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野鳥シリーズ21 ハクチョウ(白鳥)

真っ白な冬の使者・ハクチョウ(カモ目カモ科)

 日本に飛来するハクチョウは、オオハクチョウとコハクチョウの2種。その名の通り、大形のハクチョウがオオハクチョウ、小形がコハクチョウ。生態も似ているので、ここでは厳密に区別せず、オオハクチョウを主体に記す。真っ白で首が長いことから、高貴にして優雅な印象を与える。冬鳥として本州以北の湖沼、河川、河口に渡来し、北海道、東北地方に多い。日中、大きな群れが田んぼに舞い降り、落ち穂などを食べている光景を見ることができる。
見分け方(写真:オオハクチョウ)

 オオハクチョウは、クチバシの黄色い部分が先端に食い込み大きいことでコハクチョウと見分けられる。コハクチョウは、クチバシの黄色い部分の面積が小さい。
▲コハクチョウ・・・黄色部の面積は、クチバシ全体の半分以下で先端が尖らない。


 水上や地上では、「コオー、コオー」と優しく鳴いてからお互いに首を上下させ、賑やかに「コホーコホー」と鳴き交わす。オスとメス、家族同士も「コーコーコー」と柔らかな声であいさつを交わす。飛翔中は、「グァーン」と少し濁った声で鳴くことが多い。((写真:あいさつのディスプレイ・・・翼を広げて鳴き交わす)
オオハクチョウ・・・全長141cm、翼開長225cm
コハクチョウ・・・全長120cm、翼開長177cm 
生活

 つがいと数羽の幼鳥からなる家族の群れが行動の単位で、それらの集団が数十羽から数百羽の群れをつくっている。内湾ではアマモ、湖ではアシ、ガマなどの水生植物の茎や根を主なエサとしている。繁殖地では、水辺の地上や浅瀬の枯れ草などで大きな巣をつくり、5~6卵を産む。
逆立ちして食べる

 みずかきを動かしてバランスよく逆立ちし、水底のエサを食べる。複数の個体が一斉に逆立ちすると、シンクロナイズドスイミングのようでおもしろい。
飛び立ち

 日本の鳥の中では、最も重く、飛び立つには長い助走が必要である。一方、着水はダイナミックで、急ブレーキをかけるかのように見える。
 
▲物凄い水しぶきをあげて滑走
オオハクチョウの渡りルート調査

 東京大学と米国の研究機関の共同調査で、オオハクチョウに衛星発信器を装着して渡りルートを追跡する調査が行われている。その結果によると、オオハクチョウの故郷は極東ロシアにあることが明らかになりつつある。

 また、伊豆沼・内沼で越冬するオオハクチョウの渡り経路の調査によると、サハリンやアムール川河口,オホーツク海北岸を中継し,コリマ川やインディギルガ川流域の湿地帯で繁殖していることが明らかになった。春の渡りでは,伊豆沼・内沼を出発したオオハクチョウは、86日をかけて3,800kmを移動して繁殖地に到着。秋の渡りでは,繁殖地から伊豆沼・内沼まで54日をかけて3,500kmを移動していることが分かった。
オオハクチョウの寿命は?・・・約15~20年と言われている。
白鳥伝説(写真:逆光のシルエット)

 全身真っ白の羽毛でおおわれた優美な姿は,いかにも霊鳥という印象を人々に与えた。古事記には、大和に帰る途中で倒れ亡くなったヤマトタケルの魂は、白鳥になって飛び去ったと記されている。この伝説にちなんだ白鳥神社が全国に数多く存在する。特に主要な飛来地である東北地方は、白鳥信仰の盛んな土地柄である。白鳥は穀霊神ともみなされ,白鳥を主人公とする「穂落し伝説」や,餅が白鳥に化して飛び去ったという伝説が各地に見られる。
餌付け禁止

 かつて横手市十文字町志摩の皆瀬川河畔では、長年の餌付けの効果で、県内最大のハクチョウ飛来地であった。同じく大館市長木川でも餌付けが行われ、多くのハクチョウを見ることができた。しかし、宮崎県や岡山県、熊本県で発生した「高原性鳥インフルエンザ」の予防対策として、2007年、野鳥への餌付けが禁止となった。

 かつて野鳥への餌付けは「美談」として語られる場合が多かったが、今では、野鳥も含めて「野生動物にエサを与えてはいけない」というのが常識になっている。
野鳥からの感染防止

 野生の鳥は、インフルエンザウイルス以外にも人に病気を起こす病原体を持っている可能性がある。だから、衰弱又は死亡した野鳥又はその排泄物を見つけた場合は、直接触れないこと。もしも触れた場合には、速やかに手洗いをすること。 特に、子供は興味から野鳥に近づくおそれがあるで注意! 
俳 句(写真:朝もやに佇む)

白鳥といふ一巨花を水に置く 中村草田男
白鳥の水脈ぐいぐいと山を引く 大串 章
生きて来し汚れ白鳥にもありし 今瀬 剛一
千里飛び来て白鳥の争へる 津田 清子
白鳥の暮色の中を辷り来る 星野 椿
火の鳥となる落日の大白鳥 古賀まり子
▲北帰行・・・2月下旬頃、白鳥は春の訪れとともに、シベリアへと帰っていく。
動画 飛び立つ白鳥(NHKクリエイティブ・ライブラリー)
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「野鳥観察図鑑」(杉坂学、成美堂出版)
「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
「あきた探鳥ガイド」(日本野鳥の会秋田県支部、無明舎出版)
「俳句歳時記」(角川学芸出版編、角川ソフィア文庫)
「別冊NHK俳句 季語100」(NHK出版)
「伊豆沼・内沼ハンドブック」(環境省 東北地方環境事務所) 
写真提供 土谷諄一 参考プログ「Photo of Akita