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野鳥シリーズ⑤ コミミズク

野ネズミハンター・コミミズク(フクロウ目フクロウ科)

 コミミズクは、「野ネズミハンター」の異名を持ち、農家にとっては、害を与えるネズミを退治してくれるありがたい鳥である。フクロウ類の中で異質な点は、森林ではなく草原のフクロウ類であること、冬鳥であること、夜だけでなく日中も活動することである。だからフクロウ類の中では、最もバードウォッチャーに親しまれている。

 フクロウの仲間だが、耳(羽角)があるのがミミズクで、ないのがフクロウ。コミミズクは、短い耳を持ち、顔は黒褐色で目の周りは金色。秋になると、シベリアから渡ってくる冬鳥。ほぼ全国に飛来し、海岸、河口、川原、干拓地、水田など広々とした草地で生活する。
見分け方

 ダルマのような体型と、夜目がきく猫のような目、りんごを割ったような輪郭をもつ大きな顔が目立つ。体の下面は白っぽく、焦げ茶色の縦斑がある。他のフクロウ類のほとんどは林に棲むが、コミミズクは草原に棲む。ほぼ同じ大きさのトラフズクは、耳が長く、目は赤橙色と、明確に識別できる。飛んでいる時は、下面が白っぽく見え、ノスリなどのタカ類と間違えられやすい。
フクロウ類は縁起の良い鳥

 フクロウは、苦労しない「不苦労」、あるいは福を呼ぶ「福来郎」、豊かに年をとる「福老」など、その語呂合わせから縁起の良い鳥とされている。また、夜目が利くことから、「先を見通し未来を切り開く力がある』とされ、「森の賢者」とも呼ばれている。
・・・越冬期は、ほとんど鳴かない。
全長38cm、翼開長99cm
生活

 日中でも活動するが、夕暮れが近づくと活発に活動を始める。1mもある大きな翼を広げ獲物を探す。飛ぶ時に音をたてないので、獲物に気づかれない。葦原や草原の上を低く飛び、停空飛翔しながら、主にネズミを捕る。夕方、活動前のウォーミングアップしている時に、胃の中で消化されなかった骨や毛などを吐き出すことが多い。
飛ぶときに羽音がしない秘密

 フクロウ類の風切羽の縁は、くしの歯のようにギザギザになっていて、飛翔時に空気の渦が細かくなり、大きな羽音が出なくなる。だからコミミズクは、獲物に対して音もなく空から襲いかかることができる。これが野ネズミハンターと言われる最大の武器である。こうしたフクロウ類の羽の秘密は、消音が大きな課題になっていた新幹線にも応用され、静音高速化に大きく貢献している。
縄張り(上の写真:コミミズク VS チョウゲンボウ)

 広い場所で何羽か越冬する場合は、近くに来た個体を追い払ったり、「ギャッ」と鳴き声を発して威嚇し、自分のテリトリーを守ろうとする。両方の羽を体の下で激しく打ちつけると、大きな音がするので、侵入者を追い払うことが出来る。
 翼は細長く、よく開けた環境をゆっくりと飛び回るのに適している。飛行中も頭を動かし、周囲に気を配りながらエサを探し続ける。方向転換も自由自在。水田の上空数mの高さから野ネズミを見つけると、地面に急降下して捕獲する。時には、空中でホバリングの状態から捕まえることもある。 
 他のフクロウ類よりも昼間飛び回ることが多く、杭や石の上などにとまって、グルリと首を回して辺りを警戒する姿を見ることができる。
 草や低木の茂みをネグラとし、数羽が集まることもある。そのネグラ周囲には、不消化物を吐き出したペリットが山ほど見つかることがある。春になると、子育てのためシベリアに帰っていく。
狩りはうまいが、けんかは弱い

 上の写真は、コミミズク VS チョウゲンボウ・・・勝ったのは左のチョウゲンボウ。ネズミを捕るのはうまいが、トビやノスリなどにも、ことごとく獲物を横取りされてしまう。他の鳥とのけんかは、どうも弱そうだ。
 雪がコミミズクの顔にまとわりつき、それを嫌がるので、結構忙しく雪を振り落とす。上の写真は、その雪の量が限界に達した瞬間を撮った一枚。雪化粧したコミミズクも可愛い。
▲これで隠れたつもりらしい。猛禽類とは思えないほど可愛い。その愛らしい顔は猫のようにも見える。
八郎潟のコミミズク

 八郎潟干拓地の草原や田んぼ、県立大学実験農場には、コミミズクやチュウヒ、チョウゲンボウ、オオタカ、ノスリ、ハヤブサなどが見られ、特にコミミズクは夜行性だが日中でも飛び回ることが多い。
  • 参考動画:今シーズン初撮りのコミミズク(2024年2月) - YouTube
参 考 文 献
写真集「フクロウ」(大沢八州男・叶内拓哉・山本純郎、文一総合出版)
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
「野鳥観察図鑑」(杉坂学、成美堂出版)
「山渓フィールドブックス④ 野鳥」(浜口哲一ほか、山と渓谷社)
「日本野鳥歳時記」(大橋弘一、ナツメ社)
写真提供 土谷諄一 参考プログ「Photo of Akita