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野鳥シリーズ⑱ ツバメ、ニュウナイスズメ

INDEX ツバメ ニュウナイスズメ
  • 人のそばで子育てするツバメ(スズメ目ツバメ科)

     ツバメの飛翔力は極めて高く、時速200km。長距離の渡りをするために翼も少ないエネルギーで大きな揚力が得られる構造になっている。エサとなる昆虫を空中で軽々と捕獲したり、食事、水浴びも飛びながら行うほど、鳥の中でも高い飛行能力をもつ。市街地から里山まで、民家や商店の軒先、ビルの軒下など、人が生活している環境に営巣する。春になると全国に飛来する夏鳥。
  • 見分け方・・・頭部から腰にかけての羽毛は、深い藍の金属光沢を見せる。これは羽毛の構造がつくる「構造色」。胸に濃紺の帯状斑、二股に分かれた燕尾形の尾があることから、「燕尾服の鳥」と呼ばれている。
  •  (写真:2016年5月13日撮影、大潟村)
     巣の近くの電線に止まって「チィチュロリ、チュリチュリ、ジュリリ」、時々濁った声を混ぜながら早口にさえずる。この声を「土食って虫食って、渋い」と聞きなす。
  • 全長17cm 翼開長32cm (写真:2016年5月13日撮影、大潟村)
  • 生 活

     ツバメは、農作物の生育上一番大切な時期に渡ってきて、農作物に害を与える虫を1日に数百匹も捕って食べてくれる。だから農業を営む人々に大切にされてきた。ツバメは、そんな人間の近くが安全なことを学び、農家などの軒先に巣をつくり、農と野鳥、人と野鳥が共生する鏡のような鳥になった。昔から軒先にツバメが巣をつくると、幸福をもたらすとか、魔除けに効果があるとされた。
  • 巣は、ワラや枯れ草、泥を材料につくられ、椀形をしている。産卵期は4~7月、卵数は3~7個、抱卵日数約13~18日、巣立ち日数約20~24日。エサは、空中を飛ぶ昆虫で、急旋回を交えた巧みな飛翔で捕らえる。(写真:無料写真素材集より)
  • 古来の風習(「野の鳥の生態」仁部富之助、大修館書店)  (写真:無料写真素材集より)

     「ツバメに家屋内に巣をつくることを喜んで許すだけでなく、この鳥の日常生活に特殊な関心をはらうこともわが国古来の風習である。しかも、この鳥に何か異変がおこると、それを吉凶いずれかの兆しとして喜憂する。これを迷信と言えば迷信に違いないが、ツバメを霊鳥視し、田園の守護者として保護するというよりも、むしろ祖先伝来、家族の一員とみなしてきた長い伝統にもとづくのであれば、これは深くとがむべきでないと思う。」
  • 俗説「継母の継子殺し」の真相(「野の鳥の生態」仁部富之助)(写真:2016年6月6日、大潟村)

     「ツバメの育雛期に、時として雛のことごとくが巣から放り出されることがある。これが伝承のいわゆる゛継母の継子殺し゛である。すなわち、雛の孵化後に雌親が不慮の死をとげた場合、雄親はまもなく後妻を迎える。だがその後妻は当初こそ神妙に先妻の・・・雛を養い続けるが、やがて自分が卵を産む時期になると雛が邪魔になるので、意地悪くも一羽残らず巣から放り出してしまうということである。」

     この俗説に疑問を持った仁部氏は、繁殖期の観察で「継母の継子殺し」の真偽を確認すべく、夫婦に標識をつけて観察している。その結果、真相は継母ではなく、無宿者の他の夫婦が巣を略奪するための暴力行為であることが判明・・・神聖視するツバメと言えども、厳しい生存競争から逃れられない運命にあると記している。
  • カラスがツバメの巣を襲うやり方(写真:無料写真素材集より)
     巣立ち直前のヒナが狙われることが多い。襲い方は・・・カラスは一旦地面に降りて、どう攻めるか悩むようにキョロキョロする。巣は高く狭い空間にあるので、ホバリングしながらヒナをくわえることはできない。だから、飛び上がって巣を足で蹴り、グシャッと下に落とす。落ちた巣でピーピー鳴いているヒナを持ち去るという頭脳的な襲い方をする。
ヨシ原をねぐらにしているツバメの大群(NHKクリエイティブ・ライブラリー)
  • 用語解説 夏鳥(なつどり)・・・春に南方から渡ってきて繁殖し、秋に南方へ渡る鳥。ツバメやキビタキなど。 (写真:2016年6月6日、大潟村)
ニュウナイスズメ
  • 頬に斑がないスズメ・ニュウナイスズメ

     越冬中は、スズメの群れに混じっていることがある。「ニュウ」とは、ホクロのことで、スズメの頬にある黒い斑をホクロに見立てて、黒い斑がないスズメというのが和名の由来。繁殖期には、ブナ、ミズナラなどの大木のある林を好み、樹洞に営巣する。産卵期は5~7月。非繁殖期には群れで生活し、水田やアシ原などに現れ、主にイネ科植物の実を食べる。

     オスは、頭部が栗色、頬は白く、体下面は淡い灰色。メスは、目の上横に明瞭な眉斑があるのが特徴。全長14cm、翼開長22cm。
▲ニュウナイスズメの群れ(2016年8月28日撮影、大潟村)
  • 巣穴を掘らせて奪う「労働寄生」・・・ニュウナイスズメは、樹洞に営巣するが、自ら木の幹に巣穴を掘ることができない。だから、キツツキ類が巣穴を掘っているところに目をつけ、ちょうど掘り終わる頃に巣穴を奪うことがある。こうした宿主の労働を搾取する形の行動を取ることを「労働寄生」あるいは「盗み寄生」という。 (2016年8月28日撮影、大潟村)
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
「野鳥観察図鑑」(杉坂学、成美堂出版)
「ぱっと見分け 観察を楽しむ 野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
「野の鳥の生態」(仁部富之助、大修館書店)
「野鳥 2013年4月号」(日本野鳥の会)
写真提供 土谷諄一 参考プログ「Photo of Akita