙うことができるようになる。
 仁別国民の森や森吉山ノロ川周辺のブナ林では、夕方あるいは小雨が降るような時、盛んに「テロロロロ、テロロロロ、テロロロロ」と鳴きながら飛び交っている。
▲信じられないほど尾っぽを上げ、飛び立つ前の一瞬を捉えた超かっこいいアカショウビン
近年、個体数の減少が著しい・・・森の自然度を象徴する鳥の一つ

 全国各地からアカショウビンの繁殖地に渡来しなくなったとの報告が寄せられているという。アカショウビンの繁殖には、巣づくりに欠かせない太い幹の朽ちかけた木が不可欠。そんな自然度の高いブナなどの原生林が減少していることが原因と言われている。だとすればアカショウビンは、ブナ帯地域の自然度を象徴する鳥と言えそうである。
アカショウビンの撮影

 一般的にはノーブラインドで撮影する。話し中に出たりすることもあるが、人の声はアカショウビンを遠ざけ、次第に出が悪くなる。だから、警戒されないようにブラインド内で撮ったりしている人もいる。定番ともいえる止まり木があるので、そこからある程度の距離をとって静かに待ち続けるのが一番だという。

 アカショウビンは、緑の深い森に赤い鳥が映え、実に美しい・・・それだけに土谷氏は、 「この鳥にはまるとなかなか抜け出せない」という。
 土谷氏が奥森吉のクマゲラの第一発見者・故泉祐一さんに「野鳥写真のキモ」を聞くと、「アイキャッチだよ」と答えたという。アイキャッチとは・・・生き物の写真を撮る時、眼に光がある方が断然イキイキとした画像になる。これを 野鳥撮影の専門家たちは、「アイキャッチ」という。野鳥撮影は、シャッターチャンスを待つだけでも大変なのに、じっくりアイキャッチを確認しながら撮るとは・・・ス・ゴ・イ。
深山の野鳥観察「仁別」

 旭川沿いの藤倉水源池から仁別国民の森までの渓流区間は、ヤマセミ、アカショウビン、カワセミ、オオルリ、キセキレイなどの探鳥を楽しむことができる。探鳥適期は、5月の連休頃から7月頃まで、山の鳥、渓流の鳥が盛んにさえずっている。
北秋田市奥森吉で撮影されたアカショウビン「驚きの食事法」(NHKクリエイティブ・ライブラリー)

 捕えた小魚を止まり場に運ぶと、左右に振るようにして枝に叩き付ける。息の根を止めても、さらに念入りに叩き付け、骨をバラバラに叩き折った後、頭から一気に呑み込む。これは、骨を砕いて食べやすくするためだといわれている。
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「山渓フィールドブックス4 野鳥」(浜口哲一ほか、山と渓谷社)
「秋田の野鳥百科」(小笠原こう、秋田魁新報社)
「あきた探鳥ガイド」(日本野鳥の会秋田県支部編、無明舎出版)
「秘伝! 野鳥撮影術」(文一総合出版)
「火の鳥 アカショウビン」(嶋田忠、平凡社)
「鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ編著、主婦と生活社)
「日本野鳥歳時記」(大橋弘一、ナツメ社)
写真提供 土谷諄一 参考プログ「Photo of Akita