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野鳥シリーズ24 タンチョウ(丹頂)

湿原の神と呼ばれるタンチョウ(ツル目ツル科)

 日本最大のツル類で、アイヌ語でサルルンカムイ(湿原の神)と呼ばれている。北海道東部に留鳥として生息するが、それ以外の地域は稀にしか見ることができない。今世紀初めには絶滅したと言われていたが、1924年に釧路湿原で10数羽の生存が確認された。1953年以降、冬期の人工給餌によって個体数は徐々に増加。2014年度の調査では、1,187羽と過去最多を記録した。特別記念物、特殊鳥類。
大潟村のタンチョウ(写真:タンちゃん)

 国の特別天然記念物・タンチョウが、大潟村で2008~2010年にかけて2年連続して越冬したことがある。愛称は「タンちゃん」と呼ばれ、人気を博した。国内では、北海道を本拠地とするタンチョウが、本州で長期間にわたって生息することは極めて珍しいという。

 その後2010年6月に確認され、大潟村で生活していた4歳の雄のタンチョウは、名前が「八郎くん」。地元の「秋田タンチョウ友の会」が、八郎潟にちなんで名前を付け、人気を呼んだことがあった。「八郎くん」は、2012年にも度々大潟村を訪れ、その後2013年5月を最後に行方不明になっている。
見分け方

 漢字で「丹頂」・・・「丹」は古語で赤を意味し、頭頂が赤いのが和名の由来で、識別の際の最大のポイント。雌雄同色で全身が白く、顔から首の下にかけて黒い。尾が黒いように見えるのは、三列風切と次列風切。脚も黒い。

 夜明けとともに「コロローン、コロローン」「クワッ、クワッ」と、よく響く声で鳴き交わし、警戒時には「コロロ」、幼鳥は「ピィー」と鳴く。
▲水浴び風景

全長 オス140cm、メス131cm 翼開長227~243cm
生活 (写真:足跡)

 積雪期には、トウモロコシなどを給餌しているエサ場に多くの個体が現れる。ツガイと幼鳥からなる家族が集まった群れで行動する。ゆっくり歩きながら、首を下げてエサをついばむ。雑食性で、昆虫や魚類、穀類、水草の芽、カエル、ネズミ、小鳥のヒナなどを食べる。夜は、川の浅い流れの中に群れで立って寝る。繁殖期の縄張りは、ツガイ一組で2~7平方kmと広い縄張りを持つ。巣は湿原のヨシ原の中で、ヨシを直径1mほどの大きさに積み上げて作る。産卵期は3~4月、卵数は2個、抱卵日数は30日余り。
浮世絵にも描かれたタンチョウ

 歌川広重 の浮世絵「名所江戸百景 蓑輪金杉三河しま」(1857)の中で、江戸の沼と湿田が広がる平野に飛来したタンチョウが描かれている。昔は、関東方面まで広く生息していたことが分かる。明治時代に乾田馬耕が普及するまでの水田は、全国どこでも「ふゆみずたんぼ」と同じく腰や胸まで浸かるほどの湿田であった。だから昔の田んぼは、生物多様性が極めて高い湿田=湿原で、全国どこでも野鳥が生息するには最高の環境であったと考えられる。
鳴き交わしと求愛ダンス「ツルの舞い」

 オスが「クォーン」と鳴いた後、メスが短く「カッカッ」と繰り返し鳴き交わして縄張りを主張し、ツガイを維持する。厳冬期には、雪の中、愛情を確かめ合うかのように雌雄が声をあげて舞う求愛ダンス「ツルの舞い」が頻繁にみられる。
▲大潟村の田んぼに張り巡らされた水路がエサ場
▲凍てつく朝
▲ねぐらからの飛び立ち
動画 タンチョウ 親子で空へ飛び立つ(NHKクリエイティブ・ライブラリー)
▲雪中に舞うタンチョウ
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
写真提供 土谷諄一 参考プログ「Photo of Akita