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野鳥シリーズ27 コマドリ

歌の名手・コマドリ(駒鳥、スズメ目ヒタキ科)

 鮮やかな橙色の胸をそらし、朗らかな声でさえずる小鳥。そのさえずりが美しく、日本三鳴鳥の一つ。和名の由来は、「ヒンカラカラカラ」と馬のいななきのようなさえずりをすることから、「駒鳥」と名付けられた。日本列島の特産種で、夏鳥として北海道から屋久島までの山地に飛来し繁殖する。北日本では、標高の低い山地にもみられる。林床に笹藪がある森を好む。「一沢一駒」と言われるとおり、渓流に棲んでいて明確な縄張りを持つ。
見分け方

 オス(上の写真)は、頭部から胸が鮮やかな橙色で、上面はやや褐色みのある橙色。胸は濃い灰色で境界に黒い線がある。下面は灰色。メス(下の写真)は、オスに比べて褐色みが強く、胸には黒い線がない。雌雄とも、色彩で見間違うことはない。
▲メスのコマドリ


 繁殖期には、倒木の上や横枝にとまって「ヒンカララララ」「チッツルルルル」と、よく響く大きな声でさえずる。地鳴きは、「ピッ、ピッ、ピッ」「ツン、ツン、ツン」と細く高い声で鳴く。
全長 14cm 翼開長21cm
生活

 笹藪があれば、落葉広葉樹林でも針葉樹林でも棲息する。藪の茂みの中を行動するので、姿を見る機会が少ない。主に昆虫類を捕食している。繁殖期になると、ツガイで縄張りを持ち、オスは、倒木の上や下枝にとまってさえずる。巣は地上の凹みにつくられ、落ち葉や細根を材料に椀形をしている。産卵期は6~7月、卵数は3~5個、抱卵日数約13日、巣立ち日数約13日。

 さえずる場所は、地上近くの低い所が大半だが、木の頂で歌うこともある。それは早朝が多く、高い場所ほど次々と歌を繰り出し、長時間鳴き続ける。
人気の飼い鳥

 江戸時代から人気の飼い鳥で、目の前で手をヒラヒラさせるとさえずるように教え込むこともでき、それができる鳥を「手振り駒」と呼んだ。1799年、泉花堂三蝶によって書かれた飼育書「百千鳥」にも「手振り駒」の解説が記されている。
求愛ダンス

 オスは、倒木の上などで尾を上げて扇形に広げ、頭を下げる。次に尾を広げたまま下げて翼を半開きにして震わせ、ルルル・・・と小声で鳴きながらその場で左回りに一回転する。メスは、その求愛ダンスを見て、受けるかどうかを決めるという。
駒鳥鳴くや唐人町の春の暮  正岡子規
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
「森の野鳥観察図鑑 鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ編著、主婦と生活社)
写真提供 土谷諄一 参考プログ「Photo of Akita