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野鳥シリーズ⑪ チゴハヤブサ

小さなハヤブサ・チゴハヤブサ(ハヤブサ目ハヤブサ科)

 ハヤブサよりも小さいのが和名の由来。毎年4月の終わりから5月の初め頃、越冬地であるインド北部や中国南部から繁殖のため、北海道と東北北部にやってくる。9月末~10月中旬の渡り期になると、各地で観察される。成鳥は、すね毛と下腹が赤茶色であることが大きな特徴。額から頭部、体上面は濃い青灰色で、頬から体下面は白く、胸以下には黒く明瞭な縦の斑がある。雌雄同色だが、オスはメスよりも小さく、体の下面がより白い。
見分け方(写真:四方を見渡せる秋田スギから飛び立つ成鳥)

 姿形はハヤブサに似るが、識別のポイントは、下腹の赤茶色。若鳥では、この赤茶色はないが、胴が細く、閉じた翼の先が尾の先を超える。飛翔形はハヤブサよりスマートで、アカツバメに似ている。
▲幼鳥・・・成長に伴い赤みを帯びる。
全長 オス34cm メス37cm 翼開長72~84cm


 繁殖期以外はほとんど鳴かない。繁殖期になると、親鳥は「キュッキュッキュッ」と警戒するように鳴く。若鳥も同じような声で鳴くが、やや弱い感じで鳴く。
▲セミをくわえて電柱から飛び立つ親鳥の飛翔

ハンティング

 平地の疎林に棲み、周辺の耕地や原野などの広い空間で狩りをする。速くて深いはばたきと滑翔を交えて直線的に飛び、飛翔中の小鳥を急降下して襲ったり、逃げ惑う鳥を急旋回して追い掛ける。捕らえた鳥は一定の食事場所へ運んで食べる。
▲普段エサとなるトンボをじっと見つめる。

トンボを飛びながら食べる

 秋の渡り時には、乱舞するトンボを飛翔しながら足で巧みに捕らえる。捕らえたトンボを足で口に運び、飛翔しながら食べる。子育て時に、オスがなかなか小鳥を捕らえてこないと、メスは盛んに飛び回るトンボも捕らえて幼鳥に与えたりする。
▲親鳥(左から2番目)と幼鳥3兄弟

繁殖地

 東北では主に寺や神社で繁殖する場合が多い。カラスは利口な鳥だから、外敵の少ない寺や神社のスギの大木などに営巣する。チゴハヤブサは、自ら巣をつくらず、そのカラスの古巣をリサイクルする場合が多い。まだカラスが使っていた場合は、巣を乗っ取る場合もあるという。5月末~6月、2~4卵を産む。抱卵日数は約28日、巣立ちまでの日数は約30日。
▲幼鳥(左)に頻繁にエサを運ぶ親鳥(右)

子育て時のエサ・・・巧みな戦略

 チゴハヤブサが抱卵に入るのは、多くの小鳥たちが既に子育てに忙しい5月末から6月と遅い。この鳥の繁殖が他の鳥より遅いのは、子育て時のエサである。そのターゲットは、まだ飛行が未熟な小鳥の若鳥たち・・・一見、実に巧みな戦略で進化したかに見える。しかし、梅雨の時期に子育ては大変。メスは、雨に打たれながら卵を抱き、孵化した後もヒナたちは激しい雨にさらされる。巣立ちの頃は、夏の厳しい暑さの真っただ中。子どもたちに与えるエサはたやすく手に入っても、子育て環境は厳しい。 
▲飛びたくてもなかなか飛べない幼鳥
参 考 文 献
「ハヤブサ」(小林正之・五百沢日丸、文一総合出版)
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「ぱっと見わけ観察を楽しむ 野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
「野鳥観察図鑑」(杉坂学、成美堂出版) 
写真提供 土谷諄一 参考プログ「Photo of Akita