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野鳥シリーズ⑩ ハヤブサ

野鳥最速のハンター・ハヤブサ(ハヤブサ目ハヤブサ科)

 ハヤブサの急降下は最速で時速300km・・・速さを象徴する鳥で、戦闘機や新幹線、人工衛星にも「ハヤブサ」の名前が借用されているほど。そのため、狩りには障害物のない広い空間が必要である。繁殖も高い崖の中腹で行う。そんな条件を満たす場所は、海沿いの岩場や岩壁に集中している。主に高い岩の先端や木の梢に止まり、獲物を待ち伏せる。獲物は小さな小鳥からハトくらいの大きさまでの鳥類。時には、カモメ類やカモ類、サギ類など、自分より大きな獲物を捕らえることもある。つがいは非繁殖期でも営巣地を守るために余り遠出をしない。
見分け方(上の写真は成鳥)

 成鳥は、喉から体下面は白く、黒い横縞模様が密にある。頭部から体上面が青みのある灰色で、目から頬にかけて特徴的なヒゲ状斑がある。ハヤブサ類は、翼先の尖った飛翔形を持つが、本種は翼幅が広く、胴が太く見える。
幼鳥は、体下面に縦の黒い斑が並ぶ。
全長 オス42cm メス49cm 翼開長84~120cm・・・つがいでいる場合、雌雄の違いは体格の大小で判断する。小さい方がオスで、大きい方がメスである。
ハンティング

 ハヤブサは、高い位置から一気に下降する速度が時速300km・・・野鳥「最速のハンター」と呼ばれるだけに、猛禽類の中では一番獲物にありついている機会を見ることが多いという。上の写真は、自分よりもデカイ獲物を捕まえて必死で飛んでいるところ。まさに「野鳥最速のハンター」と呼ぶにふさわしいベストショットだ。

 ハヤブサは、崖の上や樹上などの見張り場で獲物を見つけると、飛び立ち、急降下して、飛んでいる鳥を脚で蹴落として襲う。特にハトの仲間は飛翔力が高いので、ハヤブサの攻撃をかわして逃げ切ることも多い。それでもハヤブサは諦めず、執拗に相手を追い詰め続け、疲れたところを一気に襲い掛かり、獲物を捕らえる。
 春と秋は、渡り鳥が通過する季節で、最もエサの豊富な季節である。沖合で、陸に向かって低空飛行するヒヨドリの群れを見つけると、待ち伏せて、突っ込む。群れは乱れ、はみ出した1羽がハヤブサの脚に捕らえられる。
▲上昇中のオス、岸壁頂上の岩陰にメスがいる。

オスとメスの連係プレーによる頭脳的な狩り

 「キッ」という合図でオスとメスが共に飛び出し、追い詰める役と仕留める役に分かれる。追い詰め役が獲物を脚で蹴落とし、弱って飛び立とうとしたところを仕留め役がキャッチするという、なかなか頭脳的な狩りもする。
▲解体した肉片を口にくわえて飛び出すオス

求愛給餌と空中エサ渡し

 2月中旬~3月中旬、繁殖の季節になると、ハヤブサの求愛の声が岩礁に響き渡る。メスの「キィーキィー」とエサをねだる声が急に騒がしくなる。オスは、その声に応えるように捕えた獲物をメスにプレゼントする。その際、空中でのエサ渡しはハヤブサの得意技らしい。メスはオスの下へ、相手の動きに合わせて落とされた獲物を口や脚で曲芸のように上手に受け取ることができる。さすがは野鳥最速のハヤブサらしい求愛給餌だ。
▲羽を除いて全て食べ尽くしたハヤブサ。

貯食・・・ハヤブサは、エサをすぐには食べずに、岩の隙間や草の茂みに隠す貯食という習性がある。その行動は繁殖期に特にみられる。
交尾

 メスは少し前かがみで両肩を少し上げ、甘えた声で鳴きオスを誘う。オスは前かがみになり、お尻を少し上げたメスの背面から交尾する。
▲上が成鳥、下が幼鳥

産卵から子育て

 2~4個の卵を産み、抱卵に入る。抱卵は主にメスだが、オスも交替で卵を抱く。約1ヵ月抱卵すると、孵化する。孵化してから10日ほど経つと、白い綿毛に包まれヨチヨチ歩きを始める。3週間目に入ると、ヒナは巣の周りの岩棚を歩き回って崖の下をのぞき込んだりしながら外敵を警戒するようになる。ハヤブサの天敵はカラス、トビ・・・カラスは、メスが巣を離れた一瞬の隙を突き、ヒナを襲うこともある。
幼鳥の飛び立ち

 ヒナが成長して食べ盛りになる頃、渡り鳥のシーズンが終わる。親は、エサを求めて遠出を繰り返すようになる。孵化後4週目を過ぎると、綿羽から幼羽へと衣替えし、立派な幼鳥へと変身する。羽ばたきの練習をしたりすると、勢い余って巣から転落する場合も少なくない。親は、落下した幼鳥にエサを運ばないので、自力で這い上がるしかない。約40日ほどすると巣立ちとなる。最初の1羽が巣を離れると、数日の間に次々と飛び出してゆく。親は、エサを地上で与えることが少なくなり、空中でエサ渡しをするようになる。こうして飛翔訓練を繰り返す。
▲飛び立ちその2
鷹狩り

 鷹狩りで使うタカは、獲物や場所によって違うが、オオタカやハイタカ、ツミ、ハヤブサ、クマタカ、コチョウゲンボウを使う。そのうちハヤブサは、飛ぶスピードがワシタカ類で一番速く、空を羽ばたく鳥類、鴨や鳩などを獲る時に使用された。高い空から獲物を見つけると、流線型のボディとぐいの後方に反った三日月刀型の翼を最大限に生かして、飛翔中の獲物に急降下し懸爪で蹴落とす。
▲かゆそうです。こんな可愛い仕草も・・・。
大都市の高層ビル街にも進出

 最近は、大都市に林立する高層ビルが、断崖絶壁に、ビルの壁面に沿って走る上昇気流も、ハヤブサに好都合らしい。さらに丸々太ったハトが大量に生息している。だからハヤブサは、東京や札幌などに進出して、ハヤブサの都市化が進んでいるという。
▲動画「ハヤブサのヒナ 崖の巣で鳴く」(NHKクリエイティブ・ライブラリー)
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
「ぱっと見わけ観察を楽しむ 野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
「ハヤブサ」(吉野俊幸、文一総合出版)
「ハヤブサ」(小林正之・五百沢日丸、文一総合出版)
「鳥の博物誌」(国松俊英、河出書房新社) 
写真提供 土谷諄一 参考プログ「Photo of Akita