野鳥シリーズ⑯ ウグイス |
春を告げる鳥・ウグイス 春の鳥の中でも最も親しまれている。「ホーホケキョ」のさえずりで、その年初めての鳴き声を「初音」といい、それを聞けば、春の訪れを感じることから「春告鳥」と呼ばれている。オオルリ、コマドリとともに日本三鳴鳥に数えられている。留鳥または漂鳥として全国に分布し、北海道や本州北部に生息する個体は、冬季に暖かい地方に移動する。 |
正岡子規・・・春を告げるウグイス(鶯)の詩 (写真:2016年4月21日撮影、クリプトンの森) 鶯やとなりつたひに梅の花 鶯の松にとまりて春ぞ行く 鶯の覚束なくも初音哉
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見分け方 体を倒して水平に止まるポーズが特徴。体の上面は茶褐色、下面は淡い灰色。同じウグイス類より大きく、尾も長い。鳴き声でも簡単に識別できる。雌雄同色だが、オスの方が一回り大きい。 |
全長 オス16cm メス14cm 翼開長18~21cm |
声 (写真:2016年4月20日撮影、秋田市植物園) 「ホーホケキョ」と鳴くのは、繁殖期のオスだけ。地鳴きは、「チャッチャッ」という舌打ちのような声で「笹鳴き」と呼ばれている。警戒した時などは、「ケキョケキョケキョ・・・」とけたたましく鳴き続ける「谷渡り」と呼ばれる鳴き方をする。これは、他のオスに対して「俺の縄張りに入るな」という強い警告である。その際、尾羽を上下させ、左右に首を振りながら鳴く。 |
ウグイスの名の由来(写真:無料写真素材集より) 江戸時代以前の鳴き声は、「ウ-、グイ」と鳴く鳥だったらしく、その鳴き声が名前の由来であるとする説がある。「ウグイス」「カラス」「ホトトギス」のように、語尾の「ス」は鳥を意味する古い接尾語である。 |
生活 適応能力が高く、人家近くの林から亜高山帯まで広範囲に生息する。繁殖期の生息環境は、林の下生えにササが密生しているところ。笹薮さえあれば、木が全くない所にも生息する。藪の中を枝移りしながら活発に移動し、葉にとまる昆虫などを捕らえる。低木の枝やササの上に、枯葉などで横に入り口のある球形の巣をつくる。 産卵期は5~6月、4~6卵を産む。抱卵日数は14~16日、巣立ちまでは約14日。しばしばホトトギスに托卵される。越冬期には、市街地の生垣などにもよく現れ、木の実も食べる。 |
縄張りと花嫁募集 オスは、直径200mほどの範囲でさえずり、縄張り宣言と花嫁募集をする。メスがやってきてツガイになったと思うと、また別のメスを求めてさえずりを続ける。こうしてオスは、6~7羽のメスとツガイになることがある。だから、さえずる期間が長く、9月にまで及ぶことがある。 オスは、盛んにメスを獲得しようとするだけで、子育てには全く参加しない。1羽のオスの縄張りの中に、メスの数だけ巣がつくられるが、その巣づくりから抱卵、育ヒナまでメスだけで行う。だから時々留守になりがちで、ホトトギスなどの托卵鳥には格好のターゲットになっている。オスは一夫多妻だが、メスは次の繁殖の時は別の縄張りへ移る。これも遺伝子の多様性を維持する戦略なのであろう。 |
日本三鳴鳥 日本の鳥の中で、さえずりが最も美しい鳥三種は、コマドリ、オオルリ、ウグイス。中でも風雅なさえずりのウグイスは、古くから飼養してその声を楽しむ人が多かった。江戸時代の寛永年間には、ウグイスの飼育担当の職があったほど。飼養したウグイスを持ち寄り、鳴き声の優劣を競い合う集まりを「鶯合せ」「鳴き合せ」「鶯会」といった。また日本人にとって親しい鳥だけに、昔話にも多く登場している。ちなみに十和田湖では、日本三鳴鳥の三種を見ることができる。 |
高い飼育技術 さえずりが殊の外美しいので、古くから飼育マニュアルが文献としてまとめられていた。だから、江戸時代には、既に日本の鳥の飼育技術は世界屈指の高いレベルに達していたという。 |
俳 句 鶯の言い換えの季語として、春告鳥、初鶯、初音、鶯の谷渡り、鶯笛などが使われる。 鶯の笠落したる椿かな 松尾芭蕉 鶯や餅に糞する縁のさき 松尾芭蕉 眼前の梅に鶯初音とは 上崎暮潮 |
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参 考 文 献 |
「鳥の博物誌」(国松俊英、河出書房新社) 「俳句歳時記」(角川学芸出版編、角川ソフィア文庫) 「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社) 「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ) 「鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ、主婦と生活社) 「野鳥観察図鑑」(杉坂学、成美堂出版) 「ぱっと見分け 観察を楽しむ 野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社) 「あきた探鳥ガイド」(日本野鳥の会秋田県支部編、無明舎出版) 「日本野鳥歳時記」(大橋弘一、ナツメ社) 写真提供 土谷諄一 参考プログ「Photo of Akita」 |