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野鳥シリーズ⑦ キ ジ(雉)

彩り鮮やかな日本の国鳥・キジ(キジ目キジ科)

 オスは赤い顔と緑色の金属光沢がある胸が目立ち、羽を広げると素晴らしくゴージャスな日本の国鳥。ヤマドリが深山にいるのに対し、比較的里に近い農耕地周辺に生息していることから、「里キジ」とも呼ばれている。柿の実やガマズミの実を樹上で食べているのをよく見かける。本州~九州に留鳥として棲息し、狩猟用に飼育鳥の放鳥が行われている。
見分け方(写真:メスの舞い)

 近縁種のヤマドリは、山中の林に棲む。メスは、ヤマドリのメスに似るが、赤みが淡く、尾羽が長い。オスは、赤いハートを横にしたような形が特徴で、後頭部に短い冠羽がある。北海道、対馬に放鳥されている朝鮮半島原産のコウライキジは、体色が橙褐色で、首に白い輪がある。メスは、キジに似るか、やや白っぽい。


 繁殖期のオスは、「ケーン、ケーン」と鋭く鳴き立て、翼を激しく震わせて「ドドドド」という羽音を立てて縄張りを宣言し、複数のメスと繁殖する。飛び立つときは、「チョケン、チョケン」と鳴くことが多い。メスは、「チョッチョッ」と低い声で鳴く。
全長オス81cm、メス58cm、翼開長77cm
生活

 ヤマドリよりも開けた環境に棲息し、平地~山地の草原、田畑、河川敷などに見られる。主に地上を歩いて草の葉や実、昆虫、クモなどを食べる。春になると、オスは草地を中心に直径400mほどの縄張りをもち、小高い盛土の上のようなところでその宣言をする。数羽のメスのグループがオスの縄張りの幾つか回って歩く。
求愛の母衣打ち・ディスプレイ

 繁殖期になると、オスは「ケン、ケケーン」と叫ぶように鳴き、翼を素早く羽ばたかせてブルッブルッと羽音を出す。これは、メスを呼ぶ求愛行動で「母衣打ち」という。メスが寄って来ると赤い顔を膨張させて頭を下げ、翼を半開きにし、さらに尾羽の上面を彼女の方に向けて扇状に開き求愛のディスプレイをして交尾を迫る。キジの仲間では多妻や乱婚は珍しくない。
  • 動画「キジの求愛ディスプレイ」
 巣は、地面を浅く掘って、枯葉を敷いて6~12卵を産む。産卵期は4~7月。抱卵日数は23~25日ぐらい。オスは子育ての手伝いを一切しない。抱卵は、メスだけが行う。メスの地味な羽色(黄褐色に黒の斑模様)は、外敵から発見されにくいカモフラージュになる。ヒナは、生後間もなく親について歩くようになる。ヒナは生まれて間もなく立ち上がって歩き出し、母親の真似をして草の芽をついばんだりする。
▲非繁殖期には、オス同士、メス同士の群れで生活していることが多い。夜は樹上で眠る。
 キジの胸板は厚く、肋骨と筋肉が発達しているので飛翔はできるが、高く飛べるわけではない。せいぜい数百mを飛んで沢を渡ったり、樹上に飛び上がったりする程度。
擬傷行動

 ヒナを連れたメスは、敵に気付くと、ケガを装って敵を引き付ける擬傷行動をとることが多い。その間、ヒナは草陰などに身を伏せて隠れる。オスとメスが一緒にいる時、敵に出会うと、派手な色のオスは、さらに声をあげて敵を引き付け、メスを逃がすような行動をとることもある。
▲おとぎ話「桃太郎」に出てくる勇ましいキジを連想させる歩き方
日本の国鳥選定の理由(写真:高清水公園)
  1. 日本の固有種で、全国的に通年見られ、昔から親しみ深い鳥であること。
  2. オスの羽色が鮮やかで美しく、姿が立派。メスは子どもを守る母性愛が強いこと。
  3. 大型で肉の味がよく、狩猟の対象として好適であること。
俳 句・・・雉、雉子は春の季語

父母のしきりに恋し 雉子(キジ)の声 松尾芭蕉
雉子鳴くや子よりも妻の恋しき日 大串 章
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
「野鳥観察図鑑」(杉坂学、成美堂出版)
「秋田の野鳥百科」(小笠原こう、秋田魁新報社)
「鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ編著、主婦と生活社)
「日本野鳥歳時記」(大橋弘一、ナツメ社)
写真提供 土谷諄一 参考プログ「Photo of Akita