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野鳥シリーズ⑭ チョウゲンボウ

ホバリングで獲物を捕らえるチョウゲンボウ(ハヤブサ目ハヤブサ科)

 ホバリングを頻繁に行う尾の長いハヤブサ類。ハヤブサに比べスマートで、飛ぶ姿はハトを思わせる。広い農耕地や河川敷などの上空でホバリングしている姿をよく見かける。主に河川や海岸の崖の岩穴で営巣していたが、最近は、鉄橋や鉄塔、ビルなどでも営巣するようになった。長野県中野市の十三崖は、チョウゲンボウの集団繁殖地として天然記念物に地域指定されている。
見分け方

 尾が長く、翼の先があまり尖っていない。ヒラヒラ飛び頻繁にホバリングをするので見分けられる。オスは、頭と尾が灰色で背面は茶色、メスは上面が茶褐色で一面に黒色の横斑がある。


 繁殖期以外ほとんど鳴かない。繁殖期になると、オスは「キィキィキィキィ」と細い声で鳴き、メスは「ピィピィピィー」あるいは「クィクィクィクィ」と鳴く。給餌の時には、「ピィーピィーピィー」と優しい声を出す。
全長 オス33cm メス38cm 翼開長69~76cm
ハンティング

 チョウゲンボウは、草原や田畑、川原、干拓地などの開けた場所で、しばしば木や杭などの見張り場に止まっている。狩りは、長い間ホバリングが見られるのでおもしろい。広い水田地帯や干拓地のように止まる場所がない所では、ホバリングが捕獲効率をアップさせる重要な戦略・・・地上の獲物を探し、場所を変えながらホバリングを繰り返す。獲物を見つけると、ホバリングしながら徐々に高度を下げ、最後はストンと落ちるようにして獲物を捕まえる。次々と獲物を捕まえては草藪の根元に隠す貯食という行動もする。

 獲物は、主にネズミを捕食するが、ヒバリやスズメなどの小鳥類、トンボやセミ、バッタなどの昆虫類も食べる。
 4月初旬頃、海岸や川岸の断崖の横穴、岩棚、樹洞などに直接4~5卵を産む。カラスの古巣や建物の隙間を利用した例もある。抱卵日数約30日、巣立ちまで約30日。
▲新緑とチョウゲンボウ
奇妙な名前の由来

 漢字で「長元坊」とは、奇妙な名前である。その名の由来には諸説ある。
 数年続く凶作のため飢餓で苦しんでいた村に、旅の僧 「 長元坊 」 がやってきた。僧は人々の苦しみを目にすると、村を見下ろす岩山に登り中腹の岩棚に座して祈りはじめた。そして、村を救った後に亡くなる。翌年は、村が始まって以来の大豊作・・・以来、秋になると、作物の出来を確かめるように田畑の上でホバリングしている鷹がいた。それに気付いた村人たちは、その鷹をいつしか 「 長元坊 」 と呼ぶようになったという。
 もう一つの説は、南北朝時代、「長元」という戒律を破った僧侶が、道端でネズミやモグラを捕まえて食べていた。この僧侶に背格好が似ていることに加えて、食べ物が同じなので「長元坊」という名前になった等々・・・一方、チョウゲンボウは、ネズミなど人間には無用なものしか捕らないから、鷹匠が狩りに使えない鷹であった。このため、役に立たないという意味で「馬糞鷹」と蔑視された異名もある。
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「野鳥観察図鑑」(杉坂学、成美堂出版)
「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
「原野の鷲鷹 北海道・サロベツに舞う」(冨士元寿彦、北海道新聞社)
「ハヤブサ」(小林正之・五百沢日丸、文一総合出版)
写真提供 土谷諄一 参考プログ「Photo of Akita