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野鳥シリーズ⑥ シマフクロウ

村を守る神として崇められているシマフクロウ(フクロウ目フクロウ科)

 シマフクロウは、野鳥ファンはもちろん、多くの自然愛好家たちにとって憧れの鳥である。その理由は、世界最大のフクロウであること、生息数がわずか百数十羽と少なくなかなか出会えないこと、自然の豊かさを象徴する鳥であること、昔からアイヌの人々に村を守るコタンカムイとして崇められていること。

 その神々しい姿は、しばしば登山やアウトドア関連のカラーページにも登場している。日本では、北海道の原生林に留鳥として棲息。天然記念物、絶滅危惧種1A類、国内希少野生動植物種に指定されている。最近では、シマフクロウが撮影できる温泉宿として中標津町「養老牛温泉」、羅臼町「民宿鷲の宿」が多くの人を集めている。
見分け方

 二歳児ぐらいの大きさがあり、他のフクロウ類と見間違うことはない。同じくらいの大きさのワシミミズクは、橙色の目をしているが、シマフクロウは黄色の目をしている。全体に灰褐色で、黒い縦斑が並ぶ。頭の上に耳のように見える羽角をもつ。

全長71cm、翼開長175~185cm


 オスは、ボーボー、メスはボォーォッ。これに強弱のアクセントが加わり、誰が聞いても違いは分かる。
ネグラ

 シマフクロウは、魚類を主食としているため、巣もネグラも水辺に近い所を使用する傾向がある。ネグラの環境は、水辺に近い比較的明るい森、特にミズナラやハルニレなどの広葉樹林を好み、その森の規模は大きいほど、樹齢は高いほど良いといわれている。ネグラは、ほとんどが樹木。止まる位置は、地上高20cm~50cm。幹にピッタリ寄り添って木と一体化している。止まっている位置の前方10mぐらいは、小枝などの障害物がなく、飛行しても障害にならない場所を選んでいる。
ハンティング

 主に日没から夜明けまでの間に行われる。川や湖岸で魚影を見つけると、樹上から音もなく舞い下りて、サケ、マスなどの魚を指足の爪に引っ掛けて捕食する。繁殖期と冬期は日中でも盛んに行う。日中のハンティングが最も多いのは、幼鳥の孵化後1ヵ月から巣立ち後1ヵ月の期間である。
  1. 水深が20~30cmと浅い場合・・・待機する場所は、水面に張り出した倒木や岩などを利用し、獲物の出す音、姿を耳と目の両方で追う。6m以内に獲物を発見すると、すぐに飛び掛かり水底で獲物をおさえる。獲物は、カワガレイ、ウグイ、スナヤツメ、カワヤツメ、カラフトマス、サケ、カジカ、ギンポ。
  2. 水深が50cm以上と深い場合・・・待機する場所は色々で水辺の低木、倒木、岩など、いずれも水面から1~3mの高さ。獲物が水面近くに姿を現すと、すぐに飛び立ち水中に足だけを入れて捕え、そのまま地上や樹上に運ぶ。獲物は、サケ、カラフトマス、サクラマス、アメマス、ウグイ、カワヤツメ。
冬期のエサ

 川が結氷したり魚類の動きが少なくなるので、主にネズミ類、鳥類。河川などで翼を休めるカモを発見すると、その場から一気に飛び掛かる。カモも水上を逃げるが、そのまま追尾し捕獲する。擬傷するカモにひっかかり失敗することもあるらしい。雪が解け、河畔に水たまりができると、カエルが集まって産卵する。この時期は、カエルを集中して捕食する。
飛行

 飛行は、主に羽ばたきと滑空の繰り返しで、一般に数回羽ばたき20m~30mほど滑空し、また羽ばたく、この繰り返しで飛行している。上昇気流に乗ることもあるが、空高く舞い上がることはなく、切り立った川岸を30mほど上昇するだけである。
水浴

 水浴は、全てのフクロウ類が行うが、特にシマフクロウは、エサの関係で水に入ることが多く、簡単な水浴を含めると他のフクロウ類より水浴回数は多い。水浴場所は、流れがほとんどない浅瀬、水たまりである。
巣と産卵

 オスは、巣となる樹洞とエサの豊富な所を見つけると定着し、メスの飛来を待つ。テリトリー内には、営巣可能な樹洞が必ず複数ある。どの穴に入るかは、産卵直前に決定する。オスが最初に入り産座をつくる。その後メスが入り、手直しをする。産座は、すり鉢型で、深さは20cmを超えるものもある。

 産卵は、2月初旬と早い例もあるが、一般的に3月初旬から中旬。約36日で孵化し、その後50数日間巣に留まり巣立ちする。抱卵から巣立ちまでの期間のエサは、ほとんどがオスによって運ばれる。ハンティングの上手なオス親であれば、幼鳥の生存率は高い。
求愛給餌

 シマフクロウは、1年を通してツガイでテリトリーを作り行動している。だから、繁殖期だけ一緒になる他のフクロウ類に比べて求愛給餌の重要性は少ない。求愛給餌は、オスがメスの下へ飛行して行う場合と、メスからオスの下へ飛来して、給餌を受ける場合がある。
巣立ち

 巣立ち後1ヵ月ほどは、まだ幼いので親鳥が終始見守っている。この時期の幼鳥の食欲は旺盛で、オスは、夜間だけでは足りず日中もハンティングをする。オスがハンティングする範囲は、幼鳥から近い500m以内で行っている。孵化後、半年ぐらいで自力で生存できるくらいに成長する。すかさずテリトリーから追い出しにかかる親もいれば、過保護で、エサをねだればいつまでも給餌する親もいるという。シマフクロウも十羽十色ということか。
最高のカムイ(神)

 アイヌ民族は、たくさん存在する神の中でシマフクロウを最も地位の高いカムイ(神)として崇めている。それは何故なのだろうか。「シマフクロウ」の著者・山本純郎氏によれば・・・アイヌ民族は、多数の動物が生息し、サケなどの産卵場所が近くにあり、木の実などがたやすく手に入る場所を選んで村を形成した。そうした村の森は、ミズナラなどの林内が想像されるが、こうした環境は、シマフクロウが好んで棲む環境である。

 「夜な夜な大きな声で啼き、その声は人々の恐怖心をあおったことだろう。しかし住んでいる所が同じであることから、やがてそれが高じて村に忍び寄る悪魔を追い出すという逆の発想となったことは充分考えられる。・・・魚を捕って食べても身の部分はほとんど食べずに置いていく。加えて卵は食べないため人々に食べ物を恵むものとして印象づけたのだろう。

 また・・・飛行時には羽音をたてて、風をおこす。シマフクロウはその存在を人の目、耳、そして身体全体で感じさせ、さらに翼を広げると2m近くにもなる巨大さも神になり得た理由ではないだろうか。」
動画「シマフクロウ 睡魔と格闘中?」(NHKクリエイティブ・ライブラリー)
参 考 文 献
「シマフクロウ」(山本純郎、北海道新聞社)
写真集「フクロウ」(大沢八州男・叶内拓哉・山本純郎、文一総合出版)
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
「野鳥観察図鑑」(杉坂学、成美堂出版)
写真提供 土谷諄一 参考プログ「Photo of Akita